
まるで文化・エンタメの連中が「わがままを言っている」かのような奇妙な言説が支配的となっているが、今回たまたま私の同業者たちが、戦争の前段階的な表現ともいえる「経済制裁」の経験を、日本社会に向けて最初に伝える役割を担ったに過ぎない。
もちろん、「公演中止になりましたが、わたくしは幸せです!総統閣下の方針に全面的に賛同致します!」などと述べている者はおらず、当事者は皆、相応のショックを受けていると思うが、資源や食糧、製造、観光などの他分野に比べて、われわれ文化、エンタメに従事する者たちの中国に対する経済的な依存度は極めて低い。
愛するリスナーや音楽仲間がいるから、彼ら彼女たちが呼んでくれたから、そこに赴いている。つまり国内ツアーと同じ理由で中国へ行っている者が殆どだろう。
ゆえにサプライチェーンの再構築、などといった間の抜けた助言が役立つことはない。我々はただ友情関係にあるだけで、共依存関係にはないのだから。しかし今後、日本社会のより広範なセクションが甚大な影響を受けた場合も想定し、覚悟すべきだろう。
経済制裁の応酬、防衛費の増大、武力衝突、考えたくもないが、自国と相手国のリソース、遂行能力すら勘案せず、同盟国とされている国の真意さえ把握せず、事のプロセスと着地点についてなんらのヴィジョンも持たないまま東アジアの緊張を高め、感情的な煽り合いを加速させてゆくことは、官軍民の大部分が時代を支配する空気に呑み込まれていった先の大戦と同様か、それ以上の惨禍をもたらす。
叩きやすいものを相手に誹謗中傷を行なっている人々の生活も、ある段階を超えた時点で、一変することになる。
引用にあたり強調はこちらで行った。
