⽇本初のヨーロッパの写真祭「SEEEUシーイーユー ヨーロッパ写真月間 2025」が10⽉23⽇(⽊)から11⽉23⽇(⽇)まで初めて東京で開催されます。
12か国14組の作家の写真作品が450点以上が東京に集まり、ヨーロッパの多様な写真⽂化を⽇本に紹介します。会場は、建築現場の仮囲いやカフェ、ギャラリーなど、東京の屋内‧屋外会場12か所で、すべて無料です。

毎年開催を目指しており、今年のテーマは「現実の新たな輪郭」。写真を通してヨーロッパで今起きている出来事を⾒つめ、ヨーロッパや日本など世界が現在直⾯している課題に向き合う機会を創出するとしています。

会場:⾚坂⼆・六丁⽬地区開発計画 ⼯事仮囲い/さくらインターナショナルスクール初等部 / ⽥町センタービル屋外部 /⽥町センタービルピアタ(屋内部) / 都営バス「EXシアター六本⽊」バス停前(渋⾕⽅⾯)⼯事仮囲い /ヨーロッパハウス / 国連⼤学ギャラリー / Jinny Street Gallery / G2(Ginzan Coffee 2)/ HOME/WORK VILLAGE HVEN / WPÜ SHINJUKU

 

EU(欧州連合)と東京都歴史⽂化財団 アーツカウンシル東京が助成。10月29日(水)夜7時からベルギー大使館(千代田区)でウクライナのためのチャリティーアートオークションが行われるなど、期間中に様々な関連イベントが行われます。イベントの参加費は基本的に無料ですが、公式サイトやSNSで最新の情報を確認してください。

・公式サイト(https://www.seeeu.jp/)
・SNSは、X、インスタグラム、フェイスブック。アカウントはすべて(@seeeu_jp)

開幕前日の10月22日には、会場のひとつ、新宿のホテルWPÜ SHINJUKUで記者会見が行われ、出展した4人のアーティストが作品に込められた思いや背景などを説明しました。

(右から)タイヨ・オノラト、マリア・マヴロポール、ヴァルヴァラ・ウリク、イーゴル・シラー ©中川達彦
タイヨ・オノラト&ニコ・クレブス《Water Column 》/ 会場:都営バス「EXシアター六本⽊」バス停前(渋⾕⽅⾯)⼯事仮囲い
©中川達彦

本作は、海洋科学者たちと写真家ユニットの⻑期にわたる協働をとおして、探検と実験を重ねながら⽣まれた作品です。舞台はアフリカ⼤陸とアラビア半島にはさまれた紅海の研究施設。写真家たち⾃らスキューバダイビングをしながら、サンゴの群⽣やクラゲなどの深海⽣物の他に、⽔中に放った鮮やかな染料が渦巻く様⼦などを最新の⽔中撮影技術を⽤いて捉えています。本作は、⾃然の未知なる世界に魅了されることは、同時にその脆さを意識することと表裏⼀体であることを⽰唆しています。タイヨ‧オノラトとニコ‧クレブスは常に現実と虚構の境界を探る実践的な写真作品を⽣み出してきました。彼らはウィットと緻密な構成によって、現実と虚構が溶け合う舞台として海を描き出しています。

マリア・マヴロポール《Imagined Images 》会場:Jinny Street Gallery

数⼗年前に撮られたであろう家族写真の数々。よく⾒ると⼈々の表情や⾝体の⼀部は歪み、不思議な違和感をおぼえます。なぜならこれらの「写真」は、作者が家族写真を⼈⼯知能(AI)に取り込み、形や⾊を置き換え、新たに「⽣成した画像」だからです。カメラやスキャナーだけではなく、⼈⼯知能などのアルゴリズムによって「画像」を⾃動⽣成することが可能な現代、「写真を撮る/撮られる」という⾏為の関係性、「虚構/真実」の境界もあいまいになっています。それでも、不特定多数の思い出が融合された本作に、懐かしさや共感を覚える⼈も少なくないでしょう。そこには普遍的に共有できる感覚―家族、記憶、帰属意識による強い感情的な結びつき―が投影されているのかもしれません。

ヴァルヴァラ・ウリク《Sunshine, How Are You? 》/ 会場:⽥町センタービル 屋外部
©中川達彦

1997年、ウクライナに⽣まれたヴァルヴァラ‧ウリク。幼い頃は毎年クリミア半島に住む親戚のもとへ家族旅⾏をして、ソビエト時代の名残が残る遊具や⾷卓のある⾵景のなかで育ちました。しかし、近年のさまざまな社会情勢の変化があった今、彼⼥にとって⼤切な場所や⼈々とつながる⼿段は、家族アルバムやインターネットの情報を⾒ること、そしてあいまいな記憶を頼りにした写真を撮ることだけになってしまったといいます。かけがえのない⼦ども時代を「実際の記憶」と「想像の記憶」を織り混ぜて再現した本作は、鮮やかな⾊彩の中にウクライナの暮らしや⽂化とその背景に潜む現実を読み解くヒントを⽰しています。

イーゴル・シラー《Familiar Characters 》会場:WPÜ SHINJUKU
©中川達彦

⽣まれ育った⼟地から遠く離れて暮らしていたイーゴル‧シラーが、故郷セルビアで3年かけて撮影された本作。プロジェクトは「⼤⼈になった今だからこそ、⽣まれ育った環境や⽂化を客観的に⾒つめ、⼦ども時代の感覚を理解したい」と考えたことがきっかけで始まりました。⼦ども時代を過ごした町の懐かしい場所で「幼い頃の空想上の登場⼈物たち」に⾃ら扮し、架空の王国の⾵景を再現しながら写真を撮影していったシラー。彼は、制作の過程で「過去と現在」「記憶と事実」の境界があいまいになり、世界全体が新しい記憶や空想を⽣み出す遊び場のように感じたと語ります。かつて誰にとっても「居場所」であった⼦ども時代の美しさと儚さ。それが時を経ても⼼の拠りどころとして、いつでもつながることができることをを表した作品です。

 

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡本公樹)

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