【画像】広がる米国脱退の影響 WHO改革の議論に日本は積極関与を

 財政的打撃は深刻である。米国はかつてWHOにとって最大の資金拠出国であり、22〜23年の2年間で約12億8000万ドルを拠出してきた。脱退の影響を受け、WHOはすでに採用凍結・出張制限などの緊縮措置に着手しており、26〜27年予算案は当初の53億ドルから42億ドルへと大幅圧縮を余儀なくされている。感染症サーベイランスからポリオ撲滅、母子保健まで、世界中で実施されてきた多くのプログラムに支障をきたすことは避けられない。

 しかし、WHOの苦境は米国一国の問題にとどまらない構造的問題でもある。

 その根底にあるのが、世界規模で進む「ナショナリズムの台頭」だ。自国第一主義の機運が高まる中、国際機関への資金拠出は国内政治的な説明責任を果たしにくく、政治家にとっての「票」にもつながりにくい。実際、英・独・仏など欧米の主要国も防衛費拡大の圧力のもとで政府開発援助(ODA)を削減しており、グローバルヘルス分野の資金は新型コロナウイルス感染症のような危機が起きるたびに急増し、平時には収縮するという「危機が去れば忘れられる」構造から抜け出せていない。

 財政面だけではない。WHOのガバナンス構造にも根深い問題がある。加盟国は出資額の多寡にかかわらず総会で等しく「1票」を持つため、拠出額と意思決定への影響力が連動しない。数で勝る低中所得国側が結束すれば、主要ドナー(活動資金の大部分を拠出している国)の意向とは異なる方向に議論が傾きやすい構造だ。こうした不公平感は以前から加盟国の中でくすぶっており、今回の米国脱退の背景にもその一端が見て取れる。

 こうした財政難とガバナンスへの不満が重なる中、WHOなどの多国間機関への拠出(マルチ)を減らし、二国間支援(バイ)に重心を移す国が増えている。前者は、WHOのような国際機関に資金を拠出し、その機関が各国支援を行う仕組みだ。一方、後者は、ある国と途上国が直接取り決めて行う支援であり、例えば途上国に研究所を建設する際に自国企業が受注し、自国の研究者を送り込むことで、感染症情報へのアクセスや外交関係の強化といった見返りを得やすい。つまり、バイはマルチと比べて外交ツールとして直接的に活用しやすく、国内向けにも「成果が見える支援」として説明しやすい利点がある。

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