能登半島地震で被災し、生産休止中の日吉酒造店(石川県輪島市)の味を再現した日本酒を広島県竹原市の藤井酒造が造り、6月に発売する。藤井酒造は2018年7月の西日本豪雨などで甚大な被害を受けたが、各地からの支援のおかげで酒造りを再開できた。「今度は私たちが助ける番」と、能登の酒造文化の復興を下支えする。(広島総局 中安瞳)
醸造中の「おれの酒」を確認し、笑顔で語り合う藤井さん(右)と日吉さん(広島県竹原市で)
藤井酒造では、日吉酒造店の純米酒「おれの酒」の出荷準備が進む。水以外は、石川県産の酒米「五百万石」など本来の材料を使った。藤井義大社長(40)は「軽やかな口当たりで香りは穏やか。『おれの酒』のニュアンスを出せた」と語る。 酒造りは、石川県内の酒造会社などが企画したプロジェクト「能登の酒を止めるな!」の一環だ。被災した酒造会社の味を再現した酒を、被災地外の酒造会社が造って販売し、売り上げを経営再建に役立てる。 藤井さんには、過去の災害で多くの人に助けてもらった経験がある。 西日本豪雨では酒蔵が床上70~80センチまで浸水。約7000本の酒と、機械の大半が駄目になった。酒造りの仲間が駆けつけ、泥のかき出しや片付けを手伝ってくれた。東日本大震災の被災地の酒蔵からも、作業に必要なタオルや軍手、飲料品などが届いた。その年の新酒の仕込みまでに設備を復旧させることができた。 21年7月にも豪雨に襲われ、約1万本が廃棄処分に。この時も多くの支援が寄せられ、酒造を再開できた。藤井さんは「みなさんの温かい支援が心の支えになった」と振り返る。 だからこそ、能登半島の被害が人ごととは思えなかった。石川県酒造組合連合会によると、能登半島北部にある組合加盟の11蔵は全て全半壊などの被害を受けた。「何かできることはないか」と考えていた時、プロジェクトを知った。
「酒造りは地域に根付いた文化。能登の酒造会社を助けることがこれまでに受けた支援の恩返しになる」と参加し、日吉酒造店の「おれの酒」を造ることになった。3月に仕込みを開始。4月には日吉酒造店の5代目
杜氏(とうじ)
・日吉智さん(49)を招き、一緒に作業した。5月に入って酒をしぼった。
オリジナルの酒造りにも取り組む。米は広島県産の「八反錦」、こうじや酵母は日吉酒造店の配合。6月に「おれの酒」とオリジナル酒を計6000本発売する。販売する店、日程などは未定。
藤井酒造では「おれの酒」の出荷準備が進んでいる(24日、広島県竹原市で) 日吉さんは地震で主な酒造設備を失った。大火に見舞われた輪島の朝市通りに面していたが、焼損は免れた。「続けろってことなのかな」。直後にプロジェクトへの参加を打診され「再開への第一歩だ」と応じた。 プロジェクトでは藤井酒造と日吉酒造店のペアを含め、5ペアができた。クラウドファンディング(CF)で寄付を募ると約4100万円が集まった。 日吉さんは「感謝しかない。笑顔でわいわい飲んでほしい。それが再建の力になる」と前を向く。藤井さんは「日吉さんが輪島で酒造りを再開した時、懐かしく思い出してもらえれば」と願う。
![[ニュース] 輪島の酒「仲間」が再現、「今度は私たちが助ける番」…西日本豪雨で被災した広島の酒蔵 [ニュース] 輪島の酒「仲間」が再現、「今度は私たちが助ける番」…西日本豪雨で被災した広島の酒蔵](https://www.walknews.com/wp-content/uploads/2024/05/1716876314_20240528-OYO1I50012-1-1024x576.jpg)