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2026.09.14


欧州経済

ドイツ経済


ドイツ極右排除に迫る転機
~AfDとBSWが州政権発足に向けて予備協議~



田中 理



要旨

ドイツのザクセン=アンハルト州議会選挙で圧勝した極右政党AfDは、州政府発足に向けて各党に予備協議を呼び掛け、唯一これに応じた新興左派政党BSWとの協議を開始した。BSWはAfDとの連立や同党のジークムント氏の州首相就任には否定的で、超党派の州首相を選び、政策毎に異なる多数派を形成する政権運営を提唱している。AfDが州首相を輩出しない場合も、最大会派として政策決定への関与が常態化すれば、同党を政権運営から排除してきたドイツ政治の「防火壁」は大きな転機を迎える。


9月7日付けレポート「ドイツ極右主導の州政府誕生に近づく」では、6日に行われたドイツのザクセン=アンハルト州議会選挙で、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が43.8%の支持を集めて圧勝したが、単独での過半数に僅かに届かなかったことを伝えた(表)。最大勢力となったAfDはその後、議席を獲得した保守政党「キリスト教民主同盟(CDU)」、中道左派政党「社会民主党(SPD)」、環境政党「緑の党」、旧東ドイツの支配政党の流れを汲む左派政党「左翼党(Linke)」、新興左派政党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」の全てに政権発足に向けた予備協議を呼び掛けたが、これに応じたのはBSWのみだった。

図表図表

予備協議を開始したAfDとBSWは、移民規制の強化、対ロシア制裁やウクライナの軍事支援に対する消極姿勢、欧州連合(EU)の政策や権限拡大に対する批判などの共通点もあるが、経済・財政運営や社会政策分野では相違点が目立つ。BSWは協議開始にこそ応じたものの、AfDが主導する連立政権への参加からは距離を置いており、AfDのジークムント氏の州首相就任にも反対している。

ザクセン=アンハルト州の州憲法擁護庁は2023年以来、AfDの州組織を「右翼過激主義団体」に分類している。ジークムント氏はAfDの州議会会派の共同代表を務め、若さや親しみやすさ、巧みなソーシャルメディア戦略で、従来のAfD支持層を超えて支持を広げ、今回の州議会選挙で同党を歴史的な勝利に導いた。

同州の州首相の選出手続きは、1回目の投票で州議会の絶対多数(議員総数の過半数)の支持を集める候補がいなければ、7日以内に2回目の投票を行い、そこでも絶対多数を得る候補がいない場合、さらに14日以内に議会の投票で解散・再選挙の是非を判断する。州議会の解散・再選挙が過半数で可決されない場合、直ちに3回目の州首相の選出投票を行い、今度は議員総数の過半数ではなく、投票総数の過半数を得た候補が州首相に選出される。

AfDはジークムント氏の州首相就任を譲らない立場で、今のところ協議は膠着している。同時にBSWの関係者は、州首相選出が3回目の投票まで進んだ場合、投票を棄権する用意があるとの立場も示している。但し、新議会ではAfDとその他4党(CDU、SPD、緑の党、左翼党)が何れも39議席で並んでおり、BSWの投票棄権だけではジークムント氏の選出は決まらない。多党から更に棄権者や造反者が出るかが焦点となる。AfD内部には同党が主導する初の州政府誕生を優先すべきとの声もある一方、安定した多数派を確保できない限り、政権を担うべきではないとの慎重意見もある。AfDはBSWとの予備協議と並行して、CDU所属議員への働きかけを行っているが、こちらも今のところ具体的な進展はない。

BSWは「超党派の州首相」を選出し、固定的な連立政権を組まず、政策毎に異なる政党が多数派を形成する政権運営も提唱している。仮にこうした政権が発足した場合も、39議席を持つAfDの影響力が低下するとは限らない。AfDとBSWだけで44議席と過半数に達するため、両党の政策が一致する分野ではAfDが法案や予算の成否を左右する可能性がある。AfDを州政府から排除する「防火壁」は形式的には維持されても、同党の賛成票を前提とした政策決定が常態化すれば、防火壁は実質的に変質することになる。

9月20日には、AfDとSPDが激しい首位争いを繰り広げているメクレンブルク=フォアポンメルン州議会選挙が予定されている。その結果が判明するまで、AfDとBSWが明確な協力関係を打ち出すことに慎重ではないかとの観測もある。ザクセン=アンハルト州議会の新議会は10月6日に召集される予定で、それまでの数週間が政権形成に向けた重要な局面となろう。

今回の政権協議の行方は、1つの州の政権の枠組みを決めるだけにとどまらない。AfDが州首相を輩出する場合は勿論のこと、超党派の州政府の下でAfDの賛成票を利用した政策決定が常態化する場合も、これまで同党を政権運営から排除してきたドイツ政治の「防火壁」は大きな転機を迎える。仮にAfDを州政府から排除することに成功しても、議会運営や政策決定への同党の関与をどこまで排除できるのか、ザクセン=アンハルト州の政権形成は、ドイツ政治が今後AfDとどのように向き合うかを占う試金石となる。

以 上



田中 理

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