学童保育や習い事の送迎、自宅での預かりなど地域住民が子育てを助け合う「ファミリー・サポート・センター(ファミサポ)事業」がスタートして30年が過ぎた。この間、核家族化や共働きの増加などで援助を求める「依頼会員」が大幅に増え、支え手となる「提供会員」の登録者数との差が拡大している。将来にわたって地域のつながりを深められる子育て支援策として、確保に向けた取り組みが進められている。(島香奈恵)
「いってらっしゃい」。女性が預かった幼子と一緒に手を振り、ママを見送る――。兵庫県宝塚市が同市ファミリーサポートセンターの協力で制作し、2月にユーチューブで公開したPR動画のワンシーンだ。
出演した提供会員の
野碕(のざき)
典子さん(48)は自身の双子の子育てでファミサポに助けられた経験があるといい、「自分も役に立ちたい」と3年前に会員登録。「子どもから逆にパワーをもらっている」とほほ笑む。動画で幼子を預けた畑愛さん(36)も実際に野碕さんの援助を受けている依頼会員だ。第3子を妊娠中で、「時々預かってもらうことで気持ちにゆとりができ、3人目を産もうと思えた」と感謝する。
座談会で悩みや工夫を共有する提供会員ら(兵庫県宝塚市で) 同センターの依頼会員は4月末現在で1333人。提供会員は638人とその半数以下にとどまる。どちらも兼ねた両方会員も別に135人いるが、センターでは動画や市の広報で新規会員を募るほか、悩みや工夫を共有する座談会を定期的に開くなどして定着を図っている。所長の藤森知佳さんは「潜在的な担い手はまだまだいると思うので、さらに周知したい」と話す。幅広いニーズ
ファミサポは1994年度に国の事業として発足した。2005年度から市区町村を実施主体とする交付金事業となり、国、都道府県と3者で運営費を分担。こども家庭庁によると、23年度で全国996自治体で実施されている。 当初は仕事との両立支援が主な目的だったが、核家族が増え、親の孤立化が深刻になる中、リフレッシュを含む子育て支援策として幅広いニーズに対応するようになった。 そのため、運営を支援する女性労働協会(東京)の全国調査では、20年度の依頼会員は約54万人と10年でほぼ倍増し、提供会員約13万人との差が目立っている。担い手の中心だった中高年女性の就業率の上昇や高齢化などが要因とみられる。 子育て支援に関して、国の交付金で実施した21年11月の調査でも、センターの約9割が「提供会員が不足している」と回答した。報告書では確保策として市や町内会の広報やSNS、子育てイベントでの周知などの事例を紹介。東京都新宿区のセンターは、活動休止中の会員に電話で再開を呼びかけたり、ボランティア希望者が訪れる社会福祉協議会の窓口に職員が出向いてPRしたりしていた。地域の輪 一方で、依頼の中には、急な長時間の預かりなど無理な申し入れも見受けられるという。同協会第一事業部長の小林恭子さんは「地域で支え合う相互援助というファミサポの意義を改めて伝え、理解を求める必要もある」と話す。 また国は要綱で提供会員向けに事故防止に関する講習を行うよう定め、援助側に一定の知識が身につくようサポートしている。ただ障害児や多胎児の見守りなど配慮が必要なケースの場合、支え手が見つからないことがある。 大阪公立大准教授(地域福祉学)の東根ちよさんは「地域の子育て支援の場は以前よりも広がっている。全てを提供会員が引き受けるのではなく、困難なケースは専門機関と連携して適切な支援先につなぐなど、行政が安心・安全を保証し、会員が活動しやすい環境づくりに力を入れてほしい」と指摘している。
◆ファミリー・サポート・センタ事業ー=
子育ての援助を受けたい人(依頼会員)と、地域で手助けしたい人(提供会員)をアドバイザーが取り持つ。市区町村が実施し、社会福祉協議会やNPO法人などに運営を委託できる。提供会員への報酬の目安は平日の日中で、1時間あたり500円台~700円台程度。
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