2026年6月16日 午前7時30分
【論説】福井県の大野市長選は、現職の石山志保氏が、新人で元市議の林順和氏を190票差で破り3選を果たした。両氏とも人口減少対策を最重要課題に掲げて臨んだ選挙戦。石山氏は2期8年の実績と手堅い市政運営を前面に出して支持を集め、大接戦を制した。中部縦貫自動車道(中縦)の県内全線開通が2029年春に迫る中、市民の実感が伴う成果を上げられるか、リーダーの手腕が改めて問われる。
市長選で石山氏は「大野大好き大作戦」と銘打ち、▽子育てと学び応援▽健幸づくり▽産業と交流の力―などを柱に35項目の政策を掲げた。人口維持増加策ではきめ細かな子育て支援や健康づくり事業を継続する考えを示し、減少適応策には市民協働の住民自治の後押し、女性・若者の活躍推進などを挙げた。人口減少が進む中でも、出生数の増加が続いた点などをアピールした。
一方の林氏は、中縦の県内全線開通に向けて「大野をアップデートする必要がある」と説明。地域経済の活性化▽人づくり・教育の充実▽住み続けたい地域づくり▽市政の変革―の4項目を重点政策に掲げた。「市民の不安の声を安心に変え、誇りある大野を一歩でも前に進めたい」と決意を示し、現市政からの転換を訴えた。
両候補とも市職員経験者で、50代前半と40代後半とほぼ同年代。市民や企業などへの伴走型支援を軸とした総合的な政策を進めてきた石山氏に対し、現状への危機感をあらわにする林氏が挑む構図となった。石山氏3選という結果からは、派手さはないものの堅実な市政の継続を有権者が選択した形となった。
ただし、林氏も7千を超える票を集め、現職に迫った。現市政に対する物足りなさや不安、不満を票に託した有権者が一定数いたとみられ、石山氏は今まで以上に市民の声を受け止める姿勢が必要だろう。
22年6月の前回市長選の時点で、中縦の県内全通の予定時期は26年春だったが、追加工事などで29年春に延期となった経緯がある。当時も今回も「千載一遇のチャンス」との声が上がる中、十分な準備は進んでいるだろうか。「3年延びて結果的によかった」となるような具体的な成果が求められるが、誘致したホテルの建設計画が進展していないなど、現状は決して楽観視できない。また、人口減少率は県内9市で最も大きい。3期目に入る石山氏が、市民の実感と共感を高めていく施策をどう推進していくのか注目したい。
