
日本一まで、あと一本。その距離は限りなく近く、そして決して容易には埋まらないものだった。全国高校選抜大会の剣道女子団体で、明豊は2年連続の準優勝。決勝は八代白百合学園(熊本)との激闘。互いに一本を取り合い、2―2で迎えた大将戦も引き分け。勝負は代表戦にもつれ込んだ。大将の川浪絆(3年)は、この大会4度目の大役を担う。延長にまで及ぶ攻防の末、最後は力尽きた。
それでも敗戦は単なる悔しさでは終わらない。川浪の中には確かな手応えが残っている。「絶対に負けない」という強い気持ち。その一点にすべてを注ぎ込んだ大会だった。代表戦が続く極限の状況でも、体力の限界より先に勝利への執念が前に出る。その精神力こそが、明豊を勝ち上がらせた原動力であり、川浪自身の核でもあった。
負けず嫌いが成長の原動力となった
中学時代に全国大会への出場経験はあったが、突出した存在ではなかった。それでも心の奥には誰にも負けたくないという強い思いがあった。「無名でも明豊に行けば強くなれる」。その言葉を信じて進学を決め、姉の後を追うように新たな環境へ身を置いた。自分も結果を残せるのかという不安はあったが、その迷いと向き合った経験こそが成長へと導いた。
岩本貴光総監督は、川浪の成長を確信していた。「初戦から接戦を勝ち抜き続けて、全国選抜大会で一段階上のレベルに行った」。とりわけ代表戦での起用は、川浪の性格への信頼からだった。「負けん気が強く、責任を背負える選手」。その期待通り、川浪は何度もチームを救い、最後まで戦い抜いた。
明豊が「高校で伸びる」と言われる理由は明確だ。男子と同じ強度で稽古を積み、スピードと力の差を肌で感じる。その中で生まれる「追いつきたい、超えたい」という意識。さらに同量の稽古が体力を鍛え、女子特有の粘り強さと融合することで思い切りの良い力強い剣道が形成される。川浪もまた、その環境の中で磨かれてきた一人である。
今大会で得た最大の収穫は、「気持ちの重要性」を自覚したことだ。技術だけでは届かない領域がある。勝負の最後を分けるのは、どこまで「負けない」と思い続けられるか。その答えを川浪は身をもって知った。
全国総体で日本一を目指す
全国高校選抜大会で優秀選手に選ばれたが、満足はない。「もっと成長しないといけない」。その言葉に現状への冷静な視線がにじむ。準優勝という結果に安住することなく、「一試合一試合、相手に勝つ」という姿勢を貫く覚悟も固まっている。
5月末の県高校総体を勝ち抜き、九州、そして全国高校総体へ。目標は明確だ。「日本一」。だがその道は決して特別なものではない。積み重ねの先にしかないと川浪は知っている。悔しさを原動力に変えられるかどうか。それが次の扉を開く。2年連続準優勝という現実は、頂点までの距離を示すと同時に、その到達可能性を証明した。負けず嫌いというシンプルな衝動を武器に川浪はさらに前へ進む。
(柚野真也)
