今月14日、鹿児島と宮崎で、来年度の公立学校教員採用試験の一次選考が始まりました。注目したいのは、その倍率です。鹿児島はピーク時の12.3倍から今年度2.2倍へ、宮崎は全体で2.1倍、中学校教諭にいたっては1.6倍と過去最低を更新しました。「先生になりたい人が、これほど減っているのか」と驚いた方もいるはずです。隣り合う2県で同じ日に表れた数字は、教員不足が一地域の話ではないことを示しています。今日は、この倍率の奥にある構造を考えてみたいのです。

何が起きたのか 鹿児島と宮崎の数字

まず、それぞれの状況を見ていきます。鹿児島県では、教員採用試験の倍率が2007年度には12.3倍ありました。それが低下を続け、今年度は過去最低の2.2倍です。来年度の採用予定はおよそ519人、受験者は1,076人で、倍率はおよそ2.1倍。県教委は、倍率低下の理由として団塊の世代の退職や、特別支援学級の職員確保で採用者数が増えたことなどを挙げています。

宮崎県では、全体の出願倍率が2.1倍で、昨年度に並ぶ過去最低タイでした。とりわけ中学校教諭は1.6倍で、記録が残る2004年度以降で最も低く、国語や理科など5つの教科で出願者数が採用予定者数を下回りました。採用したい人数より、応募した人のほうが少ない教科がある。これは、選んで採るという前提が崩れかけていることを意味します。

なぜ、倍率はここまで下がったのか

なぜ倍率がこれほど下がったのでしょうか。受験する人が減る一方で、採用したい人数が増えているからです。

では、なぜ採用数が増えているのでしょうか。鹿児島県教委が挙げるように、団塊の世代の大量退職で空いた穴を埋める必要があり、加えて特別支援学級の増加で、より多くの教員が求められているからです。採用枠が広がること自体は、必要に応じた動きです。

では、なぜそれでも受験者が増えないのでしょうか。教職そのものを選ぶ若者が減っているからです。長時間労働や部活動の負担といった「先生は大変そうだ」という印象が広まり、民間企業との人材獲得競争の中で、教職が選ばれにくくなっています。採用の入り口をいくら広げても、そこに向かう人の流れが細っていれば、倍率は下がり続ける。両県の数字は、その構造をそろって映し出しています。

「倍率が低いと、なりやすくていい」では済まない

こう書くと、「倍率が下がったなら、志す人には入りやすくなって良いのでは」と感じる方もいるかもしれません。受験者にとって合格しやすいのは事実です。

ただ、宮崎で5教科の出願者が採用予定を下回ったように、倍率が下がりすぎると、ふさわしい人を選ぶ余地そのものが狭まります。選抜というより、来てくれた人を迎える状態に近づくのです。採用後に育てる負担は重くなり、支える先輩教員の手も足りない。倍率の低さは「入りやすくなった朗報」ではなく、「教職が敬遠されている」というサインとして受け止める必要があります。

「チャレンジ受験」と働き方改革は同じ方向を向いている

では、現場は手をこまねいているのかというと、そうではありません。宮崎県は教員不足対策として、昨年度から大学3年生の受験を一部認める「チャレンジ受験」を導入しました。今年は前年より96人多い227人が出願しています。学生が早い段階で教職を体験し、進路として選びやすくする試みです。

ただ、入り口の工夫だけでは足りません。せっかく入っても働き続けられなければ、また欠員が出て、残った教員にしわ寄せがいきます。鹿児島では現在およそ1万5000人の教員が学校を支えています。その一人ひとりが「この仕事を続けたい」と思える環境をつくること、つまり働き方改革こそが、採用の入り口を広げる施策と表裏一体なのです。受験した若者の一人は、教育実習で不安が「やりがい」に変わったと語っていました。その実感を、入職後にすり減らさせない学校をどうつくるか。倍率という数字は、教室の先生の働き方を映す鏡であり、めぐりめぐって子どもたちの学びに返ってくるのではないでしょうか。

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