株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)(証券コード9348)の欧州法人であるispace-EUROPE S.A.(以下ispace EUROPE)は、欧州宇宙機関(ESA)とともに、月面探査計画「The Mission for Advanced Geophysics and Polar Ice Exploration(先端地球物理学および極域氷探査ミッション、以下 MAGPIE)」のフェーズ2契約締結を記念し、調印式を実施したことを発表しましたので、お知らせします。

ispace EUROPE CEOのJulien-Alexandre Lamamy(左)とESA有人・ロボティック探査局長(Director of Human and Robotic Exploration)のDaniel Neuenschwander氏(右)
デンマーク・コペンハーゲンで開催された「ESA Space for Inspiration 2026」にて実施した調印式。ispace EUROPEメンバーとESA有人・ロボティック探査局長(Director of Human and Robotic Exploration)のDaniel Neuenschwander氏を含む他メンバーとの集合写真

 本調印式は、デンマーク・コペンハーゲンで開催された「ESA Space for Inspiration 2026」のにおいて、ESA有人・ロボティック探査局長(Director of Human and Robotic Exploration)のDaniel Neuenschwander氏と、ispace EUROPE CEOのJulien-Alexandre Lamamyが登壇し、執り行われました。

 

 本契約は、ESAが2026年7月にispace EUROPEへ授与した総額6,500万ユーロ(約120億円)のフェーズ2契約*¹に基づくものです。同契約には、ローバーおよびペイロードの開発・製造・試験、月面への輸送、ミッション運用、そしてESAへの科学データ提供まで、MAGPIEミッション完遂に必要な一連の活動が含まれています。

*¹ 関連プレスリリース:ispace EUROPE、欧州宇宙機関とローバーを使った月面探査計画「MAGPIE」のフェーズ2契約を締結

 

 MAGPIEは、2029年に予定されているispaceのミッション4で打ち上げられるULTRAランダーに搭載され、欧州初となる月面ローバーによる本格的な月極域探査を実施する計画で、月の極域における揮発性物質の分布や特性の解明、水氷の探索、およびレゴリスの特性に関する科学的知見の向上を目指しています。また、ミッション4ではispaceが2026年1月にJAXAの宇宙戦略基金事業第二期において採択された「月極域における高精度着陸技術」の成果を活用し、高精度月面着陸を目指しており、MAGPIEローバーの輸送は、ESAおよびJAXAの協力の下で実現されます。

 

 月極域には太陽光がほとんど届かない「永久影」領域が存在し、水氷が長期間保存されている可能性があると考えられています。こうした水氷の分布や周辺環境との相互作用を解明することは、月科学における重要な研究テーマであるとともに、将来的な月面での持続的な活動を支える基盤となります。月面から水資源を取得できれば、人類の長期滞在やさらにその先の深宇宙探査に必要な燃料供給にも活用される可能性があります。

 

 MAGPIEローバーは複数の科学機器を搭載し、月面上を移動しながら異なる地形・地質環境で観測を行います。複数地点におけるデータ比較によって、月南極地域における揮発性物質やレゴリスの空間的な分布特性の理解向上が期待されています。本ミッションから得られる科学データは、月南極に関する知見を深めるだけでなく、将来の資源探査や持続的な月面活動に必要となる技術、運用方法、ミッションアーキテクチャの検討にも活用される予定です。

 

 MAGPIEは、ルクセンブルクを拠点とするispace EUROPEが主導し、欧州全5か国の複数機関で構成される以下のコンソーシアムによって推進されています。

ミュンヘン工科大学(ドイツ)

ESR Technology(英国)

The Open University(英国)

RAL Space(英国)

オスロ大学 宇宙センサー・システムセンター(ノルウェー)

プラハ・チェコ工科大学 実験応用物理学研究所(チェコ共和国)

 

 これらの機関が提供するペイロードは、月面および地下環境を多角的に調査し、水氷を含む揮発性物質の存在や分布を総合的に分析することで、月極域に関する科学的理解の向上に貢献します。

 

 MAGPIEは、ローバー開発、ペイロード統合、試験、ミッション管制、月面運用に至るまで、欧州の産業界・研究機関が一体となって実践的な月探査能力を獲得する取り組みとしても大きな意義を持ちます。ローバーによる移動能力は、今後の月探査の発展において極めて重要であり、広範囲での観測や地形調査、科学機器の運搬、月面オペレーションに先立つリスク低減など、多くの役割を担うことが期待されています。

 

 ispace EUROPEは、欧州で初めて設計、製造、組み立てが行われ、2025年に打ち上げられたTENACIOUSローバーで培われた開発・運用経験を活用しながら、ESAの主契約者として、ミッション設計から科学データの提供までMAGPIE全体を統括します。

 

 現在MAGPIEチームは、ローバーの熱構造モデルの審査に向けて開発を進めています。その後は、ローバーの走行性能を評価する機能試験(Locomotion Test)を主要マイルストーンとして予定しています。

 

 今後もMAGPIEコンソーシアムはESAと緊密に連携しながら、ローバーおよびペイロードの開発を進め、月で最も科学的価値の高い地域の一つである月南極における探査および科学運用の実現を目指してまいります。

 

■ ESA有人・ロボティック探査局長 Daniel Neuenschwander氏 のコメント

 「月南極は、将来の月探査において極めて重要な目的地です。MAGPIEは、水やその他の揮発性資源の探査を通じて、持続可能な月探査の実現に向けた重要な知見を提供します。ESA初の月面ローバーミッションは、欧州の技術力とJAXAとの国際協力を結集したプロジェクトです。また、欧州、ルクセンブルクに強い基盤を持つispaceとの連携は、ESAが推進する、より効率的かつ迅速に、費用対効果の高い新たなアプローチを示しています。

 

■ ispace EUROPE CEO Julien-Alexandre Lamamyのコメント

「MAGPIEは、欧州が月探査において持続的な役割を担っていくための重要な一歩となります。そのために本ミッションには欧州各国の科学的知見、技術力、そして産業界の力が結集しています。ispace EUROPEは、ミッション設計やローバー開発から、運用、科学データの提供までを主導します。私たちはパートナーとともに、欧州の優れた専門性を実際の月面運用実績へと発展させ、将来の月探査に向けた基盤を築いていきます。」

 

■ ispace EUROPE S.A.について

ispace EUROPEは、ルクセンブルクを拠点に月面探査事業を展開し、主に月面探査車(ローバー)の開発に取り組んでいる。2025年にispaceのミッション2でRESILIENCEランダーに搭載され打ち上げられたTENACIOUSローバーは、欧州で設計・製造・組立が行われ宇宙へ打ち上げられた初の月面ローバーとなった。世界トップクラスの人材とロボティクス技術、そしてルクセンブルクの宇宙産業エコシステムとの強固なネットワークを活かし、欧州における月面産業の創出を推進するとともに、拡大する政府機関および民間市場のニーズに応える持続的な月面経済圏の実現を目指している。 

 

 

■  株式会社ispace ( https://ispace-inc.com/jpn/ )について

「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約350名のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスおよびデータサービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、新たに月周回の自社衛星を活用した、通信・測位を中心とするルナ・コネクトサービスの提供も目指す。2023年には民間企業として世界で初めて月面着陸に挑戦するミッション1を実施。2025年にはミッション2を実施し、月周回までの確かな輸送能力や、ランダーの姿勢制御、誘導制御機能を実証することが出来た。最速2027年には新ミッション2.5として月周回衛星1基を月周回軌道へ投入することを予定。2028年iには、経済産業省のSBIR補助金を活用し、日本拠点が主導で開発を進めるランダーモデル「ULTRA(ウルトラ)」によるミッション3の打ち上げを予定しており、続く2029年iiには南極近傍への高精度着陸を目指すミッション4の打ち上げを予定している。

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i    当該打上げ時期については2026年9月時点の予定であり、今後変更する可能性があります。なお、当社が補助対象事業として採択されたSBIR(Small Business Innovation Research)制度の公募テーマ「月面ランダーの開発・運用実証」の事業実施期間が原則として2027年度とされており、SBIR制度に基づく補助金の対象となるミッション3は、当初2027年中の打上げとして経済産業省及びSBIR事務局と合意しておりましたが、2026年9月時点では当社内の開発計画上、2028年内の打上げとなることを見込んでおります。本変更については今後、関係省庁及びSBIR事務局と調整中の段階であり、最終的には経済産業省により正式に計画変更が認可されることとなります。

ii  2026年9月時点

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