井上尚弥vs中谷潤人は12ラウンドの死闘の末、3-0で井上が判定勝ちを収めた。世界も注目した一戦を、敏腕イギリス人記者はどう見たのだろうか。世紀の一戦のリアル評は?《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》
それは間違いなく、激闘だった。ただし、殴り合いの応酬という意味ではない。神経と判断力を削り合う、“高度な激闘”だった。
井上尚弥が中谷潤人をユナニマスディシジョンで下し、33連勝。
世界戦は史上最長の28連勝とし、自らの記録を更新した。数字だけを見れば王者が順当に防衛した一戦に過ぎない。
だが、この36分間は、単なる勝敗の積み重ねでは片付けられない“構造”を持っていた。この試合には、ボクシングの魅力が凝縮されていた。
打ち合い、ディフェンス、フェイント――そのすべてが高い精度で交錯し、どちらも一撃で試合を終わらせることができる緊迫感が最後まで消えなかった。派手な打ち合いではない。それでも視線を外せない。12ラウンドを通して、張り詰めた緊張が持続していた。
日本では5万5000枚のチケットが完売し、最後はスタンディングオベーションで締めくくられた。
一方で、アメリカやイギリスではトップニュースではなかった――それは当然だ。ボクシングはアメリカでスポーツのメインストリームではなく、フロイド・メイウェザーやマイク・タイソン、サウル・アルバレスのような“文化的存在”でなければ、大きな見出しにはならない。イギリスでも、サッカーのビッグウィークエンドと重なっていたこともあって、各メディアのトップページを大きく飾るほどではなかった。
