三重県の9月5連休、山は45日前に決着していた — 旅館・ビジネスホテルのT-45/T-30/T-14逆算カレンダー

2026年9月19日(土)から23日(水・秋分の日)まで、11年ぶりの5連休が到来する。三重県の旅館では、この連休の中心日である9月20日(日)の推定稼働率(OTA掲載在庫ベース)が、宿泊日の45日前の時点ですでに93.6%(観測182施設)に達していた。30日前には97.9%、9月8日時点では99.8%。つまり山側の需要は、レベニューマネージャーが手を動かす前に決着していたことになる。一方で、同じ5連休の後半にあたる9月23日(水)は45日前63.8%から9月8日時点72.6%へ、30日以上かけてわずか+8.8ptしか積み上がっていない。同じ「連休」でも、日によって打つべき手はまったく違う。本稿では三重県の旅館とビジネスホテルについて、T-45/T-30/T-14の3定点で連休の山と谷を分解し、逆算の作業カレンダーに落とし込む。

本記事のデータについて
対象: 三重県の旅館 N=約190施設(客室約5,000室)/ビジネスホテル N=約88施設(客室約9,900室、いずれも主要予約サイト掲載ベース)。推定成約ADRの対象は旅館 N=205施設・ビジネスホテル N=93施設(2026年8月確定月)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年9月9日。

Key Takeaways

— 三重県の旅館は9月20日(日)の推定稼働率が宿泊45日前で93.6%。そこから9月8日時点までの上積みは+6.2ptで、山の日は45日前に決着していた。
— 締まるタイミングが業態で15日ずれる。同じ9月20日でT-45→T-30の伸びは旅館+4.3pt、ビジネスホテル+10.5pt。
— T-45が同じ65〜79%帯でも、T-30までの伸びが+6.0pt以上なら9月8日時点で+19.6〜+21.0pt、+3.0pt未満なら+1.8〜+3.8pt。谷寄りの日の判定定点はT-45ではなくT-30。
— 谷は自然には埋まらない。旅館10月2日(金)の完売施設率は45日前18.1%→9月8日時点16.5%と低下しており、掲載在庫の積み増しが需要を上回っている。
— 近隣6県比較では、三重の9月20日はT-45 93.6%で最も早く決着し、9月23日の上積み+8.8ptは6県最小。連休最終日の弱さは三重県で特に強く出ている。

5連休の「山」は45日前にほぼ決着していた

2026年のシルバーウィークは、9月21日(月)が敬老の日、9月23日(水)が秋分の日にあたり、祝日法の規定で挟まれた9月22日(火)が国民の休日となることで、9月19日(土)から23日(水)までの5連休が成立する(出典: 内閣府「国民の祝日について」)。5日間が一様に強いわけではない、というのが三重県の実データが示す姿である。

下のブッキングカーブは、三重県の旅館について宿泊日の45日前から直近までの推定稼働率の推移を、代表4日分並べたものだ。9月20日(日)の線は45日前の時点ですでに93.6%の高さから始まり、そこから9月8日時点の99.8%まで、45日かけての上積みは+6.2ptにとどまる。カーブが「立ち上がる」のではなく「天井に張り付いたまま横ばい」の形をしている。これは需要が弱いのではなく、逆に売り切れが早すぎて45日前より手前に伸びしろが残っていなかったことを意味する。同じ5連休を宿泊31日前の定点で切り取った時点でも旅館の推定OCCはすでに97.5%に達しており、その途中経過は三重県の旅館・リゾート、11年ぶり5連休は前半3日に需要集中で追っている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

対照的に、9月22日(火・国民の休日)の線は45日前72.4%から始まり、30日前78.3%、9月8日時点92.8%と、はっきり右肩上がりに立ち上がっている。上積み幅は+20.4ptで、4日のなかで最大だ。この日は直前需要で埋まっていくタイプの日付である。さらに9月23日(水・秋分の日)は45日前63.8%からの上積みが+8.8pt、10月2日(金)に至っては45日前66.0%から9月8日時点69.8%と+3.8ptしか動いていない。カーブがほぼ水平で、放置すれば同じ水準のまま宿泊日を迎える形だ。

ビジネスホテルでも山と谷の構造は同じだが、立ち上がりのタイミングが旅館より遅い。9月20日(日)は45日前83.2%、30日前93.7%、9月8日時点99.8%で、45日前→30日前の15日間だけで+10.5ptを積んでいる。旅館の同区間が+4.3ptであることを踏まえると、ビジネスホテルは「T-45時点ではまだ余裕があるように見えて、T-30を挟んで一気に締まる」業態と読める。9月21日(月・敬老の日)も45日前80.1%→30日前90.2%→9月8日時点99.7%と同じ形だ。逆に言えば、ビジネスホテル側でT-45の残り枠を見て弱気の判断をすると、その後の急速な消化を取り逃す。

表1:三重県の推定稼働率(OTA掲載在庫ベース)— 宿泊日別・業態別のT-45/T-30/9月8日時点。観測施設数 旅館172〜187/ビジネスホテル81〜89。

宿泊日
旅館 T-45
旅館 T-30
旅館 9/8時点
ビジネス T-45
ビジネス T-30
ビジネス 9/8時点

9/19(土)83.4%89.2%97.6%78.3%84.8%97.9%
9/20(日)93.6%97.9%99.8%83.2%93.7%99.8%
9/21(月・敬老の日)90.1%97.0%99.6%80.1%90.2%99.7%
9/22(火・国民の休日)72.4%78.3%92.8%67.8%74.6%88.8%
9/23(水・秋分の日)63.8%66.8%72.6%62.0%65.2%70.2%
9/24(木)68.3%72.0%77.5%65.5%69.7%76.8%
9/26(土)72.1%77.4%81.5%81.9%86.0%90.1%
10/2(金)66.0%68.8%69.8%67.1%71.0%75.0%
10/6(火)69.0%71.2%70.8%56.9%63.4%65.4%

三重県の推定稼働率(OTA掲載在庫ベース)。T-45/T-30は宿泊日の45日前・30日前の観測、「9/8時点」は2026年9月8日の観測(宿泊日まで残り11〜28日)。観測施設数は旅館172〜187、ビジネスホテル81〜89。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

連休後半と直後の平日は、45日前の水準からほとんど動かない

推定稼働率だけを見ていると「9月22日も92.8%まで来た、9月23日も72.6%まで積んだ」と読めてしまう。しかし、完売施設率(OTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合・推定)を並べると、山と谷の断絶がはっきり出る。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

旅館の9月20日(日)は完売施設率が45日前65.8%→30日前88.1%→9月8日時点97.9%と積み上がり、県内の旅館市場がほぼ立ち枠なしの状態になっている。9月21日(月・敬老の日)も55.0%→82.2%→95.8%。これに対し9月23日(水・秋分の日)は21.9%→23.4%→24.0%で、45日前からの30日間で+2.1ptしか動いていない。稼働率が8.8pt上がっているのに完売施設率がほぼ横ばい、という組み合わせは、「一部の施設に薄く予約が入っただけで、売り切れる施設は増えていない」ことを示す。この9月23日の弱さは三重県に限った現象ではなく、全国ベースでも同日が平常の水曜と変わらない進度にとどまることをシルバーウィーク2026後半2日の予約進度が47日前の定点で確認している。

10月に入るとこの傾向はさらに強まる。10月2日(金)の旅館は完売施設率が45日前18.1%→30日前17.0%→9月8日時点16.5%と、むしろ下がっている。これは在庫が新しく積み増された分が上回った動きで、需要側が動いていないサインだ。10月6日(火)も27.4%→27.9%→26.8%で横ばい。ビジネスホテルはさらに極端で、9月23日(水)5.6%→4.4%→5.6%、10月6日(火)は3.4%で3定点とも変化なし。連休の熱が翌週以降にまったく波及していない。

唯一の例外が9月26日(土)のビジネスホテルで、完売施設率は45日前24.4%→30日前26.7%→9月8日時点36.7%、推定稼働率も81.9%→86.0%→90.1%(2026年9月8日時点まで)と伸びている。同日の旅館は推定稼働率81.5%(2026年9月8日時点)、完売施設率23.8%であり、これと比べても強い。連休翌週の土曜は、旅館よりビジネスホテル側に需要が残っているという構図だ。

9月は三重県の推定成約ADRが年間でも低い水準にある

ここで価格の軸を確認しておきたい。三重県の旅館の推定成約ADRを年重ねで並べると、9月は毎年、直前の8月から大きく水準を落とす月にあたる。2025年9月の確定値は15,576円(N=202施設)で、同年8月の19,218円(N=205施設)を大きく下回る。2024年9月も15,837円(N=227施設)で、8月の18,229円から落ちる同じ形をしている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

確定月同士の前年同月比を見ると、直近の確定月である2026年8月は旅館17,869円(N=205施設)で、前年同月19,218円(N=205施設)から-7.0%。ビジネスホテルは7,696円(N=93施設)で前年同月7,825円(N=95施設)から-1.6%だった。1年前の9月同士で比べると、旅館は2025年9月15,576円(N=202施設)が2024年9月15,837円(N=227施設)に対し-1.6%、ビジネスホテルは2025年9月6,365円(N=95施設)が2024年9月6,068円(N=97施設)に対し+4.9%である。

表2:三重県の推定成約ADR 月次(税抜相当)— 業態別・確定月と現時点推定の対照。2026年9月・10月は現時点の販売状況に基づく推定値。

区分・対象月
推定成約ADR
N(施設)
基準

旅館 2025年8月19,218円205確定
旅館 2026年8月17,869円205確定(前年同月比 -7.0%)
旅館 2025年9月15,576円202確定(前年同月比 -1.6%)
旅館 2026年9月14,570円205現時点推定
旅館 2026年10月14,644円196現時点推定
ビジネスホテル 2025年8月7,825円95確定
ビジネスホテル 2026年8月7,696円93確定(前年同月比 -1.6%)
ビジネスホテル 2026年9月9,652円90現時点推定
ビジネスホテル 2026年10月10,114円89現時点推定

2026年9月・10月は現時点の販売状況に基づく推定値であり、今後変動し得る。確定値との単純比較は月末の確定を待つ必要がある。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

なお表2のビジネスホテル2026年9月・10月(9,652円・10,114円)は現時点推定であり、前年同月の確定値(2025年9月6,365円)と直接比べられる数値ではない。現時点推定は、いま販売中の在庫から推定した水準である。ビジネスホテルは連休3日間が9月8日時点で推定稼働率99.7〜99.8%まで締まっており、手前の価格帯の在庫が先に吸収された状態で残りの掲載分から推定しているため、月全体が確定したときの水準より上に出やすい。この2か月の前年同月比を計算することには意味がない。比較に使えるのは確定月同士(旅館2026年8月 -7.0%、ビジネスホテル2026年8月 -1.6%)である。

整理すると、三重県の9月は「月間で見れば価格の谷、しかし連休の3日間だけが極端に締まる月」である。5連休のうち9月19〜21日は45日前の段階で市場全体が高稼働に入り、22日は直前で追い上げ、23日以降は45日前の水準のまま横ばいで宿泊日を迎えようとしている。月次の推定成約ADRが谷にあるということは、この山の3日間で取り切れなかった単価は、月全体では取り返しにくいということでもある。

T-45の水準より、T-30までの伸び幅のほうが着地を決めていた

ここまでは宿泊日ごとにカーブを見てきたが、9日分×2業態=18本の観測をまとめて置き直すと、別の構造が出てくる。T-45の水準が同じでも、T-30までにどれだけ伸びたかで、その後の積み上がり方が大きく分かれるのである。下は18本を「T-45の水準」(横軸)と「T-45→T-30の伸び幅」(縦軸)の2軸に振り分けたものだ。

表3:T-45水準 × T-45→T-30伸び幅 の2軸判定グリッド — 三重県の旅館・ビジネスホテル、9宿泊日×2業態=18本の観測を配置。括弧内はT-45水準→9月8日時点の推定稼働率。

T-45が80%以上(山)
T-45が65〜79%(中間)
T-45が65%未満(谷)

T-30までに+6.0pt以上(速)旅館9/21(90.1→99.6)
ビジネス9/20(83.2→99.8)
ビジネス9/21(80.1→99.7)
9/8時点 99.6〜99.8%ビジネス9/19(78.3→97.9)
ビジネス9/22(67.8→88.8)
上積み +19.6〜+21.0ptビジネス10/6(56.9→65.4)
上積み +8.5pt
(T-30以降は+2.0ptで停止)T-30までに+3.0〜+5.9pt(中)旅館9/19(83.4→97.6)
旅館9/20(93.6→99.8)
ビジネス9/26(81.9→90.1)
9/8時点 90.1〜99.8%旅館9/22(72.4→92.8)
旅館9/24(68.3→77.5)
旅館9/26(72.1→81.5)
ビジネス9/24(65.5→76.8)
ビジネス10/2(67.1→75.0)
上積み +7.9〜+20.4pt旅館9/23(63.8→72.6)
ビジネス9/23(62.0→70.2)
上積み +8.2〜+8.8ptT-30までに+3.0pt未満(遅)該当なし旅館10/2(66.0→69.8)
旅館10/6(69.0→70.8)
上積み +1.8〜+3.8pt該当なし

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

読み取れるのは中央の列である。T-45の時点で65〜79%という同じ帯にいた9本が、T-30までの伸び幅によって着地の姿を大きく変えている。伸びが+6.0pt以上あった2本(ビジネス9/19・9/22)は9月8日時点までに+19.6〜+21.0ptを積み、伸びが+3.0pt未満だった2本(旅館10/2・10/6)は+1.8〜+3.8ptで止まった。T-45の残り枠だけを見ていては、この2つは区別がつかない。谷寄りの日付の性格を判定する定点は、T-45ではなくT-30であるということだ。

もう一つ、左下の「該当なし」も情報である。T-45で80%以上に来ていた6本は、いずれもT-30までに+3.0pt以上を積んでおり、高水準で止まった例が一つもない。山の日は45日前の水準がそのまま最終形に近いという本稿の見方は、この意味で「高い水準に来た日は、その後も止まらない」と言い換えられる。逆に右上のビジネス10/6は、T-30までは+6.5ptと速く伸びながら、そこから9月8日時点までの上積みが+2.0ptで停止した唯一の例で、低水準帯では速い立ち上がりが持続しないことを示している。

近隣6県と並べると、三重の山は最も早く決まり、谷は最も動かない

三重県の姿が県固有のものか、この秋の広域的な傾向かを切り分けるため、旅館について近隣5県と並べた。

表4:近隣6県の旅館 推定稼働率(OTA掲載在庫ベース)比較 — 山の日(9/20)・連休最終日(9/23)・連休翌々週の金曜(10/2)について、T-45と9月8日時点、およびその差。観測施設数は県により41〜395。


9/20(日・山)
9/23(水・秋分の日)
10/2(金)

T-459/8時点差
T-459/8時点差
T-459/8時点差

三重県93.6%99.8%+6.2pt63.8%72.6%+8.8pt66.0%69.8%+3.8pt岐阜県93.7%99.7%+6.0pt70.5%81.3%+10.8pt76.1%80.9%+4.8pt滋賀県92.8%99.9%+7.1pt69.2%81.7%+12.5pt72.2%76.3%+4.1pt奈良県88.2%97.8%+9.6pt57.9%72.0%+14.1pt63.2%66.3%+3.1pt和歌山県85.7%99.7%+14.0pt55.2%65.8%+10.6pt61.1%67.0%+5.9pt静岡県82.5%99.5%+17.0pt52.6%65.5%+12.9pt59.1%67.2%+8.1pt

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

山の日(9/20)では、三重県のT-45 93.6%は岐阜県の93.7%と並んで6県で最も高い。上積みも+6.2ptで岐阜県の+6.0ptに次いで小さく、三重の山は6県のなかで最も早く決着していたことになる。対照的に静岡県はT-45 82.5%から+17.0pt、和歌山県は85.7%から+14.0ptを積んでおり、同じ「最終的にほぼ埋まる日」でも、決着する時期は県によって1か月以上ずれている。

連休最終日(9/23)では逆の意味で三重県が際立つ。上積み+8.8ptは6県で最小である。完売施設率で見るとさらにはっきりしていて、三重県は45日前21.9%→9月8日時点24.0%の+2.1ptにとどまるのに対し、滋賀県は28.3%→43.5%の+15.2pt、奈良県は28.8%→38.4%の+9.6pt、岐阜県は34.6%→42.8%の+8.2ptを積んでいる。9月23日が動かないのは広域の傾向ではなく、三重県で特に強く出ていると読むのが妥当だ。

ただし10月2日(金)については、三重県の完売施設率の低下(18.1%→16.5%)は三重固有ではない。奈良県も27.1%→24.3%、和歌山県も16.3%→10.9%と下げており、連休明けの平日に掲載在庫が積み増される動きは近隣県に共通している。この日付を「三重県だけが弱い」と読むのは誤りで、広域的に需要が動いていない時期と捉えるべきである。

完売施設率の水準差は、1施設あたり客室数の差で説明がつく

本稿では推定稼働率と完売施設率を並べてきたが、両者の水準が業態で大きく違う点は、供給側の構造を見ておく必要がある。三重県の宿泊施設は全体で464施設・20,673室。このうち本稿の対象は旅館が約192施設・約5,000室、ビジネスホテルが約90施設・約10,000室である。1施設あたりの客室数は旅館が約26室、ビジネスホテルが約110室と4倍以上の開きがある。

この差が、ビジネスホテルの完売施設率が低く出る理由である。10月6日(火)のビジネスホテルは推定稼働率65.4%(2026年9月8日時点)に対し完売施設率3.4%だが、平均110室の施設が「完売」に数えられるには全室を売り切る必要があり、平均26室の旅館より構造的に到達しにくい。したがって完売施設率は業態をまたいで水準を比較する指標ではなく、同一業態のなかで時系列の変化を追う指標として使うのが正しい。本稿で完売施設率について論じてきたのは、いずれも同一業態内での45日前からの変化幅である。

三重県で旅館・ビジネスホテルを運営するレベニューマネージャーへ — 示唆とアクションプラン

(1) 山の3日間は「T-45が締め切り」だと考える。 旅館の9月20日は45日前93.6%、9月21日は90.1%。ここから宿泊日までの上積みはそれぞれ+6.2pt、+9.5ptにすぎない。自館がこの3日間で狙った単価を取れていないなら、原因はT-45より手前の設定にあった可能性が高い。次の大型連休では、T-45の時点で自館の予約進捗が市場の90%台に届いているかを確認し、届いていれば残り枠の単価を上げる、届いていなければ商品構成を見直す、という分岐点をT-45に置きたい。

(2) ビジネスホテルはT-45→T-30の15日間が勝負どころ。 9月20日は45日前83.2%→30日前93.7%で+10.5pt、旅館の同区間+4.3ptの2倍以上のスピードで締まっている。T-45の残り枠だけを見て弱気に振ると、この加速局面を安い単価で通過してしまう。自館の同区間の消化ペースを、市場のこの動き方と重ねて見る癖をつけたい。

(3) 谷側は「待っても埋まらない」ことがデータで見えている。 旅館の10月2日(金)は完売施設率が45日前18.1%→9月8日時点16.5%と下がり、10月6日(火)も26.8%で横ばい。ビジネスホテルの10月6日(火)は3定点とも3.4%で不動。谷側の日付は放置すれば同じ形で宿泊日を迎えるため、単価を下げて待つのではなく、滞在理由をつくる打ち手(食事内容・連泊条件・平日限定の体験付き商品など)に振り分ける余地がある。

(4) 月次の価格の谷を、連休の山で埋め合わせる設計に。 三重県の旅館の推定成約ADRは2025年9月が15,576円(確定・N=202施設)と年間でも低い水準にあり、2026年9月も現時点推定で14,570円(N=205施設)と同じ位置にある。連休の山3日は市場が完売施設率95%超まで締まる一方、月間平均は谷。この非対称性は、山の3日間を月間予算の主戦場として扱う設計が有効であることを示唆する。

以上を、T-45/T-30/T-14の3段の作業カレンダーに落とすと次のようになる。次の連休(年末年始・来年の大型連休)に向けて、そのまま転用できる形にした。なお、この3定点だけで宿泊日の性格を判定していく読み方の手順そのものはブッキングカーブは3点だけ読むで整理している。

表5:T-45/T-30/T-14 の逆算作業カレンダー — 各定点の打ち手と、本文の実測値に紐づく判断トリガー。

時間軸
打ち手
判断トリガー(記事中の数値と照合)
狙い

T-45
(決める)連休の日別に「山/中間/谷」を確定させ、山の日は在庫の出し方と商品構成を凍結する市場のT-45が旅館93.6%・ビジネス83.2%(連休中心日)に対し、自館の同日進捗がこれを下回るか上回るか上積み余地が小さい日で、後戻りできない設定を先に固める
T-45谷側(連休後半・翌週平日)の需要創出商品を仕込み、販売を開始する対象日のT-45完売施設率が旅館20%前後・ビジネス5%未満の水準にとどまっているとき横ばいカーブが確定する前に、商品側で角度をつける
T-30
(締める)山の日の残り枠を上位カテゴリ・連泊条件に寄せ、下位在庫を締める市場のT-30が旅館97.9%・ビジネス93.7%(連休中心日)まで到達している一方、自館に一桁パーセントの残り枠がある場合最終局面で残る枠を、単価を守れる形に置き換える
T-30ビジネスホテルはT-45→T-30の自館の伸び幅を市場と突き合わせ、加速局面の設定を見直す市場が同区間で+10.5pt動いているのに、自館の伸びがそれを大きく下回っているとき締まる直前の局面を安値で通過しないようにする
T-14
(開ける)連休の「谷寄りの日」(挟まれた祝日・連休最終日)に向けて、直前需要を受ける枠を開放する当該日の市場が9/22型(T-45から+20.4pt積み上がる形)か、9/23型(+8.8ptで頭打ちの形)かを判別できた時点立ち上がる日にだけ在庫を開け、伸びない日には振り向けない
T-14連休翌週の土曜に、業態間の需要差を見て販売の重心を移す9/26(土)でビジネス90.1%・旅館81.5%と差が開いたように、同日で業態間の推定稼働率に開きが出ているとき連休直後に残る需要の受け皿を、実際に強い側で取り切る

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

まとめ — 連休を3つの物差しで測る

物差し1:山の日はT-45の水準がほぼ最終形。 三重県の旅館では9月20日(日)が45日前93.6%、そこからの上積みは+6.2pt。連休の中心日は45日前の時点で勝負がついている。T-45を「準備の締め切り」ではなく「意思決定の締め切り」として扱いたい。

物差し2:業態で立ち上がるタイミングが15日ずれる。 同じ9月20日でも、旅館はT-45→T-30が+4.3pt、ビジネスホテルは+10.5pt。旅館は早期に、ビジネスホテルはT-30前後に締まる。自館の業態に合わせて、進捗を確認する定点の重みを変える必要がある。

物差し3:谷は自然には埋まらない。 旅館の10月2日(金)は完売施設率が45日前18.1%→9月8日時点16.5%、ビジネスホテルの10月6日(火)は3定点とも3.4%で不動。谷側の日付でカーブが水平なら、それは「まだ入っていない」ではなく「入る理由がない」状態である。値付けではなく、滞在理由をつくる打ち手に資源を配分する判断が要る。

データについて

■ データソース

対象Nの内訳: ブッキングカーブ=三重県の旅館 観測172〜187施設(掲載客室数 約4,960〜5,060室)、ビジネスホテル 観測81〜89施設(掲載客室数 約9,700〜10,080室)。推定成約ADR=三重県の旅館 N=196〜227施設、ビジネスホテル N=89〜97施設(月により変動、各数値に併記)。いずれも主要予約サイト掲載ベース。

データ時点: 2026年9月9日。 販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。

■ 試算前提

推定稼働率の定義: OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(高めに出る)。本記事では「推定OCC(OTA掲載在庫ベース)」として、対象月・観測窓を明記のうえ扱っている。

ブッキングカーブ: 宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。定点は45日前(T-45)・30日前(T-30)・直近(2026年9月8日観測、宿泊日まで残り11〜28日)。9月22日のT-30については観測施設数が薄いため、隣接する31日前(旅館78.3%/ビジネス74.6%、観測183施設/88施設)の値を採用した。

完売施設率: OTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合(推定)。実際の満室を保証するものではない。

推定成約ADRの定義: OTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。

■ 限界・留意点

推定稼働率・完売施設率はいずれもOTA掲載在庫から算出した推定値であり、実際の客室稼働・満室を保証しない。完売施設率は1施設あたり客室数の影響を受けるため(本記事対象では旅館 約26室/ビジネスホテル 約110室)、業態をまたいだ水準比較には用いず、同一業態内の変化幅として扱っている。近隣県比較は旅館のみを対象としており、県ごとに観測施設数(41〜395施設)と施設構成が異なる。9月22日のT-30は観測施設数が薄いため隣接する31日前の観測を採用しており、他の日付と定点条件が完全には揃わない。2026年9月・10月の推定成約ADRは現時点推定のため、確定月との前年同月比較には使用していない。

参考資料・出典一覧

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