車いすに乗り、スティックでストーンを押し出す戸田選手(いずれも4月27日、北見市で)=清水暢和撮影車いすに乗り、スティックでストーンを押し出す戸田選手(いずれも4月27日、北見市で)=清水暢和撮影スイープができない代わりに、ストーンの行方を目で追う選手たちスイープができない代わりに、ストーンの行方を目で追う選手たち 冬季パラリンピックの正式競技の一つ、車いすカーリング。氷をブラシでこする「スイープ」がない以外は五輪競技とほぼ同じで、一投の正確さと戦略性を競う。障害を抱えながら楽しめる「氷上のチェス」の魅力に迫る。(清水暢和)

 「テイクか、ドローか」「ストーン(石)のどこに当てればいい?」。4月下旬、北見市の「アルゴグラフィックス北見カーリングホール」で行われた車いすカーリングの日本選手権は、選手の指示や確認の声が飛び交い、熱気に満ちていた。 全国から6チームが参加し、道内からは3組。その一つ、「チーム札幌」の戸田雄也選手(42)は札幌市在住の道職員で、競技歴は10年以上に及ぶ。競技の魅力を「ショットが決まった時の気持ちよさ」と語る。 専用のスティックを巧みに操り石を押し出し、石と石との間をすり抜け、狙った位置にぴたり。スイープがなく、投じた後は石の軌道を修正できないため、一投の重要性は通常のカーリングより大きい。 戸田選手は「完全に『投げた時勝負』なのがいい。ゴルフと同じ。ゴルフも、打った後に補助できたら、あんなに面白くないですよね」と笑う。 2008年に腰の違和感を感じ、その後に脊髄の損傷で車いす生活になった戸田選手。夏季パラの競技、パラパワーリフティングの選手でもある。 12年に、カーリングの五輪メダリストで北見市常呂町出身の本橋麻里さんの講演を聞いた縁で競技を始め、現在も、夏冬競技の「二刀流」に臨んでいる。 道庁ではパラ競技の普及などにも関わっており、車いすカーリングについて「子どもから大人まで、幅広い年齢層で楽しめる。ぜひ皆さんに知ってほしい」と熱く語る。 日本車いすカーリング協会によると、国内の競技人口は約40人。道内では札幌、帯広、北見、妹背牛の4チームで計十数人とまだまだこれからの競技で、普及が大きな課題だ。協会の竹村鮎子会長は「普及にはまず競技力の向上が一番。パラに出場すること」と指摘する。 日本は、10年バンクーバー大会を最後にパラリンピック出場が途絶えており、出場を果たせば、最近の冬季五輪でカーリングが盛り上がっているように、車いすカーリングの認知度も大きく上がると考えている。 ただ、人気を高めるための強化には、競技人口を増やして実戦を増やすことが求められるというジレンマもある。難しい点だが、工夫しているチームもある。 今回の日本選手権を制した地元・北見市のクラブ「KiT CURLING CLUB」でスキップの坂田谷隆選手(55)は「健常者と一緒にプレーできるところ」と競技の魅力を話す。 クラブでは、地元の健常者チームなどと定期的に試合を行い、競技人口の少なさを補っており「ハンデなしで健常者と対等に楽しめる数少ないパラ競技」と話す。競技の輪を広げるための、一つの答えかもしれない。 道具とリンク、そして仲間がいれば年齢、性別関係なく比較的容易にプレーできる車いすカーリング。戸田選手は最近、パラパワーリフティングの先輩に競技を勧めたそうだ。 「車いすのラグビーやバスケットボールはなかなかできないけれど、カーリングはパラアスリートのセカンドキャリアにもぴったり」と語り、競技人口の広がりに期待を寄せた。
 
車いすカーリング
 スイープがない以外、健常者の競技とルールはほぼ同じ。よりハウスの中心に近い所にストーン(石)を置いたチームに得点が入り、計8エンドで争う。石の大きさ、リンクの広さも変わらない。主な投げ方は、石のハンドルに専用のスティックの先を引っ掛けて押し出す。指示された位置に石を止める「ドロー」、石に石を当ててはじき出す「テイク」のショットがある。基本となる4人制は男女混合チームで対戦する。

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