ザクセン・アンハルト州議会選挙後に記者会見を開いたAfDのウルリヒ・ジークンモント議員(9月10日、写真:ロイター/アフロ)
(英エコノミスト誌 2026年9月12日号)
ザクセン・アンハルト州議会選挙の後、メルツ首相が窮地に陥った。
彼らの顔つきがすべてを物語っていた。
9月9日のドイツ連邦議会(下院)で演説したフリードリヒ・メルツ首相は、右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の議員たちからブーイングの嵐を浴びた。
議場にはヤジが飛び交い、口笛が鳴り響いた。
4分の1近い議席を占めるAfDにとって、議場での野卑な振る舞いは今に始まったことではない。
だが、3日前に東部ザクセン・アンハルト州議会選挙で44%という記録的な得票率を得た後、同党は勝利に酔いしれていた。
メルツ氏はこの演説のほとんどを2027年の政府予算案に割り当てるはずだった。その代わり、AfD批判に的を絞り、ほとんど野党の党首のように聞こえる場面もあった。
メルツ氏はAfDが「民族浄化」への欲望を「再移住」という言葉の裏に隠していると非難し、ザクセン・アンハルト州議会選挙で過半数を確保できなかったことを嘲笑した。
(メルツ氏の率いるキリスト教民主同盟=CDU=の得票率は17%に落ち込んだ)
CDUとその姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)と連立を組んでいるドイツ社会民主党(SPD)も発言の大半をAfDに向けた。野党の緑の党も同様だった。
各党が最後に他党との違いを強調した時には、民主主義に則った礼儀のように感じられた。
東部の諸州では、このような力関係はおなじみだ。
AfDがあまりに強いために、主流派の政党がほとんど反AfDでしか団結できない「人民戦線」の連立に追いやられているからだ。
だが、この状況により、AfDはドイツ政界に自由に影響力を及ぼせるようになっている。
ザクセン・アンハルト州の政権の行方
ザクセン・アンハルト州での今後の展開は不透明だ。
これまで投票所に足を運ばなかった有権者の大量動員もあって急伸したAfDの得票率(図参照)は、同党の思い切った予想をも上回るものだった。
だが、全83議席の過半数には3議席及ばず、他党はAfDへの協力を拒んでいる。

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例外は5%の得票率の節目をギリギリ突破して、5議席獲得した親ロシアのポピュリスト政党のザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)だ。
同党はAfDと取引するか、少なくともAfDの邪魔をしないように行動する可能性がある。
ただし、ザクセン・アンハルト州のAfDの顔になっている陽気なウルリヒ・ジークムント氏は、そのような軟弱な基盤のうえに成り立つ政権を率いたいと思わないかもしれない。
BSW自体が気難しくて扱いにくい政党であることを踏まえれば、特にそうだ。
初めての政権入りを目指す党にとっては、ここが正念場だ。
ザクセン・アンハルト州のAfDと、2029年までに行われる連邦議会選挙を視野に入れる連邦レベルの党指導者たちとの間には緊張関係の兆しがある。
だが、ジークムント氏が州首相になってもならなくても、AfDはすでに、ますます細分化が進むドイツ政治の中心に立ち位置を得ている。
同党は今春、世論調査の政党支持率でCDU・CSUとの差を広げ始め、今では約8ポイントのリードとなっている。
「ザクセン・アンハルト州に極右政権ができても、ドイツ全体の政策に大きな影響を及ぼすことはできない」
ベルリンのクアドリガ応用科学大学のティモ・ロホッキ教授(公共政策)はこう語る。
「AfDに必要なのは、中道派の政党が内紛に転じ、ドイツが必要としている改革を鈍らせ、議論が極右勢力を軸に展開されるようになることだ」
