軍事・地政学ナナメ読み
![]()
深川 孝行
ジャーナリスト
著者フォロー
フォロー中
2026.8.6(木)
2026年2月13日、ドイツのドローン製造企業を訪問したウクライナのゼレンスキー大統領(写真:ロイター/アフロ)
ウクライナ戦争の構図が変わり始めている。
損害を顧みず突進するロシア侵攻軍を前に、ウクライナ軍が防戦一方に立たされているという従来のイメージは薄れつつある。航続距離300~1000kmの長距離ドローンや、1000kmを超える超長距離ドローンを駆使したウクライナの反撃が、ロシアにボディーブローのような打撃を繰り返し与えているからだ。
前線の陣地争奪戦から、ロシアの継戦能力を削る戦いへ
もっとも、地上戦の主導権がウクライナに移ったわけではない。ロシア軍は東部ドネツク州の要衝コスチャンティニウカ周辺などで攻勢を続け、滑空爆弾やミサイル、ドローンによるウクライナ各都市への大規模攻撃も繰り返している。
一方、約1200kmに及ぶ前線では、双方が大量に投入するドローンによって部隊や車両の移動が制約され、大規模な突破は難しくなった。ロシア軍の進撃も全体として鈍化している。
兵力や通常戦力で劣るウクライナは、前線でロシア軍を正面から押し返すだけでなく、中・長距離ドローンで補給線や軍需施設、石油インフラをたたく「非対称戦」の比重を高めている。戦争の重心は、前線での陣地争奪戦から、相手国の後方と継戦能力を削る戦いへも広がりつつあるのだ。
ウクライナのドローン作戦はこれまで、航続距離300km以下の短・中距離機を使い、戦場やその周辺に展開するロシア軍の戦車・装甲車、艦艇、前線基地、砲兵陣地、地対空ミサイル(SAM)施設などを攻撃するのが中心だった。「戦術目標」、すなわち軍事装備や部隊、拠点など、比較的近距離にある敵が主な標的だったのである。
短・中距離ドローンによる攻撃は現在も極めて重要であり、むしろ以前よりはるかに多くの機体が投入されている。その一方で、ウクライナは2024年ごろから、ロシアの石油関連施設を破壊することを強く意識した空襲にも力を入れ始めた。
前線後方のエネルギー関連施設や物流・交通インフラ、通信網、軍需工場などは、その国の継戦能力を左右する重要な「戦略目標」である。戦争を続ける力はもちろん、軍隊への補給や装備の修理といった兵站(後方支援)を維持する上でも、欠かすことのできない施設や基盤だからだ。
敵国の継戦能力を支える産業・物流基盤を攻撃し、戦争遂行能力を低下させる手法は、「戦略爆撃」あるいは「戦略攻撃」と位置づけられる。第2次世界大戦中のB-29による日本空襲とは規模や手法、民間人被害の性質が大きく異なるものの、石油・軍需関連施設を破壊し、相手国の経済や物流に打撃を与えるという点では共通している。
歴史的な戦略爆撃では、こうして相手国の戦争遂行能力をそぎ、国民の戦争継続への意思を弱めることも狙いの一つとされてきた。
