敗戦で涙をのんだ北中米W杯ブラジル戦翌日、日本代表の3人が語った心揺さぶる話とは。現場取材記者が記す舞台裏。〈全3回〉
板倉がブラジル戦前に発したスピーチ
日本代表が後半終了間際の同点ゴールで2-2のドローに持ち込んだ、オランダ戦から3日後のチーム練習でのこと。
オランダ戦で出場機会がなかったキャプテン板倉滉は、いつものように全体の練習を盛り上げるため、大きな声を出していた。ただ、その練習が少し途切れたとき、隣のピッチで別メニュー調整を続けていた上田綺世がランニングをしながら近づいてくるのを目にすると、板倉は声を張り上げ、上田を鼓舞した。
自分たちの練習にフォーカスしつつも、別のグラウンドで調整しているチームメイトにまで声をかけるキャプテンは見たことがなかった。これはつまり、チームを俯瞰して見られているということだろう。
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だから、日本代表の今大会ラストゲームとなったブラジル戦前のスピーチも、チーム全体のことを把握しているからこそ発せられるようなメッセージだった。
「スタッフ、選手含めこんな一体感あるチームないぞ! オッケー? スタメン組も最初から行って潰れてもいい。60分、70分で潰れてもサブ組いるぞ。(吉田)麻也君とタキ(南野拓実)、今日で終わりだからね(※所属クラブへ戻るため)。今日1回終わったら帰んないといけないから。このメンバーで、ここで戦えるのは、最後だぞ! 絶対に勝って終わろう」
不安を持って試合に臨んではいけない
ブラジル戦翌日、上田に声を掛けた際の記憶について板倉に問うと、こんな答えが返ってきた。
「キャプテンに指名してもらった時、責任がある仕事だと思いました。そんなに意識して声かけをしていたわけではないですけど、出る選手のモチベーションを上げていく、後押しするのは、大事になってくると思って。特に初めてW杯を経験する選手は……自分も(前回大会で)そうでしたけど、どうしても試合に入ったときにフワフワすることもある。不安を持って試合に臨んではいけない、取り除きたいなと、すごく意識してやっていました」
チュニジア戦でW杯デビューを飾った鈴木唯人や後藤啓介は短い時間ではあったが、自らの特長を出していた。彼らが「不安なく」ピッチに立てたのは、そこに尽力した板倉のような存在が大きかったはずだ。
