
1本のバトンを自在に操る技術と、体全体で表現する美しさが融合するバトントワーリング。華やかな見た目の裏側で、バトンの回転スピードや柔軟性、リズム感、そして一瞬のズレも許されない正確性が求められる。個人やチームなどさまざまな種目がある中、ペア演技は選手同士の一体感ある動きが完成度のカギを握る。
大分東明高校バトン部に所属する岸本千紘(3年)と菊川璃奈(2年)はペアを組んで3年が経つ。県大会、九州予選と着実に結果を積み重ね、今年3月、憧れの全日本選手権大会の舞台に立った。
全日本選手権大会に出場した
岸本は幼稚園から同部のバトン教室に通い、競技に親しんできた。姉の影響で始め、基礎を徹底して磨いてきた選手だ。小学生で全国大会を経験し、ソロ部門で上位入賞も果たした。「大切なのはボディワーク。常につま先を意識して演技するようにしている」。長年の積み重ねが、安定した演技の土台となっている。
一方の菊川は、華やかなステージに憧れて競技を始めた。楽しさを原点に続けてきたが、次第に「絶対に落とさない」という強い意識へと変化していく。小学生の頃、九州大会で入賞し、自信を深めた。「見ている人を楽しませたい」。その思いが、表現力の幅を広げてきた。
似た環境で成長してきた2人には、それぞれの持ち味がある。岸本の安定感と菊川の表現力。互いの特長を理解し合いながら、練習では細部にこだわる。バトンの放物線の高さをそろえ、キャッチのタイミングを合わせる。その繰り返しが、一体感を生む。
全国上位を狙う岸本千紘(左)、菊川璃奈
全日本選手権大会では10位。上位には届かなかったが、得たものは大きい。岸本は「全国の舞台を経験できるのは大きな喜び。毎日の練習が中途半端なものではないだけに達成感は強い」と語り、最後の1年間を全力で駆け抜ける覚悟をみせる。菊川も「バトンに出合ってから、目標を持ち頑張ることができる。その先にある達成感は大きい」と話す。
ペア演技は、個の技術だけでは成り立たない。互いを信じ、合わせ続けることで完成度は高まる。全国を知った2人は、その意味を理解した。次に目指すのは、より精度の高い演技である。高さ、リズム、そして呼吸。そのすべてをそろえた先にある景色を求め、静かな積み重ねを次の舞台へとつなげていく。
(塩月なつみ)
