公開日時 2025年11月08日 15:07更新日時 2025年11月08日 15:48

船乗っ取り、200年後「対面」 英国船の囚人と徳島藩士の子孫

 交流イベントで記念写真に納まるエミリー・オハラさん(右端奥)や速水裕幸さん(左下)ら=10月、徳島市

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共同通信

 江戸時代後期に英国植民地だったオーストラリアの近海で囚人が英国船を乗っ取り、徳島県に漂着した事件が脚光を浴びている。囚人と、追い払った徳島藩士双方の子孫の交流イベントが徳島で開かれたほか、小説出版の動きも。乗っ取りから200年となる2029年に向け、注目度はさらに高まりそうだ。

 1829年8月、英国船「キプロス号」で現在のオーストラリアにあった監獄に護送中だった囚人が反乱して船を乗っ取り、翌30年1月に同県牟岐町に漂着した。囚人たちは4日間停泊した後、幕府の異国船打払令による砲撃に遭い退去した。

 こうした縁で同国の映像制作会社「ギャザラーメディア」が今年10月中旬、囚人と藩士の子孫が対面するイベントを徳島市で開催。停泊中に藩士らが水を差し出した当時の様子などを再現した阿波人形浄瑠璃が披露された。

 囚人の子孫でカナダから参加したエミリー・オハラさん(39)は「200年近くの時を経て子孫同士で会うことになるとは思ってもみなかった」と感激した様子。藩士の子孫、神戸市の速水裕幸さん(83)は「鎖国政策の時代に生きた先祖は、子孫の交流をどんな気持ちで見ているか聞いてみたい」と思いをはせた。

 オーストラリアでは、事件の首謀者ウィリアム・スワロウをモデルにした小説「スワロウ」が出版された。オンラインで購入できる。2029年にはシドニーの国立海洋博物館で、事件に関する日本の古文書や囚人が使った剣などの展示会が予定されており、30年にはニュージーランドやトンガ、香港、日本での巡回展も検討されている。

 ギャザラーメディアの波多野亜弥さん(50)は「世界で分断が深まる時代に、漂着事件が日豪の相互理解を深める橋渡しになれば」と期待を込めた。

 豪囚人乗っ取り船漂着事件 1829年8月、現在のオーストラリア近海で、英国船「キプロス号」で監獄まで護送中だった囚人18人が反乱し、船を乗っ取った。船はニュージーランドなどを経て徳島県牟岐町出羽島近くに漂着。その後、現在の中国・広州まで航海した。最終的に5人が英国までたどり着いたが、海賊行為で逮捕された。一連の出来事はオーストラリアの民謡にもなった。同国と日本の最初の接点となった可能性があるとされる。

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