
【USSEC主催・米国視察】今年のテーマは「Where Bright Minds Connect」
8月5日の夜にウェルカムレセプションが開かれ、6日の午前9時に「ソイコネクスト」が開会となった。アメリカ大豆輸出協会(USSEC)のマイク・マクレイニー会長が開会あいさつを行った。「『ソイコネクスト』はこれまで5回開催され、回を重ねるごとに規模が大きくなり、内容も充実している。本日は65カ国から800人を超える人が、世界の大豆サプライチェーンを発展させ、育てていくという共通の目標に向かって集まることができた。今年のテーマは『Where Bright Minds Connect』だが、私自身とても共感する考え方だ。アイデアがブレークスルーになるためには、他の人の知恵が必要だと、以前から考えていた。若い頃、自分自身の目で大豆生産や農業を深く知り、世界各地の農家や農業関係者から学ぶために南北アメリカやアジア、欧州の多くの国々を旅した。どこの農家と出会っても学ぶものがあった」と振り返った。
足元では、地政学的な緊張、変化する貿易協定、サプライチェーンの課題に直面しているとした上で、「米国の農家にはレジリエンスがあるのが強みだ。同時に私たちには状況に対応する柔軟性もある。さまざまな問題に対応するための、多くの道具を持っている。そして、何世代にもわたって続けてきたサステナビリティの取り組みは、農業を維持してきただけではなく、私たちを成長させ、課題を機会へ、挫折を解決策へと変えてきた。今日と明日、Collaboration、Commitment、Connection の3つのCを追求してもらいたい。他の人たちが自分たちの障害をどのように乗り越えて成功したのか、恐れずに尋ねて欲しい。共通する戦略的な解決策を積極的に探して欲しい。そうしたつながりは、皆さんが想像もしなかったような形で成果をもたらすと思う」と述べた。
○世界の大豆の生産量と消費量近づき、現物価格も上昇、ブラジルの生産頭打ちの可能性
「世界の大豆見通し:供給、需要、市場シグナル」と題したセミナーでは、コーバンクの穀物・油糧種子担当の主席エコノミストのタナー・エムケ氏が講演した。同氏は2015年に同社に入社する以前、カンザス州西部にある家族経営の種子会社と農場で、農業と種子販売に携わっていた。シカゴの農業関連企業でコモディティーアナリストを務め、シカゴ商品取引所(CBOT)ではダウ・ジョーンズのマーケットリポーターを務めた。作物生産や農場経営を取材する農業ジャーナリストとしても活動してきた。
エムケ氏はまず、大豆を含めた米国の主要農産物の価格推移を示し、「コモディティ価格は底を打って回復基調にある」と強調した。その要因として、米ドル安と中東情勢の影響の2つを挙げた。「ドル安になると、米国からの輸出品の価格競争力が高まる。そのため、米国産農産物に対する輸出需要が強まり、農産物価格を下支えする。同時に、中東情勢が世界的に重要な地域でエネルギーや肥料の流れが混乱しており、その結果、価格が上昇して幅広いコモディティ価格を押し上げている」と解説した。
価格上昇は先物市場だけの動きではなく、ブラジル、アルゼンチン、米国の港湾における大豆のFOB(本船渡し)現物価格も上昇していることを指摘した。
続いて、世界の油糧種子生産量は過去最高であることを示した。供給が増えれば、通常は価格が下がるはずだが、エムケ氏は世界の大豆生産量と消費量が近づいていることをグラフで示した上で、「生産量は過去最高だが、消費量が生産量に追いついてきている。消費の伸びが加速しており、需給は今後、より引き締まっていく。在庫率も低下しており、需給は歴史的に引き締まった水準に向かっている。そのため現物市場で買いが入り、港湾の現物価格も上昇している」と説明した。
グラフ
世界の大豆搾油量が急増していることも示した(グラフ)。「中国に加えて、米国とブラジルの伸びが加速している。需要増に伴い価格が上昇すれば、農家が作付面積を増やし、搾油量と輸出量が同時に増えることも可能だ」と述べた。
米国で大豆搾油能力が大幅に拡大している最大の要因はバイオ燃料政策だという。特に再生可能ディーゼル向けの大豆油需要が牽引している。EPA(米国環境保護庁)のRFS(再生可能燃料基準)の引き上げなどにより、大豆油はディーゼルなどのエネルギー商品に近い値動きをするようになっている。搾油マージンは過去最高レベルの高水準で、新たな搾油設備への投資意欲も強いという。政府政策に依存する部分が大きいとするが、搾油能力がさらに拡大すれば、大豆ミール供給も増え、米国産大豆ミールの世界市場での競争力が高まるとした。
米国産大豆の輸出は中国向けを中心に平準化しており、回復局面にあるものの、過去の水準に戻るには時間が必要とした。生産面では、米農務省の単収予測53.0Bus/Aに対し、現在の生育状況を踏まえると、「53.5bus/Aと米農務省よりも楽観的な予測をしている」と述べた。一方、南米ではブラジルの大豆生産拡大が頭打ちになる可能性を指摘した。「ブラジルの農家は輸入した肥料や燃料に依存しており、コストが高くなっている。農家の破産も見られる。そのため農家は肥料などのコストを削減しており、単収にも影響する懸念がある」と述べた。さらにブラジルではバイオディーゼル混合義務により国内需要が増え、世界市場に回る大豆が減る可能性があるとした。
グラフ
予想されるエルニーニョの影響については、「前例のない領域で、友人の気象学者にこのエルニーニョはどうなるのか聞いたところ、『分からない。これは過去のエルニーニョとは違う。史上最大規模のエルニーニョで、比較できるデータが存在しない』と言われた。予測するのは非常に難しい。できることは過去の非常に強いエルニーニョと比較することだ」と述べた。インドでは過去にエルニーニョが起きた際、大豆の生産量が減少し、ブラジルでは洪水が起こって生産に影響があったことなどを紹介した。
○大豆ミールの需要増は家禽生産増がけん引、大豆価格の上昇は構造的・長期的な変化
続いてジム・サッターCEOによる質疑応答が行われた。米国で大豆の作付面積が増える場合、作付面積が減る作物を尋ねると、エムケ氏は、小麦や米などから大豆に作付が移る可能性があるとした。
サッターCEOとエムケ氏
大豆ミール需要増は、鶏など家禽の生産増加がけん引していると答えた。「世界的により多くの動物性たん白質、より多くの乳製品を求める傾向が見られる。現在、米国の牛肉価格は過去最高水準で、豚の飼養頭数も増えているが、世界各地で同様の動きが起きている」と述べた。
サッターCEOは、世界の油糧種子生産量が過去最高となる中で、大豆価格が上昇しているのは、一時的ではなく構造的な変化であるのかを尋ねた。エムケ氏は「構造的な変化で、持続性のある長期的な変化だ」と回答し、理由の一つにバイオ燃料政策を挙げた。「米国だけでなく、ブラジル、マレーシアなど多くの国がバイオ燃料需要を満たすため、植物油を世界市場から国内のバイオ燃料用途へ振り向けている。現在の燃料価格を考えれば、この動きをさらに強める動機がある」と解説した。たん白質需要が世界で増えていることも理由に挙げた。
エルニーニョのパナマ運河への影響と、影響がある場合にPNWのガルフとの競争力にどう影響するか尋ねると、「パナマ運河の水位低下が懸念されている。そうなればガルフからの通航コストが上昇し、PNWの競争力がガルフに対して高まる可能性がある」と見通しを語った。
〈大豆油糧日報2026年9月7日付〉
