英国債市場の最近の混乱は、2022年の「トラス危機」と比較されているが、むしろ1970年代の債務危機を彷彿(ほうふつ)とさせる。

  元イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員のマーティン・ウィール氏はこのように分析し、労働党政権は英国の債務負担に関して市場を安心させるため、緊縮財政をとらざるを得ないかもしれないと述べた。

UK Chancellor Of The Exchequer Kwasi Kwarteng Present Fiscal Plans

首相官邸を出るトラス首相(2022年9月23日当時)

Photographer: Chris J. Ratcliffe/Bloomberg

  ここ数日、英国の長期借り入れコストは急上昇し、ポンドは急落した。債務を抑制しインフレを抑え込む政府の能力に対する信頼を投資家が失ったことを示す、珍しい組み合わせだ。

  通常、利回り上昇は通貨を支えるが、9日午前にポンドは1.23ドルを割り込み、2023年11月以来の安値をつけた。

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  この展開は1976年の債務危機の「悪夢」を思い起こさせるとウィール氏は言う。英国は当時、大幅な財政赤字と貿易赤字で危機に陥り国際通貨基金(IMF)に39億ドル(現在のレートで約6200億円)の融資を申請した。その見返りとして、政府はIMFが課す緊縮財政に同意した。英国は現在、再び双子の赤字を抱えている。

  借り入れコストの急上昇は、財政健全化を進めようとするリーブス財務相にとって頭痛の種だ。同氏が予算案で見込んだ99億ポンド(約1兆9000億円)という財政のわずかなゆとりは失われ、予算責任局(OBR)が財政見通しの更新を予定する3月26日を前に不安定な状況が生まれる恐れもある。

  他のエコノミストや投資家は、最速の成長によって大幅な歳出増を賄うという労働党の約束への懐疑が、今回の市場の動きの原因だと主張している。

Bank of England Monetary Policy Committee Member Martin Weale Interview

Martin Weale in 2013.

Photographer: Simon Dawson/Bloomberg

  現在キングス・カレッジ・ロンドンの経済学教授であるウィール氏はブルームバーグとのインタビューで、「ポンドの急落と長期金利の上昇という有害な組み合わせは、1976年以来見たことがない。それがIMFによる救済につながった」とし、「今のところそのような状況にはないが、財務相にとっての悪夢の一つに違いない」と語った。

  英政府の借り入れコストは年初から、政治的混乱の渦中にあり英国よりも借入額が多く債務残高が大きいフランスよりも、急速に上昇している。

  金融市場の投資家は、英資産が売られたのは楽観的な成長予測に支えられた労働党の予算計画が実現可能かという疑念や、根本的なインフレに対する懸念を反映していると指摘した。

  ウィール氏は、市場環境がさらに悪化した場合、労働党は「債務が適切に管理されている」ことを市場に示すために、歳出を削減し、増税する以外に選択肢はほぼないだろうと述べた。

  リーブス財務相は、日々の支出を税金で賄うという自ら課した財政ルールに対して、わずかなゆとりしか残さなかった。もし事態が変わらなければ、ゆとりはもはや消滅し、同相は3月に歳出削減か増税のどちらかを迫られる。

  ドイツ銀行は、2029-30年度の英国の金利負担が予算案で見込まれた額よりも100億ポンド増加すると試算。ブルームバーグ・エコノミクスのダン・ハンソン氏は、利回り上昇による追加費用を約120億ポンドと予想した。

 

  ウィール氏は予算問題は以前から生じていたとして、歴代の保守党財務相らも英国の債務負担の増大に対処することができなかったと指摘した。英政府債務は1960年代前半以来の高水準となっている。

  「過去20年間、政府は物事がうまくいかないときに負債を増加させる一方、好調な時期にそれを減らすことをしてこなかった。市場が今までそれを懸念していなかったことの方に恐らく驚くべきだろう」とウィール氏は語った。

原題:UK’s Bond Turmoil Invokes Specter of 1976 Debt Crisis (Correct)(抜粋)

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