公開
2026年08月12日 07時16分

 米Anthropicは8月10日(現地時間)に更新したサポートページで、AIアシスタント「Claude」が生成したテキストに機械可読な電子透かしを埋め込む方針を説明した。「EU AI Act」の透明性義務に関する行動規範への署名に伴う対応だが、適用範囲はEU域内に限らず、Claudeを提供する日本を含む世界全体の地域とプロダクトに及ぶ。画像などのファイルにはC2PA準拠の署名付き来歴メタデータを付与する。

更新されたサポートページ

 同社はAIモデルとAIシステムの両方のプロバイダー(開発元)として、EU AI Act第50条2項に基づく「AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範」に署名しており、その約束を実際にどう履行するか、マーキングがどう機能し、どんな限界があるかをサポートページで説明している。詳細な技術文書は後日公開する予定だ。

EU AI Act第50条概要(下線は編集部による)

 対象となるのは、2026年8月2日以降にリリースされるClaudeモデルで、ローンチ時点からマーキングに対応する。生成したテキストには電子透かしが埋め込まれ、対応するファイルには電子署名付きの来歴メタデータが付く。8月2日より前にリリースされた既存モデルについては法律上の経過措置があり、同社はこれらにも対応を追加する作業を進めているという。

 Claude Platform(API)、Claude、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tagを含む、Claudeを使うあらゆる場所での出力が対象だ。AWS、Google Cloud、Microsoft Foundry経由で対応モデルにアクセスした場合もテキストへの電子透かしは適用される。署名付き来歴メタデータは、プラットフォームが提供する機能次第で非対応となる場合がある。

 手法は2つ。1つは、テキストに直接織り込む電子透かしだ。人間には知覚できず、応答の意味や品質、読みやすさは変わらないとしている。透かしはテキストそのものの一部であるため、コピー&ペーストして別の場所に移してもテキストと共に移動し、一部の編集を経ても残る場合がある。モデルレベルで適用されるため、どのClaude製品から出力されたかにかかわらず存在するという。

 もう1つは、ファイルに付ける署名付き来歴メタデータだ。「.svg」「.png」「.jpg」などのファイルを生成する際に付与され、コンテンツの来歴を記録する業界標準規格「C2PA」(Coalition for Content Provenance and Authenticity)に準拠する。署名付きのラベルがあれば、そのファイルがClaudeで処理されたことを示すと同時に、改ざんの有無を検出できる。

 透かしの検出については、ユーザーやサードパーティーが検出できるようにする取り組みを進めており、詳細な仕組みは後日公開する技術文書で示すとしている。つまり現時点では、一般ユーザーが手元で確認する手段はまだ提供されていない。

 なお、マークが検出されても、そのコンテンツの来歴が確定するわけではない。校正や翻訳、要約、ファイル変換にClaudeが使われた場合、元のアイデアやテキスト、データが別の出所であってもマークは付く。逆に、Claudeが処理した後で改変や抜粋、他の素材との結合が行われている場合もある。検出できるのは「Claudeが処理に関与した可能性がある」ところまでで、どの部分がAIによるものかまでは分からない。

 逆に、マークが検出されなくてもAIが生成・処理していないとは言い切れない。マーキング対応前のモデルによる生成物、大幅に編集・言い換え・翻訳されたり他の文章に混ぜ込まれたりしたテキスト、信頼できる信号を得るには短すぎる文章では検出できない可能性がある。ファイルのメタデータも、形式変換や再保存、スクリーンショットなどで失われることがある。マーキングの種類に対応していないプラットフォームや機能、ファイル形式を経由した場合も同様だ。

 Claudeを自社製品に組み込む開発者に対しては、第50条が自社の製品やサービスに何を求めるかを独自に評価するよう求めた上で、行動規範上の約束に沿って各社の透明性義務への対応を支援していく方針を示した。

 EU AI Actの第50条は8月2日に適用が始まった。生成AIのプロバイダーには、生成・加工されたコンテンツを検出できる機械可読マークの付与が義務付けられ、違反した企業には最大1500万ユーロ(約25億円)または全世界年間売上高の3%の制裁金が科される可能性がある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

関連記事

Share.