司法は最終的な政治的選択を有権者に委ねたが、極右ルペンは現在、2027年春の大統領選の最有力候補の一人だ

With Marine Le Pen’s sentence the judiciary is giving French citizens the final say on her political future

2026年07月09日(木)17時51分

ルック・ルーバン
(パリ政治学院名誉研究部長)

フランスの極右政党・国民連合(RN)の指導者マリーヌ・ルペンは7月7日、RNの前身である旧国民戦線(FN)が欧州議会の議員秘書給与を党職員の人件費に流用したとされる事件の控訴審で、電子監視装置を足首に装着することを条件とする仮釈放なしの1年を含む禁錮3年と、10万ユーロの罰金を言い渡された。

国民議会(下院)の国民連合会派代表でもあるルペンには、禁錮刑と罰金に加え、45カ月の被選挙権停止も言い渡され、このうち30カ月は執行猶予となった。

一審判決から、実際に執行される15カ月の被選挙権停止期間がすでに経過しているため、大統領選への立候補資格は維持されているとして、ルペンは判決の数時間後に出演したテレビ番組で改めて2027年春の仏大統領選への出馬の意向を改めて表明した。

また、「あらゆる法的手段を尽くす」として破毀院(最高裁に相当)へ上告する方針も明らかにした。

ルペンが大統領選への出馬資格を維持した今回の判決について、パリ政治学院政治研究センターの名誉研究部長ルック・ルーバンが分析した。

――パリ控訴裁判所は判決に関する声明で、被選挙権停止について「民主的な選挙権の行使の前提となる有権者の選択の自由」を重視した、と説明した。司法判断より民意を優先したということか。

ルック・ルーバン:いや、そうは思わない。この事件を見る限り、裁判官は法と政治という二つの異なる領域を区別しようとしたことは明らかだ。法の領域では近年、公職の透明性を巡るさまざまな制度、とりわけ公職透明性高等機関(HATVP)の設置などによって、政治家や政党資金への監視が大幅に強化された。

一方で政治の領域では、市民が政治家に求める倫理性への期待が高まっている。その中心にあるのは、古代ローマで「アウクトリタス」と呼ばれた概念、つまり模範を示す能力や道徳的権威だ。

最終的な量刑は、犯罪を処罰しながらも直接的な政治的影響は避け、その政治的判断を有権者に委ねる内容となった。司法がこの二つの領域を切り分けたことは賢明な判断だったと言える。フランス司法の不備が厳しい批判にさらされている現在、その意義は大きい。

――ルペンはフランスのテレビ番組で、破毀院に上告すると表明し、上告すれば刑の執行は停止されると主張した。

ルーバン 依然として不明なのは、破毀院がいつ判断を示すかだ。判決が選挙戦の終盤に近づくほど、ルペンの立候補を無効とする判断は難しくなる。仮に無効になったとしても、選挙戦はすでに始まっている。その場合、RNとしてはルペンの後継者で党首のジョルダン・バルデラ(国民連合党首)を擁立し、そのまま選挙戦を戦い抜くことになるだろう。

破毀院が2027年5月2日の決選投票までに判断を示さない可能性も十分ある。ルペンが当選すれば大統領免責特権が適用される。落選した場合、その時点で被選挙権を巡る破毀院の判断は実質的な意味を失う。

――公金横領で有罪となった人物が、「クリーンな政治」を主要な公約に掲げる政党の候補者になれるのか。今回の控訴審判決によって大きく票を失う可能性はあるか。

ルーバン もちろん、その点は攻撃材料になる。しかし、有権者は「クリーンさ」の問題については比較的慎重に判断する傾向がある。

今回の事件では、私服を肥やすための不正蓄財はなかった。問題となったのは欧州議会の資金を秘書給与に不正流用したことだ。道義的には非難されるべきだが、他の事件ほど衝撃的ではない。

結果として、ルペンはこの司法闘争を有利に乗り切ったとも言える。数々の困難や試練にもかかわらず、自らの目標を追い続ける姿勢を示すことができたからだ。

本人もテレビ出演で、自らには果たすべき使命があると語り、自己犠牲的な姿勢を示した。しかし、この戦略は彼女の政治的な巧みさを示すものであり、政敵が恐れている点でもある。

重要なのは、2027年大統領選はこれまでとは全く異なる選挙になるということだ。フランス国民は極めて異なる社会・政治ビジョンの中から選択を迫られる。

極右・国民連合が掲げるのは主権重視・ナショナリズム・記憶とアイデンティティの重視。ジャンリュック・メランション率いる急進左派「不服従のフランス(LFI)」が掲げるのは、多様性や直接民主制、福祉を柱とする「新しいフランス」。

そしてマクロン政権の元首相で中道右派のエドゥアール・フィリップが前面に押し出したのは、グローバル化への適応を重視する「ポスト・マクロン」路線だ。

――ルペンは、電子監視装置を装着したままであれば大統領選には出馬しなかったと説明した。全国を回る選挙運動にとって、電子監視装置はそれほど大きな制約になるのか。

ルーバン もちろん、そのような状況で選挙運動を行うのは容易ではない。電子監視装置を装着した場合、外出できる時間帯や移動範囲など、刑の具体的な条件を保護観察官が決めることになるため、その判断は大きな意味を持つ。

足首の電子監視装置は有罪であることものになっただろう。しかし、それを逆手に取ることもできたはずだ。「鎖につながれたレジスタンスの闘士」として、「獄中から国民に正義を訴える」という象徴に変えることも可能だった。

行動の自由が制限されていても、自らを体制の犠牲者として描き、拘束されながらも国民に社会・政治システムの抜本的な変革を呼びかけることができたはずだ。現在のフランスでは、とりわけ地方自治体レベルで政治家の有罪判決が相次いでおり、20年、30年前と比べれば、その状況自体は以前ほど衝撃ではない。

――ここ数カ月、国民連合の2027年大統領候補の有力候補として名前が挙がっていたバルデラは、再び「ナンバー2」としての役割に戻ることになるのか。

ルーバン むしろ先頭に立つより、その役割の方がやりやすいかもしれない。現在、国民連合にとって真のライバルはエドゥアール・フィリップだろう。彼は明確に右寄りの「ポスト・マクロン」路線を掲げている。言い換えれば、やや権威主義的な自由主義右派候補だ。

バルデラもフランス版トランプ主義とも言える権威主義的・自由主義的な立場を取っているが、フィリップほどの経験はない。首相経験もなく、大都市の市長を務めたこともなく、政府運営にも携わっていない。

それに対してルペンは、自らを右派でも左派でもなく「草の根の側」に立つ政治家と位置づけている。ある意味ではマクロンとは逆のアプローチであり、左派の一部や普段は棄権する有権者を引きつける可能性もある。フィリップにとって本当に脅威となるのは、バルデラではなくルペンだ。この構図になれば、フランス政治の対立は階級闘争に近いものになるだろう。

The Conversation

Luc Rouban, Directeur de recherches (CNRS) au Cevipof, Sciences Po

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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