これは「言い得て妙」な観察だと思いました。多くの米国人は自分をビジネスパーソンだと思っているからです。会社を経営していなくても、副業をしたり、投資を計画したり、起業家になることを夢見たりしている人はとても多い。
英国で育ち、学んだ私の経験とはまったく異なるものです。大学時代に起業を考えていた同期を一人も思い出せません。卒業した後も夏の間は職に就かず、失業給付を受け取っていた友人なら何人か思い当たりますが。
いま私が家族と暮らしているのはシリコンバレー。米国の起業家精神とリスク志向を体現するだけでなく、それを極端なレベルに増幅したような街です。
フィジカルAI領域への資金流入は加速している。韓国ヒョンデ(Hyundai Motor Group)傘下ボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)が開発する人型ロボット。米ラスベガスで1月に開催された「CES 2026」の会場にて撮影。REUTERS/Steve Marcus
先日、サンフランシスコのロボティクス関連イベントを取材し、同分野の複数のスタートアップに数百万ドルを出資しているというベンチャーキャピタリストから聞いた話は非常に印象的でした。
彼の話では、大規模言語モデルのようにサイズや計算性能を引き上げることで性能向上を実現できるスケーリング則を、いずれフィジカルAIにも適用できるようになる明確な根拠は「ない」と。要するに、投資家が期待するブレークスルーは永遠にやって来ないかもしれない。
それなのになぜ投資を続けるのか?汎用ロボットが実現すれば、その市場は人類史上最大規模になり得るからです。

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彼はこう言いました。
「ベンチャーキャピタルとはそういうものなんです。新たなテクノロジーが明らかに機能するようになってから投資したのでは遅すぎる。バリュエーションがつり上がって、そう大きなリターンは得られません。それでいいなら、プライベートエクイティ投資をやるべき。退屈なので、ベンチャーキャピタリストでやりたがる人はいませんが」
不確実なアイデアに巨額を投じることに躊躇(ちゅうちょ)のないこのスタンスは、典型的な米国人のもの。シリコンバレーはそれを産業化した空間と言えるでしょう。
賭けが裏目に出ることもあります。かつて不動産投資に首を突っ込み、歴史に残るグレート・リセッション(大不況)を引き起こしたのも米国。メガテック企業はいまAIインフラに数兆ドルの設備投資を実行・計画していますが、それも一部はまだ未知数の、収益化も確実ではないテクノロジーへの巨大な賭けです。
グーグル(Google)の元経営幹部、エイドリアン・アウン氏のことを思い出します。
同氏はAIを活用した予防医療システムの構築を目指すフォワード(Forward)を創業。複数のベンチャーキャピタルから累計約6億5000万ドルを調達したものの、2024年に廃業しました。
しかし、アウン氏はその数日後に別のスタートアップを立ち上げ、再び投資家たちからの資金調達に成功。AI向けの医療データ統合技術を開発するその新会社、トーチ(Torch)は創業からわずか1年後の今年1月、オープンAI(OpenAI)が買収しています。
良くも悪くも、これが米国。極端な成功と失敗が共存する国です。
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先週の「勝ち組」と「負け組」
勝ち組:マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)率いるメタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)が計算資源とAIモデルへのアクセスを提供するクラウドインフラ事業の立ち上げを計画しているとのブルームバーグ(Bloomberg)報道を受け、同社の株価は7月1日に9%上昇。ただし、翌2日は再び5%下げ、前日の上昇分を半分以上吐き出しています。
メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)の直近1カ月の株価推移。Markets Insider
負け組:メタのクラウド事業参入報道が、いわゆるネオクラウド事業を展開するネビウス・グループ(Nebius Group)とコアウィーブ(CoreWeave)の株価に影響。7月1、2日の2日間で前者は22%、後者は18%下落。
ネビウス・グループ(Nebius Group)の年初来の株価推移。Markets Insider
コアウィーブ(CoreWeave)の年初来の株価推移。Markets Insider気になる動き:AI関連支出の企業間格差があまりに極端
ランプ(Ramp)が追跡する企業の従業員1人当たりAI支出データ。上位1%(茶)、上位10%(緑)、中央値(青)を並べた。Ramp AI Index
AI関連支出における勝ち組とその他企業の「格差」は想像以上に大きいようです。
財務自動化プラットフォームを開発・提供するランプ(Ramp)の最新データによれば、AI支出額上位1%に含まれる企業は従業員1人当たり月平均7449.85ドルを支出していますが、上位10%に広げた途端にほぼ12分の1の610.61ドルまで減り、中央値はなんとわずかに11.38ドル。「ChatGPT」や「Claude」のエンタープライズ向けプラン1シート分とほぼ同額です。
ちなみに、企業がソフトウェアエンジニア1人当たりに支払う報酬(月額換算)の中央値は1万6000ドルなので、AIの導入・活用に最も積極的な企業でさえ、AI支出額は技術系従業員の月額報酬の半分以下にとどまるということです。
なお、ランプはコーポレート(事業者向けクレジット)カードと経費管理、請求書支払い、会計の自動化を一つのシステムに統合し、コスト削減および支出統制の強化を実現するサービスを提供。米国(の顧客)企業5万社以上のカードあるいは請求書による毎月の決済状況を分析し、AI製品・サービスへの支出動向を追跡しています。
ランプの追跡データはすべての米国企業のあらゆるAI支出を網羅しているわけではありませんが、AI市場の大きなトレンドを把握するのに役立つ指標として広く参照されています。
