アーティゾン美術館(東京・京橋)で「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」が6月24日から開催されます。
地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートは改めて注目を集めています。2024年に開催された第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展で、アボリジナル作家の個展を展示したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞したことからも、その世界的な評価と関心の高さがうかがえます。またオーストラリア現代美術では、多数の女性作家が高い評価を得ており、その多くがアボリジナルを出自の背景としています。
アーティゾン美術館では前身となるブリヂストン美術館時代の2006年に「プリズム:オーストラリア現代美術展」を開催し、以降継続的に作品を収集しています。本展は複数の女性アボリジナル作家に焦点をあてる日本で初めての機会となります。所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出品作品を通して、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じ取ると同時に、イギリスによる植民地時代を経て、どのように脱植民地化を実践しているのか、そしてそれがいかにして創造性と交差し、複層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形作っているのか考察します。
ノウォンギーナ・マラウィリィ《バラジャラ》2018年、自然顔料、印刷用インク・樹皮、ケリー・ストークス・コレクション © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《私の犬、ブルーイーとビッグ・ボーイ》2018年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル Image by Jonathan Daw. © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術
会場:アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)
会期:2025年6月24日(火)〜9月21日(日)
休館日:月曜日(7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日、8月12日、9月16日
開館時間:10:00–18:00(毎週金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
入館料:日時指定予約制/5月24日(土)よりウェブ予約開始
ウェブ予約チケット1,800円、窓口販売チケット2,000円、学生無料(要ウェブ予約)
※予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットを購入可能
※中学生以下はウェブ予約不要
※この料金で同時開催の「石橋財団コレクション展 コレクション・ハイライト」も観覧可能
詳しくは美術館公式サイトへ。
見どころ1:日本初、女性アボリジナル作家たちによる展覧会
女性アボリジナル作家の多くは、今日のオーストラリアのアートシーンを牽引し、さらに国際的な現代美術の舞台でも存在感を強めています。しかし現代アボリジナル・アートが興隆した1970年代から80年代は、女性は作家として認められず、男性が制作の中心でした。
いかにして彼女たちはその立場を逆転し、後のアボリジナル・アートそしてオーストラリア現代美術の方向性を握るようになったのか。本展は、女性アボリジナル作家に焦点をしぼることで見えてくる、オーストラリア現代美術の現在地を、世代と地域を越えた7名と1組の作家から読み解いていく日本初の展覧会です。
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
ジュディ・ワトソン《記憶の深淵》2023年、天然藍、グラファイト、シナグラフ ペンシル、合成ポリマー絵具・リネン、作家蔵(ミラニ・ギャラリー) © Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia. Photography by Carl Warner.
ジュリー・ゴフ《1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》2008年、木製椅子・焼けたティーツリーの枝、オーストラリア国立美術館、キャンベラ © Julie Gough
見どころ2:アボリジナル・アートの「いま」に注目
現代アボリジナル・アートの特徴のひとつに、制作手法や作品のテーマ、そして用いられる素材の多様性が挙げられます。その豊かな表現力の拡がりに、女性作家が大きく貢献しています。例えば、バティック、ジュエリー、編み物、土地神話物語(ドリーミング)を含まない事象的な主題など、それまで芸術作品として受け容れられていなかった創作を、彼女たちは芸術表現に昇華させました。
また出品作家のなかには、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興など、幅広いテーマを扱っています。そして、脱植民地化の言説が進むオーストラリアで、女性作家たちはアートを通して積極的にその実践を試みています。本展では、彼女たちの多様な創作活動を丁寧に追い、アボリジナル・アートの「いま」に迫ります。
マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke
ノウォンギーナ・マラウィリィ《ボウンニュー》2016年、ナチュラル・オーカー・樹皮、石橋財団アーティゾン美術館 © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
ジュディ・ワトソン《赤潮》1997年、顔料、パステル・カンヴァス、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Judy Watson / Copyright Agency, Image © Art Gallery of New South Wales
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
見どころ3:オーストラリア各地で躍動する作家たちを一挙紹介
アボリジナル・アートの多様性は、オーストラリアの広い国土に由来します。国際的に高い評価を得る本展の出品作家の地域性は、彼女たちの作品を読み解く鍵のひとつです。
伝統文化が深く根付くコミュニティ出身作家から、エミリー・カーメ・イングワリィ、マダディンキンアーシー・ジュウォンダ・サリー・ガボリ、ノウォンギーナ・マラウィリィ、そしてコレクティヴとして活動するジャンピ・デザート・ウィーヴァーズを出品します。
現在のアボリジナル人口の8割が都市部に住むオーストラリア社会において、都市部出身もしくは都市部を拠点に活動する作家も見逃せません。マリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソンらを出品します。
ノウォンギーナ・マラウィリィ《バラジャラ(ジャラクピに隣接するマダルパ氏族の土地)》2019年、自然顔料、リサイクルした印刷用インク・ユーカリの樹皮、ケリー・ストークス・コレクション © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《ドンキー》2021 年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
マリィ・クラーク《ポッサムスキン・クローク》2020-21年、ポッサムの毛皮、ヴィクトリア国立美術館、メルボルン © Maree Clarke
ジュリー・ゴフ《ダーク・バレー、ヴァン・ディーメンズ・ランド》2008年、タスマニアン・フィンガル・バレーの石炭、ナイロン、北ミッドランド(タスマニア)の落角、タスマニアン・オーク、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Julie Gough
本展は、近年、「現代アート」の文脈で世界的に注目が進むアボリジナル・アートに着目し、複数の女性作家を取り上げた非常に画期的な展覧会です。オーストラリア先住民に受け継がれた文化や精神性を背景として産み出された多様な表現から、アボリジナル・アートの「いま」を体感してみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
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