著:Marco Chan(キングストン大学、Senior Lecturer in Aviation Operations, Department of Aircraft and Aerospace Engineering, School of Engineering)
イギリスはイタリア、日本と共同で次世代戦闘機を開発している。フランス、ドイツ、スペインによる競合計画「将来戦闘航空システム(FCAS)」が頓挫したことで、「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」の重要性はさらに高まっている。
イギリスで「テンペスト」と呼ばれるGCAPの機体は、2035年までに運用を開始する見通しである。イギリスとイタリアにとってGCAPは、保有するユーロファイター・タイフーンを、国境防衛能力を備えた最先端の戦闘機へ置き換えるものである。
この機体は、高い能力と強い意思を持つ敵対勢力から欧州の空域を守ることを含め、北大西洋条約機構(NATO)主導の任務にも投入される可能性がある。日本もまた、広大な海域をカバーし、領空侵犯に対処できる戦闘機を必要としている。
では、この3か国は、FCASが乗り越えられなかった課題を克服し、真に最先端の戦闘機を開発できるのだろうか。
世界で最も先進的な戦闘機は「第5世代機」と呼ばれている。テンペストは第6世代戦闘機に分類される。中国とロシアは第5世代機を保有しており、独自の第6世代戦闘機の開発も進めている。
欧州の多くの国は、老朽化した戦闘機をアメリカ製の第5世代機F-35に置き換えてきた。しかし、トランプ政権のNATO支援が揺らぐなか、一部の国はアメリカ製装備への依存を見直し始めている。
これは、2022年に発足したGCAPを推進する国々にとって、防衛能力を自国の管理下に置くことの重要性を浮き彫りにしている。イギリス、イタリア、日本は2026年7月3日、計画を次の設計段階へ進めるため、46億ポンドの契約を締結した。
この契約を受注したのは、イギリスのBAEシステムズ、イタリアのレオナルド、日本航空機産業振興株式会社(三菱重工業と日本航空宇宙工業会が共同出資)の3社による合弁会社、エッジウィング(Edgewing)である。
イギリスが国防支出計画の最終調整に時間を要したため、契約締結は9か月遅れた。
第6世代戦闘機を従来機と区別する特徴は、「システム・オブ・システムズ」として機能する能力である。機体には、戦闘空間の情報を集める多数のセンサーが搭載される。そこで得られた情報は、衛星、艦艇などの海上戦力、地上局からのデータとともにリアルタイムで統合され、パイロットの任務遂行を支援する。
テンペストのような先進戦闘機は、「ロイヤル・ウィングマン」と呼ばれるタイプを含む無人航空機を制御できるようになる。こうした無人機は、例えば有人戦闘機を守るなどして任務を支援する。
一方、戦闘機が赤外線センサーやレーダーに探知される可能性を低くするステルス技術は、F-35のような第5世代機と同様、第6世代機でも不可欠となる。
では、GCAP参加国には、そのような航空機を開発する技術力があるのだろうか。答えはイエスである。ただし、いくつか留保すべき点がある。2016年、日本は国産のステルス技術実証機を試験飛行させた世界で4か国目となった。
三菱が製造したX-2試作機は、日本独自のステルス設計・エンジニアリング技術、レーダー波吸収材、推力偏向技術(エンジンの排気方向を変えて機体を操縦する技術)の有効性を実証した。
イギリスも2013年、独自のステルス実証機であるBAEシステムズ製ドローン「タラニス」を飛行させた。これにより、イギリスが開発したステルス技術と自律システム技術の有効性が示された。両国のステルス開発計画で得られた知見は、GCAPに直接反映されている。BAEシステムズと三菱重工業は、テンペストの設計にも携わっている。
イタリアと日本にはF-35の最終組立ラインもあり、アメリカ国外にある同種の施設はこの2か所だけである。このため、第5世代ステルス戦闘機の組み立てと、F-35の主翼一式の製造を経験した人材がすでに育っている。こうした技能は、テンペストの製造に直接生かすことができる。
GCAP参加国がまだ実証していないのは、ステルス技術、複数の機上センサーから集約したデータ、人工知能を1機の航空機に統合する能力である。各国の戦闘機部隊に配備する機体の生産ラインを維持できるかどうかも、不確定要素の一つである。これは見かけ以上に難しい工学上の課題であり、現在よりも綿密に検討されるべきである。
◆対等な立場
FCAS計画は、産業パートナーであるフランスのダッソーと、ドイツ、スペインを代表するエアバスとの対立によって頓挫した。争点には、どの企業が設計を主導するか、作業をどう配分するか、知的財産をどう扱うかなどがあった。
GCAP参加国には、同じ運命を避けるための産業面、組織面の規律があるのだろうか。GCAPの産業合弁会社であるエッジウィングは、計画の成功の鍵となり得る重要な原則を、その組織構造に反映している。
エッジウィングの各社はそれぞれ33.3%の株式を保有し、主導国と定められた国はない。各パートナーは、技術を自ら活用し、改修する自由を持つ。これはF-35とは大きく異なる。F-35では、パートナー国は機体を運用していても、近代化のためのハードウェアやソフトウェアの変更はアメリカが管理しており、自ら決める権限を持たない。
GCAPも今後問題が生じないとは限らない。しかし、実機の製造に着手する前に、産業界で誰が主導するかという問題を決着させた。この違いは、個々の技術上の選択よりも重要になる可能性がある。
予算見積もりの不正確さも、GCAPの障害となり得る。多国間の戦闘機開発計画は歴史的に、実際にかかる費用を過小評価してきた。
国防投資計画で86億ポンドの拠出が約束された後も、1機当たりの価格もイギリスの発注機数も決まっていないため、GCAPの総費用は依然として算定されていない。
これまでの例を見ても、戦闘機開発計画ではパイロット訓練が課題になりやすい。私自身もパイロットであり、経験豊富な乗員を新たな機種へ移行させるには、たとえ十分に成熟した機種でも、実任務で信頼して使える状態になるまで、数か月に及ぶ座学、長時間のシミュレーター訓練、監督下での飛行が必要であることを知っている。
GCAPの乗員は、機体を操縦するだけでなく、ロイヤル・ウィングマンのような他の無人航空機を指揮する訓練も受けなければならない。
それでも、これまでの実績を見る限り、イギリス、イタリア、日本は真に最先端の第6世代戦闘機を開発する技術を持っている。では、それを実現するための産業面、組織面の規律も備えているのだろうか。おそらく備えているだろう。ただし、それには今後9年間、資金と訓練を野心的な構想に見合う水準で確保し続ける必要がある。
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by NewSphere newsroom
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