宇宙状況監視センターの状況監視モニター(ドイツ国防省・連邦軍のサイトより、以下同じ)

 2022年2月、ロシアによるウクライナへの侵攻が、ウクライナの衛星通信への攻撃から始まったことは意外に知られていない。

 これは、将来の戦争は宇宙空間でも行われることを示している。いわゆる、マルチ・ドメインの一つの重要な領域となっている宇宙においては、熾烈な競争が国際的かつ戦略的に実施されている。

 加えて、一部の国家が宇宙空間において勢力を拡大しようとしており、その結果、宇宙空間の自由や安全保障そのものが脅威に晒されている。

 人工衛星が活動している宇宙は位置測定からナビゲーション、時刻信号の配信、通信、気象観測そして地球観測のため極めて重要な空間であり、人工衛星の故障や障害が発生すれば、日常生活に深刻な影響が及ぶほか、 安全保障上も重大な事態となりかねない。

 本稿はドイツが昨秋、史上初めて策定した宇宙安全保障戦略の下、宇宙戦争への備えを進めている現状について紹介するものである。

宇宙空間における国際諸条約

 宇宙におけるルールに関する国際的な枠組みは、1960年代から1970年代にかけて宇宙活動に関する基本的なルールを定めた5つの条約・協定、ソフトローと呼ばれる国連原則、新たな国際合意などから構成される。

 このうち、宇宙法の中で基礎となる法規が宇宙条約である。

 1967年に締結された宇宙条約の正式名称は「月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家活動を律する原則に関する条約」である。

 内容としては、宇宙条約第2条において、宇宙空間・天体は領有権の対象にならないこと、同条約第3条において、宇宙利用にあたっては国際平和のために国連憲章を含む国際法に則って進めること、同条約第4条において、大量破壊兵器を地球の軌道に打ち上げてはならないこと、および天体には軍事基地を建設してはならず、軍事演習や兵器試験を行ってはならないことが規定されている(国連の宇宙条約)。

 それ以外については、ごくわずかな例外を除き、宇宙では禁止されていることはない。

 その意味で、宇宙は一部において法や規制の及ばない空間と言える。

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