低速で自動走行する電動車の開発が進んできた。ゆったりとしたスピードで市街地を走り、短距離移動の利便性を増したり、コミュニケーションを活発化させたりする効果が期待される。環境負荷の少ない新たなモビリティー(移動手段)として、関心が高まりつつある。(寺田航)

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時速5キロ 白昼の大通りでそろりと動く「木のオブジェ」。近くを人が通ると自然に減速し、人が乗れば軽やかに走り出す――。ゲキダンイイノが開発した低速モビリティーに試乗する買い物客ら(22日、神戸市中央区で)ゲキダンイイノが開発した低速モビリティーに試乗する買い物客ら(22日、神戸市中央区で) 関西電力の子会社「ゲキダンイイノ」(大阪市)が開発した3人乗りの電動モビリティー「iino type―S712」だ。内部センサーが人の動作を感知して動き、歩くスピードに近い時速5キロ以下で走行する。昨年4月施行の改正道路交通法では、歩道などを走行できる新たな移動体「遠隔操作型小型車」として区分され、実用化に向けて、各地で実証実験を重ねている。

 22日は、神戸三宮センター街(神戸市中央区)で走行実験を実施し、雑踏の中でも円滑、安全に走行できるかなどを検証。買い物中に体験した兵庫県尼崎市の女性(24)は「スピードが出ると少し怖かったが乗り心地は快適」と笑顔だった。 ゲキダンイイノ代表の嶋田悠介氏は「音声ガイド機能を付けるなど、観光利用も考えたい」と意気込む。短距離移動 低速モビリティーは、できるだけ多く、速く人やモノを運ぶことを目指す従来の移動手段とは違い、駅やスーパーから自宅までといった「ラストワンマイル」での活躍が期待される。 国土交通省は、時速20キロ未満で公道走行が可能な電動車を活用した移動サービスを「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」と定義。高齢者の移動手段の確保や観光客の周遊に役立ち、環境負荷も少ないとして、普及を図っている。 低速な分、操作しやすく、安全性の観点からも、技術革新の進む自動運転との親和性が高く、国内ではヤマハ発動機が開発をリードする。担当者は「自動運転のレベル4(ドライバーが運転席から離れて遠隔操作で運行)を実現しており、さらなる高精度化に向けた技術改良を進めたい」と話す。地域密着 大阪府河内長野市では一部地域でグリスロを活用し、「クルクル」と名付けた移動サービスを運営している。週末には、運転手役を同乗させ、市街地での自動走行実験も行う。利用の中心は買い物客や高齢者らで、同市政策企画課は「バスやタクシーより住民同士のコミュニケーションが生まれやすい。クルクルがあるので運転免許を返納すると言う人もいる」と話す。 自治体の中には他にも、買い物や通院などで使う「日常の足」としてグリスロを採用するケースもあり、活躍の場は徐々に広がる。調査会社の富士経済(東京)によると、2030年時点で、国内の保有台数は670台まで増加する見通しだ。

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