鳥取県立博物館(鳥取市)で、企画展「妖怪・幻獣づくし」が7月4日から開催されます。兵庫県立歴史博物館(姫路市)でSNSを中心に話題となった展覧会の巡回です。
現在はキャラクター化され、さまざまなエンターテインメントの題材として人気を博している日本の妖怪。しかしかつては、人間を超えた力を備えた存在として長らく恐怖と畏敬の対象となってきました。それは、妖怪が人間にはコントロールできない自然の恐ろしさを具現化したものだったからです。山や海といった、人間たちが生活するテリトリーの外にある世界は、しばしば苛烈な災害をもたらし、多くの人命を奪ってきました。
また自然は、一方では人々に恵みをもたらすものでしたが、非常に気まぐれで、凶作や不漁によって人々の生死を左右することもありました。こうした自然の恐ろしさを形にしたものが妖怪でしたが、そのイメージの源泉となったのは、自然のなかに生きるさまざまな生き物でした。
そして、時に異様な姿かたちや超常的な性質を帯びた生き物が目撃され、その死骸や痕跡がまことしやかに人びとの目の前に開陳されることがあります。現代ではUMA(未確認動物)と呼ばれることもある、これら超常的な生物を「幻獣」と呼びます。幻獣は、妖怪と実在の生物とのあいだを揺れ動きながら、この世界の限界を超えるものとして人々を魅了します。
本展では、妖怪や幻獣をとおして、日本人と自然とのかかわりの歴史が明らかにされます。
令和8年度鳥取県立博物館企画展「妖怪・幻獣づくし」
会場:鳥取県立博物館(鳥取市東町二丁目124番地)
会期:2026年7月4日(土)~8月30日(日)
開館時間:9時~17時 ※会期中の土曜日は19時まで開館延長
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:7月6日(月)、7月13日(月)、7月21日(火)、7月27日(月)、8月3日(月)、8月17日(月)、8月24日(月)
観覧料:一般:1,000円
※大学生以下、70歳以上、学校教育活動での引率者、障がいのある方・難病患者の方・要介護者等及びその介護者は無料
アクセス:JR鳥取駅から100円循環バスくる梨(緑コース)約8分「仁風閣・県立博物館」下車すぐ
鳥取ICまたは鳥取西ICから車で約15分
詳細は、鳥取県立博物館公式サイトまで。
みどころ
話題の「筑前化物絵巻ちくぜんばけものえまき」が中国地方初公開!
骨董品を紹介する某テレビ番組に出品されたことで、大きな話題となったこの絵巻は、中国地方ではじめての公開!本作品には、近年までほとんど類例が知られてこなかった数多くの妖怪・幻獣の目撃譚が記載されています。ユニークな絵柄で話題を呼びましたが、実はその内容も学術的にたいへん意味の大きいものです。心ゆくまで堪能してみてはいかがでしょうか。
筑前化物絵巻「明烏塚の異獣」(個人蔵/鞍手町歴史民俗博物館寄託)
筑前化物絵巻「酒盗鳥」(個人蔵/鞍手町歴史民俗博物館寄託)
さまざまな「幻獣」の遺物が展示されます。
妖怪・幻獣として名高い人魚・河童・雷獣のミイラや人面牛「件くだん」のはく製、烏天狗からすてんぐの頭骨とうこつ等といった、妖怪と実在の動物の間の存在「幻獣」にかかわる遺物が多数展示されます。
件の剥製(木原浩勝蔵)
新発見の幻獣資料も展示!?
展覧会の準備を進める中で、兵庫県立歴史博物館の館蔵品のなかから「アマビエ」と同じく疫病の流行を予言し、その絵が疫病除けとなった「異鳥図いちょうず」が新たに見つかりました。本展で初公開となります。
異鳥図 兵庫県立歴史博物館蔵(喜田文庫)/筑前化物絵巻 蟹の床の怪物 個人蔵 鞍手町歴史民俗博物館寄託
また、鳥取県立博物館では、自然史資料のなかから大蛇のアゴの骨とされる「蛇骨じゃこつ」が発見されました。これらを含めた新出資料が披露されます。
展示構成
第1部 妖怪の自然史
妖怪は自然に対する恐れの中から生まれ、日本人の自然に対する認識の変容とともにその形を変え、現在の日本人の妖怪観につながっています。ここでは古代から江戸時代に至る妖怪観の変遷を、自然とのかかわりの中でたどっていきます。
第2部 幻獣見聞録
実在と非在のあわいを揺れ動く幻の生き物――「幻獣」を目撃したという記録は、古代から散見されますが、江戸時代になると「幻獣」は盛んに絵に描かれ、またその実物と称されるものが見世物として多くの人びとの目に触れるようになっていきました。ここでは、さまざまな「幻獣」に関する見聞の記録と、ミイラや体の一部など「実物」とされるものが展示されます。
筑前化物絵巻「蟹の床の怪獣」(個人蔵/鞍手町歴史民俗博物館寄託)
第3部 柳田國男から水木しげるへ―現代妖怪文化の源流―
兵庫県出身で日本民俗学の父とされる柳田國男やなぎたくにおは、その民俗学的研究の初期から妖怪に関心を持ち、長らくその事例を収集してきました。その成果は『妖怪談義』という晩年の著作に反映されていますが、柳田が紹介した妖怪たちに姿かたちを与え、キャラクターとして広く浸透させたのが、鳥取県で幼少期を過ごした漫画家の水木しげるでした。ここでは、現代の妖怪観を作り上げた二人の功績について取り上げられます。
1階の展示活動室(通常展示)も観覧OK
企画展をご観覧いただいた方は当日に限り、1階の展示活動室(通常展)も無料で観覧可能。とっとりの自然史(一ノ蔵)、とっとりの歴史と民俗(二ノ蔵)、とっとりの藩と城(三ノ蔵)も楽しんでみてはいかがでしょうか。
〇通常展「とっとりの藩と城」
(第7期)会期:開催中~7月20日(月・祝)
(第8期)会期:7月29日(水)~9月27日(日)
かつて日本人が抱いた自然への恐怖や畏敬の念から生まれ、現代へと脈々と受け継がれてきた妖怪と幻獣の文化。本展では、中国地方初公開となる話題の「筑前化物絵巻」をはじめ、人魚や河童のミイラ、新発見の「異鳥図」や「蛇骨」など、実在と非在の境界を揺るがす貴重な資料約170件が一堂に会します。暑い夏の一日に、どこか愛らしくも恐ろしい妖怪たちの世界を体感してみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
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