【やさしく解説】オルバン政権とは

ハンガリー総選挙で与党が大敗し、オルバン首相の退陣が決まりました。オルバン氏は「非リベラル」を掲げ、欧州の極右・ポピュリズムを象徴する存在だっただけに、各国の極右勢力に衝撃が走っています。オルバン氏はなぜ敗れたのか、欧州を席巻する極右勢力は今後どうなるのか。やさしく解説します。

トランプ氏もルペン氏も応援していたが…

 4月12日に実施されたハンガリー総選挙は、マジャル氏率いる新興野党「ティサ(尊重と自由)」が総議席199の3分の2を超す141議席を獲得し、大勝しました。オルバン氏の与党「フィデス(青年民主同盟)」は52議席止まり。新たな改革を求める若い有権者が積極的に投票し、投票率は79%と過去最高を記録しました。

 オルバン氏は反移民、反欧州連合(EU)を掲げる欧州極右勢力の代表格です。

敗北したオルバン首相(写真:ロイター/アフロ)

 2010年の首相就任以来、16年間にわたって政権を維持し、欧州各国の極右政党にも支援を続けてきました。米国のトランプ大統領の1期目(2017〜2021年)よりも前から右派ポピュリズムを率い、「トランプ以前のトランプ」と称される人物です。

 ハンガリーの総選挙では、欧米各国の極右勢力がオルバン氏支持を表明してきました。オルバン氏が中心となって結成された欧州議会の極右会派「欧州の愛国者」は、今年3月23日にハンガリーの首都ブダペストで集会を開き、フランス、英国、ドイツ、オランダなどの極右政党代表らが集結。フランス「国民連合」のルペン党首は「ハンガリーは欧州において抑圧に抵抗する人々の象徴となった」とオルバン氏支持を訴えたのです。

図表:フロントラインプレス作成

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 米国のトランプ政権も同じです。選挙戦終盤にはバンス米副大統領がハンガリーを訪問し、オルバン氏を「欧州の官僚政治に立ち向かう指導者」と持ち上げました。トランプ氏は、米国のイラン攻撃に批判的な北大西洋条約機構(NATO)からの脱退をほのめかすなど反欧州の姿勢を取っており、その点、オルバン氏は盟友と言える関係でした。

 さらにオルバン氏はEUのウクライナ支援にも反発。今年1月には900億ユーロ(約16兆8000億円)の対ウクライナ融資に拒否権を行使し、EUは支援を実施できずにいました。総選挙の結果を受けハンガリーは方針を転換、ようやく支援の承認に至ったところです。ハンガリーはエネルギーをロシアに依存することなどから、オルバン氏はプーチン大統領とも親密な関係を保ってきたのです。

 それだけに、オルバン氏の敗北は各国の右派指導者たちにとってショックに違いありません。ただし、表向きは冷静な対応を示しています。

 ルペン氏はハンガリー総選挙の結果を受けて「オルバン氏に向けられた独裁批判は理不尽なものだったが、ハンガリー国民は政権交代の道を選んだ」と述べ、次期政権との関係構築に期待を示しました。トランプ氏はオルバン氏を「いい指導者だった」と語り、ロシアは「ハンガリー国民の選択を尊重する」(ペスコフ報道官)との姿勢です。

 総選挙でオルバン氏に勝利したマジャル氏がフィデス出身の右派政治家であることから、各国の指導者は今後のハンガリー政権の姿勢を見極めようとしているようです。

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