飛び抜けて権威主義的・抑圧的な中国が、支配する香港でインターポール総会を今秋開催する狙いとは?

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2026年05月22日(金)18時15分

ディディ・キルステン・タトロウ
(国際問題・調査報道担当)

インターポール(国際刑事警察機構)が2026年の総会を香港で開催する。かつては開放性と法の支配の象徴だった香港も、今や中国の影響力拡大の実験場となっている。

そのような場所が、警察を監視する国際組織の年次総会にふさわしいのか。弁護士や人権活動家、元警察官僚など多くの人が、世界中の警察トップが集まる会合を中国で開けば、権威主義的な体制を勢いづかせると警鐘を鳴らす。

「あり得ない話だ」と、弁護士のベン・キースは語る。ロンドンの法律事務所に所属するキースは、「レッド・ノーティス(赤手配書)」に伴う問題を数多く扱っている。インターポールが全加盟国に通知する国際手配のうち、レッド・ノーティスは容疑者の所在特定と拘束を要請する。ただし近年は、一部の政府が政治的・宗教的な反体制派などを追跡するために悪用しているという批判が高まっている。

「世界で最も抑圧的な体制の1つであり、レッド・ノーティスを最も悪用している国の1つが(インターポールの)総会を主催するのだ」

フランスのリヨンに本部を置くインターポールの広報によると、今年11月に196の加盟国・地域の警察官僚が香港に集まり、第94回総会が開催される(17年の総会は中国の首都・北京で開催された)。

今年の総会は、中国が22年に提唱した「グローバル安全保障イニシアティブ」の一環で公安省の活動を世界的に拡大している最中に開催されることになる。公安省は中国の警察機関であり、国内外の反体制派を追跡する情報機関でもある。

報道関係者やNGOにとっても危険だと、キースは指摘する。香港警察によると、19年の大規模な民主化デモに関連して1万人以上が逮捕され、3000人近くが起訴された。そこにはジャーナリストや市民活動家も多く含まれている。

翌20年に厳格な国家安全維持法が施行され、同法に基づく有罪率は80%に達する。今年2月には民主派の新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)が、外国勢力と結託した罪などで禁錮20年を言い渡された。

今年3月に同法の改正が発表され、警察当局から電子機器のパスワードの開示を要請されて応じない場合、刑事罰を科されることになった。アメリカ政府は、香港にいる米国民も対象になると注意を呼びかけている。NGO関係者や記者が「逮捕・拘束されるかもしれないからインターポールの会合に行けないという状況自体が異常だ」と、キースは語る。

一国二制度の成果をアピール

香港の保安局は本誌の取材に、総会の開催は「わが国および香港が各国の法執行機関と協力して犯罪と闘う決意を示すものだ」と回答し、次のように説明する。「総会と関連行事を通じて、参加者はわが国の文化と革新性とホスピタリティー、香港の安全と包摂性と繁栄、『一国二制度』の成果、香港警察のプロフェッショナリズムを直接体験できる」

さらに保安局は、国際法と現地の法律に基づいて適切な手配を行うとして、国外メディアにも取材を通して総会の成果を世界中に発信してほしいと期待をにじませた。

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【note限定公開記事】「最も抑圧的な体制の1つ」──中国支配下の香港で開かれるインターポール総会への警鐘

 

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