一貫性がなかった「保存」の姿勢

フォードの初代アーカイブ担当者はなんとヘンリー・フォード氏本人であり、彼は自身が保管していた重要な文書の山を、ヘンリー・フォード博物館に寄贈した。

一方、ヘンリー・フォード2世は保存にそれほど熱心ではなかったと、ライアン氏は指摘する。

バンの初代トランジット(手前)と2代目トランジット(奥)バンの初代トランジット(手前)と2代目トランジット(奥)

「彼は自分の書簡をすべて破棄しました。あるインタビューで、彼は『秘書が隣の部屋ですべてをシュレッダーにかけている』と語っているんです」

過去の記録の扱い方については、長年にわたり大きく変動してきたという。

「2003年のフォード創立100周年の際には23人のアーカイブ担当がいましたが、かつては社外の倉庫にたった1人しかいない時期もありました。気の毒な女性でした」

ライアン氏はアーキビストの第一人者の1人であるため、彼の起用は、フォードが自社の歴史をいかに真剣に捉えているかを示すものだ。ライアン氏が部門を統括する一方、アーカイブ自体の管理は、6人のチームを率いるレスリー・アームブラスター氏が担当している。

彼らの役割は、歴史家、ジャーナリスト、そして探偵を融合させたようなものだ。膨大な資料を精査して関連資料を発掘する傍らで、展示会の企画を手伝ったり、メディア、マーケティング部門、法務部門からの検証や事実確認の依頼に対応したりしている。

何を残し、何を捨てるか

では、新しい書類の山を掘り下げる際、アーキビストたちは何を探しているのだろうか。

「『何かクールなものを見つけたら教えて』というのが、わたし達の基本方針です。最初は、スタッフから『クールとはどういう意味か』と聞かれました。わたしは『それは一目で見分けがつくものだ。君に語りかけ、他の人々にも語りかけるようなものだ』と説明しました」

フォードのヘリテージブランドマネージャー、テッド・ライアン氏フォードのヘリテージブランドマネージャー、テッド・ライアン氏

一例を挙げよう。AUTOCARとのインタビューの少し前に、ライアン氏は世界初の車載8トラック・カセットプレーヤーの画像を探していた。1965年型サンダーバードの画像を探していたところ、ファルコン・ギャラクシー、フェアレーン、マスタング、ブロンコ、ランチェロの写真が見つかった。

「これらは3年先のモデルです。1枚の写真が、1968年に登場するクルマを垣間見せてくれたんです。まさに最高にクールな画像でした」

ライアン氏の仕事は保存だが、意外なことに、その役割の大部分は「何を残さないか」を選ぶことにある。

「重要なものを厳選しているのです。物を捨てられないアーキビストは、あまり良いアーキビストとは言えません。フォードが生産するもののうち、保存すべきはおそらく3%程度です。捨てることで解放され、残すものが将来役立つと確信できるようになるのです」

現代におけるヘリテージの役割

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