Googleが、AIアシスタント「Gemini」をAndroidにこれまで以上に深く統合する。アプリをまたいだ日常作業をAIが代行できるようになり、私たちとスマホの付き合い方そのものを変える可能性がある。

 これまでGoogleは、モバイル製品にAIを少しずつ振りかけるように足してきた。だが今回は本気だ。フォーム入力、予定の登録、店の予約といったルーティン作業のたびにアプリを行き来する必要がなくなり、「Gemini」がまとめて引き受けてくれるようになる。

 このアップグレードした機能を、Googleは「Gemini Intelligence」と呼ぶ。Appleの「Apple Intelligence」とは別物だ。狙いは、いちいち指示しなくても先回りして動く「本物のアシスタント」のような存在にすること。

 「これまでのテクノロジーと『Gemini Intelligence』の違いは、それが常に自分のそばにいてくれることだ」。Androidのコア体験を担当するディレクター兼プロダクトマネージャーのBen Greenwood氏は、筆者のインタビューでそう語った。「私が本当に欲しいのは、自分を理解し、私個人を知ってくれる、ひとりのアシスタントだ。その体験が使う製品をまたいで一貫していることは、信頼と使いやすさを築くうえで非常に重要だ」

 Googleはこれらのアップデートを、米国時間5月12日の「Android Show」で発表した。「Gemini Intelligence」は、メモアプリの買い物リストから注文を作成する、といったルーティン作業をこなす。Google Driveなど連携アプリに保存した運転免許証やパスポート番号を使い、複雑なフォームを自動入力することもできる。パンフレットを撮影して「6人向けのツアーを探して」と頼んだり、簡単なプロンプトを与えてカスタムウィジェット(華氏と摂氏の両方で気温を表示するなど)を生成させたりもできる。

 これらの機能は、今年すでに「Pixel 10」や「Galaxy S26」に搭載されたGemini連携タスクに上乗せされる形になる。「Gemini Intelligence」は「Android Auto」「Wear OS」、そしてGoogleのスマートグラスでも動作し、デバイスをまたいで一貫した体験を提供する。

 提供は今夏後半、まず「Galaxy」と「Pixel」のスマートフォンから始まる。どの「Galaxy」が対応するかは明らかにされていないが、サムスンは今後数カ月のうちに次世代の折りたたみスマホを発表するとみられている。Googleも夏に新型「Pixel」を投入する見込みだ。

 プレミアムなAndroid機に「Gemini Intelligence」を載せることは、競合のAppleに対するGoogleの優位につながり得る。Appleはまだ、より直感的で役に立つ「Siri」をiPhoneに届けられていない。もっとも、GoogleのGeminiモデルは、近くそのSiriアップデートの土台にもなる予定だ。

 AndroidのAI中心へのシフトは、業界全体のこれからを予感させる動きでもある。

「AIファースト・スマホ」の未来像

 長年、テック企業は「AIがスマホの使い方を根本から変える未来」を語ってきた。デジタルアシスタントが賢くなれば、日常の雑務をより多く肩代わりできるようになる。

 なかには、スマホのアプリそのものがAIに置き換わると予測する専門家もいる。あらゆる指示に応える対話型の生成AIプラットフォームが、アプリに取って代わるという見立てだ。音楽再生、配車、メッセージ送信を別々のアプリで使い分ける必要が、はたしてあるのか――というわけだ。

 その兆しはすでに見え始めている。OpenAIが独自のAIスマホを開発中だとの報道があり、計画通りなら来年前半に量産を始める可能性がある。Amazonも、従来型のアプリではなくAI機能を軸にしたスマホで、スマホ市場への再参入を狙っていると報じられている。

 「ユーザーは、大量のアプリを使いたいわけではない」。アナリストのMing-Chi Kuo氏は先月、OpenAIに関するレポートでそう指摘した。「彼らはスマホを通じてタスクを終わらせ、ニーズを満たそうとしている。これはスマートフォンに対する人々の考え方を根本から変える」

 Android上の「Gemini Intelligence」は、スマホからアプリを消し去るところまでは行かない。少なくとも今のところは。だが、個々のタスクを手作業でこなす時間を減らすことを目指して設計されている。Googleは、絶え間ないAI機能の登場に食傷気味の人にも「Gemini Intelligence」を試してほしいと考えている。

 「私たちは皆、『タイムズスクエア的なAI』体験に少し疲れている」。Greenwood氏は、派手なAI発表をめぐる疲労感の広がりを念頭にそう語る。「チームがこの機能で取ったアプローチは、人々が実際に抱えて直面している本当の問題は何か、そこにどう手を貸せるかを見つめることだった」

 その一例として同氏が挙げるのが、「Gemini Intelligence」の「Rambler」という機能だ。GoogleのAndroid向けキーボード「Gboard」では、音声入力ツールが言い直し・繰り返し・つなぎ言葉を取り除けるようになった。たとえば買い物リストを音声で送るとき、「トースト、シリアル、バナナ… いや、バナナはなしで」と言えば、トーストとシリアルだけが書き留められる。「Rambler」はGeminiの多言語モデルを使い、1つのメッセージの中で言語を切り替えることもできる。話すときに言語を混ぜがちな人に向いた機能だ。

 「新しい操作を覚えてもらうわけではない」とGreenwood氏は言う。すでにキーボードのマイク機能を使っている人なら、AIがどう体験を最適化しているかを意識せずに済むかもしれない。フォーム入力の自動化も、AIが目立たずタスクをこなすもう1つの例だ。

 突き詰めれば、望むことをいちいち言葉にしなくても、より多くのことが自動で片付くようにする──。それが今回の話だ。残る大きな問いは、GoogleのAIにどこまでハンドルを委ねられるか、人々がそれをどこまで心地よく感じるかである。いずれにせよ、AI主導スマホへの大きな流れは、着実に動き出しているようだ。

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この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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