防衛費増額、欧州防衛の自立、米国の関与縮小…「強い欧州」を掲げる新構想は同盟を再生できるか
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2026.7.8(水)
ホワイトハウスを訪問したNATOマーク・ルッテ事務総長(6月24日、NATOのサイトより)
米国と欧州でロシアの脅威認識に大きな差
北大西洋条約機構(NATO)は、7月7日と8日の両日、トルコのアンカラで首脳会議を開催している。
本会議は、ウクライナ戦争やイラン戦争が継続し、世界がますます危機の増幅にさらされる中、「NATO史上最も重要な首脳会議の一つになる」(マルコ・ルビオ米国務長官)とみられている。
NATOのマーク・ルッテ事務総長は、首脳会議の主要議題として①同盟国の防衛投資の継続的な増加、②大西洋をまたぐ防衛産業生産の強化および、③ウクライナへの支援の3つを挙げている。
また、ルッテ事務総長は、スイスのダボスで開催された2026年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で次のように述べ、NATOには米国が不可欠であることを訴えた。
・米国は、圧倒的に強力な国である。かつ、米国の大統領は自由世界のリーダーである。自由世界のリーダーが参加しないNATOなど想像できない。我々は互いの集団防衛のために互いを必要としている。
他方、トランプ政権がNATOに求める優先事項は、米国以外の加盟国が防衛費を増額し、欧州の通常防衛において主要な責任を担うよう促すことである。
それは、米国が在欧米軍を削減し、NATOにおける防衛責任を縮小するという並行目標の追求に繋がっている。
米国は、2025年の国家安全保障戦略(2025 National Security Strategy=2025NSS)と2026年の国防戦略(2026 National Defense Strategy=2026NDS)で、米本土防衛の強化と西半球での米国優位性の回復、ならびに対中抑止の再確立などを明示している。
こうした動きからは、広範多様なニーズに対応できるよう米軍の世界的プレゼンスを再調整しようとする考えが読み取れる。
米国の安全保障・防衛政策における大きな戦略転換と言っていい。
では、なぜ米国とNATO加盟国(欧州およびカナダ)との間には、このような見解や取組みの相違が生じるのであろうか?
その根本原因は、米国とNATO加盟国(欧州およびカナダ)との間に、ロシアがもたらす脅威に対する評価に大きな差があることだ。
NATOは、2014年のロシアによるクリミア併合に引き続く2022年のウクライナ侵攻を「この世代における欧州安全保障上の最も危険な局面」と捉えている。
NATOの2022年戦略構想(NATO’s 2022 Strategic Concept )では、ロシアを「同盟国の安全保障、そしてユーロ・アトランティック地域の平和と安定に対する最も重大かつ直接的な脅威」と位置付けた。
その上で、ルッテ事務総長は、ロシアが2030年までにNATOに対して軍事力を行使する準備ができている可能性があると警告している。
他方、米国は2026NDSにおいて、ロシアは「当面の間、NATOの東方加盟国にとって持続的ではあるが対処可能な脅威」であると述べ、「モスクワは欧州覇権を狙う立場にはない。NATOは経済規模、人口、そして潜在的な軍事力においてロシアを圧倒している」と評価している。
このように、米国とNATOとの間には、ロシアに対する脅威認識に明確な差異が存在する。
