FPVのシステムチェックを行う米海兵隊員(5月13日、米海兵隊のサイトより)

 ウクライナ戦争は、単なる地域紛争ではなくなった。人類史上初めてAIが戦争運用の中核に本格的に組み込まれた大規模戦争と呼べるのではないか。少なくとも私はそのように分析している。

 ドローン、自律兵器、AI指揮統制、クラウド戦場管理──これらはもはや補助的技術ではなく、戦争の構造そのものを作り替える「新しい軍事革命(RMA:Revolution in Military Affairs)」の基盤となりつつある。

 筆者が以前から分析し、提唱してきた 「AI自律融合軍(Synthetic Forces)」 の構造がそこに見て取れるからだ。

 AIが戦場の「脳」に近い役割を演じ始め、自律兵器が前線を担い、人間は最終承認者として残るという戦争像は、ウクライナ戦争によって初めて「現実の戦場」として立ち上がった。

 この構造については、拙稿「AIが軍隊を指揮する時代へ、日本に迫る『第4軍種』創設」(JBpress、5月29日掲載)で詳述したとおりである。

戦時イノベーション国家、ウクライナ

 ウクライナは国家総力戦の中で、ドローン産業を爆発的に拡大させた。

その背景には、いくつかの構造的要因が重なっている。

 第1に、兵士不足である。

 人口がせいぜい4000万人ほどしかない国家が長期戦を戦うには、前線に人間の兵士を送り続けることは不可能であり、無人化は「選択」ではなく「必然」だった。

 第2に、NATOの供給限界がある。

 砲弾・ミサイルの供給は需要に追いつかず、ウクライナは自前で戦力を創出する必要に迫られた。その最適解が、民生技術を基盤とするドローンであった。

 第3に、ロシアの物量戦に対抗する「非対称戦力」としてFPV(First Person View=一人称視点)ドローンが決定的だった。

 FPVは操縦者が機体前方の映像を見ながら操作し、爆薬を搭載して突入する「使い捨て精密誘導兵器」である。

 わずかなコストで高価な装甲戦力を無力化できるため、ウクライナが国家戦略としてドローンに投資したのは極めて合理的だった。

 第4に、民間技術の軍事転用の容易さがある。

 FPVドローンは、モーターやバッテリー、カメラなどの主要部品をECサイトから調達できる。

 これらは「民生品」扱いの製品や部品も多く、ウクライナはEC経由で比較的容易に入手できる。

 機体は3Dプリンターなどを活用すれば即日生産できるといわれ、ウクライナは戦場の要求に合わせて設計を即時改良し続ける「超短サイクルの軍需生産」を実現した。

 こうした構造の下、民間企業・大学・軍が一体化し、全国にFPV工房と3Dプリンター工場が立ち上がった。これはAI自律融合軍理論が示す「分散型軍需生産」の典型である。

 その結果、ウクライナ戦争が始まった2022年からウクライナのドローン生産数は急増している。

 米ニューヨーク大学内にあるシンクタンク「Just Security」などの推計によれば、推計によりばらつきはあるものの開戦初期の2022年に年間約3000~5000機だった生産数が、2023年には約40万機へ拡大したという。

 2024年には200万~220万機へ、2025年には400万~450万機に、2026年には約700万~約800万機規模の生産能力・目標が示されている。

 さらに、ウクライナで確立されたドローン運用の知見は、欧州や中東にも広がりつつある。

 イランやその周辺勢力の無人機運用にも、FPVによる装甲車攻撃や自爆UAVによる縦深攻撃など、ウクライナ戦争で顕在化した戦術と類似する構造が見られる。

 ウクライナは、国家全体が戦場の要求に合わせて技術・産業・組織を高速に再編し、戦時下で新しい軍事技術を量産・改良し続ける「戦時イノベーション国家」へと変貌したと言っていい。

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