エンジェル投資家として魅族の創業者と親交を深めた雷軍(レイ・ジュン)氏は、2010年にシャオミを創業。魅族の“友人”から“ライバル”に転じた。
後発のシャオミは外部資本を取り込み、徹底したコストパフォーマンス戦略で急成長。魅族はあっという間に追い抜かれ、さらにファーウェイ、OPPO、vivoの後塵をも拝するようになった。
2015年、魅族はアリババグループから5億9000万ドル(約690億円:当時のレートで1ドル=118円換算)の出資を受け、巻き返しに打って出る。
同年発売の「魅藍(Meilan)Note 2」は、性能こそ競合に劣るものの、洗練された外観と独創的な操作ボタンを備え、700万台を超える大ヒットを記録。同年の魅族ブランドのスマホ販売台数は前年比4.5倍の2000万台に達し、輝きを取り戻したかに見えた。
しかし複数の戦略ミスでその後は失速。ファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivoの4強体制は盤石となり、魅族は2019年に経営危機に陥って新機種も出せなくなった。2021年上半期には中国でのシェアが1%を切り、死を待つばかりだと思われていた。
吉利による買収で「車との融合」
魅族のOS「Flyme」は吉利グループの自動車に搭載が進むReuter
ところが、「自動車のスマホ化」によって魅族は再び救命の草をつかんだ。
2022年、自動車大手の浙江吉利控股集団(Geely)傘下企業に買収され、新会社「星紀魅族」として再出発した。

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吉利が魅族に注目した理由は、独自OS「Flyme」の存在だった。Androidを高度にカスタマイズしたFlyme OSは長年高い評価を得ており、その技術を車載システムに応用しようと考えたのだ。
吉利はスマホと車の融合による「スーパー・シナジー」を掲げ、魅族も「3年以内にハイエンドスマホ市場トップ5に返り咲く」と宣言した。
新会社は車載ソフトウエア「Flyme Auto」を発表し、吉利とボルボの共同ブランド「リンク・アンド・コー」の車両に搭載した。魅族のスマホを持って近づくと自動解錠され、車内ディスプレイでスマホアプリを操作できるなど、スマホと車の融合を前面に打ち出した。
魅族は「スマホと車の融合」という物語を掲げ、ハイエンドモデル投入や「AIスマホへの全面転換」を宣言するなど再起を模索した。ただ、中国のスマホ市場でファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivoの4強にアップルとHONORを加えた6ブランドが95%近いシェアを占める中、魅族は「Others(その他)」から抜け出せず、2025年の同ブランドののスマホ年間販売台数は100万台を割り込んだとされる。
外部環境の急変が追い打ち
魅族が吉利に買収された当時から、吉利が欲しいのは自動車のOSでありスマホはいずれ切り捨てられるとの見方があった。スマホ事業からは資金や有能な人材が次々と引き抜かれ、研究開発投資が致命的に不足したとの指摘もある。一方、魅族の根強いファンは、その復活を願い続けていた。
ただ、魅族は新製品の開発を進めており、2026年1月にはその進捗の報告もあった。打ち切りは急な決断だったのだろう。
背景には、スマホのコストの多くを占めるメモリ価格の高騰がある。AIサーバー需要の急増により、半導体大手が高収益のAI向けメモリ生産を優先。その結果スマホ用メモリ価格は急騰し、シャオミやOPPO、vivoでさえ発注量を下方修正したと報じられる。
吉利グループ全体の視点に立てば、販売が振るわず発言権も低い魅族のスマホ事業を切り捨てることは、もはや不可避な選択だったのかもしれない。
魅族はスマホの新規開発の一時中断を発表しただけだが、社内のリークによると既に大規模なリストラを実施中で、車載システム「Flyme Auto」は独立し、従業員の一部は吉利のEV部門に移籍するという。
また、魅族ブランド自体は吉利グループ内に残るが、他子会社が業務を継承する。
中国で最初にスマホを発売した草分け的メーカーの終章は、業界が淘汰の最終局面に入ったことを示唆する出来事なのかもしれない。
市場の成熟とメモリコストの持続的な上昇を背景に、市場調査のカウンターポイントやIDCは、中国主要メーカーの2026年のスマホ出荷台数がマイナスになると見込んでいる。
浦上早苗: 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者。早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社(12年半)を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師のため6年滞在。「新型コロナ VS 中国14億人」「崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ」(大和書房)。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。
