人気シューズブランドの新作はスニーカー……ではなく庭?
ニューバランスが7月、イギリス・カンブリア州フリンビーにある自社工場に庭をオープンした。
ニューバランスがイギリスのフリンビー工場に作った庭
ニューバランスはアメリカ・ボストンで1906年に誕生したブランドで、スニーカーやアパレルグッズなど様々な製品を製造・販売している。
その120年の歴史の中で、庭を作るのは初めてだという。
フリンビー・ガーデンと名付けられたこの庭は従業員専用。メイド・イン・UKのレガシーを支える働き手たちが、休んだり、読書したり、思いにふけったりしながら、人や自然とつながれる場所だ。
ニューバランスは、「従業員が、製造現場から離れて自然に身をゆだね、心身を回復させるための環境を作るために考え出された」とプレスリリースで説明している。
1年を通して異なる表情を楽しめる
フリンビー・ガーデンはロンドンのジュエリーブランド、ブルー・バーナムとのコラボで生まれた。
デザインを手がけたのは、ブルー・バーナムの創設者であるブルー・ウィッカム=バーナム氏だ。
バーナム氏は、工場の周辺に広がるイギリス湖水地方の風景からインスピレーションを得て、デザインを考えたという。
庭には複数のベンチが置かれ、従業員が思い思いの時間を過ごせる作りになっている。
複数人が集えるピクニックテーブルの中央部分には、パラソルの代わりにサクラの木が植えられており、遊び心のある日陰をつくり出している。
花壇にはバラやユリ、スイセン、ジギタリスなどの花が、野草と共に植えられており、洗練されたデザインの中に自然を感じられる空間になっている。
また、春、夏、秋と季節ごとに景観が少しずつ変化するよう植栽は綿密に計画されており、1年を通して異なる表情を楽しめる。
さらに、生け垣の一部を低くすることで、周りの湖水地方の景色が庭の中に入り込み、自然との一体感がより深まるよう工夫されている。
フリンビー・ガーデン
ガーデニング愛好家でもあるバーナム氏はこのプロジェクトについて「遊び心のあるデザインを取り入れつつ、仕事の中で立ち止まり、つながり、喜びを感じる時間を生み出す空間を目指しました」とプレスリリースでコメント。
「庭がこれから何年もかけて成長し、フリンビーのニューバランスチームの日常の一部となるのを見守るのが楽しみです」と述べている。
庭には巣箱も置かれている
庭や植物がもたらす効果
ニューバランスのメイド・イン・UKブランドは「991」や「1500」が有名で、多くの人に愛されている。
イギリスの職人魂が反映されたこれらのシューズを生み出してきたのが、フリンビー工場だ。
1991年からイギリスの生産ラインの拠点として運営され、現在は約300人の熟練した作り手が毎月およそ3万足のシューズを生産しているという。
ニューバランスは、フリンビーは特別な場所であり、同ブランドを代表するメイド・イン・UKの品質は、この工場で「最高レベルの職人たちによって生み出される」としている。
そのメイド・イン・UKブランドを支える職人たちの「心身回復のための場所」としてニューバランスが作ったフリンビー・ガーデン。
実際、様々な研究から、庭やガーデニングには、人間の身体やメンタルヘルス、ウェルビーイングを向上させ、ストレスを軽減させる可能性があることがわかっている。
東京大学の曽我昌史准教授らによる2016年の研究では、ガーデニングをすることでうつや不安症状、ストレスレベルの低下、人生満足度や生活の質、自尊心、地域社会に対する結びつきの向上や、肥満の防止などに役立つことが明らかになった。
庭がない場合でも、植物を置くだけで違いが現れるようだ。千葉大学の2025年の研究では、玄関周りの植物にはうつ予防の効果があり、高齢者のメンタルヘルスを支える可能性があることが示された。
そういった植物や庭、ガーデニングの良い影響が注目される中、アメリカやヨーロッパでは、多くの病院で患者やスタッフが花や野菜を植えられる庭や屋上ガーデンが設けられている。
またこういったグリーンスペースは、生物多様性の向上にも貢献する。
ニューバランスのように企業が庭を作るというのはまだ珍しい取り組みだが、働き手のウェルビーイングがますます重要視される中、新たな職場のあり方として注目を集めそうだ。
