通りを行き交う自転車(3日午後、大阪市大正区で)通りを行き交う自転車(3日午後、大阪市大正区で) 昨年4月に努力義務化された自転車のヘルメット着用が浸透していない。普及には地域でばらつきがあり、東京や大阪では1割を下回っている。事故での致命傷を防ぐ効果があり、専門家からは対策の強化を求める声も上がっている。

ほぼ見かけず 大阪市大正区のJR大正駅前。3日夕、駅前通りや商店街を行き交う自転車のうち、ヘルメットを着用している人はほとんどいなかった。 警察庁によると、自転車乗用中の事故ではヘルメットを着けていない人の致死率が着用者の2倍近くに上る。被害軽減には頭部の保護が重要で、昨年4月施行の改正道路交通法でヘルメット着用が努力義務になった。罰則や強制力はない。 大阪府警が今年1~3月に府内69か所で通勤・通学時間帯の自転車計約3万台を調べたところ、平均着用率は5・8%。地域差が大きく、最も高い泉南市は26・5%だが、大正区は1・6%で最も低かった。 買い物帰りの同区の男性(66)は「努力義務になったことは知っているが周囲で着けている人はいない。ヘルメットも安くはないし、60年近く自転車に乗っており、今さら着けようとは思わない」と話していた。 警視庁が昨年12月~今年1月に行った調査によると、東京都内の着用率は大阪よりやや高い9・1%だが、それでも1割未満だ。 警察庁の昨年7月の調査では、最も高い愛媛県が59・9%、2番目の大分県が46・3%だった一方、最も低い新潟県や続く青森県は2%台と都道府県ごとでも差がみられた。全国平均は13・5%だった。デザインも一因 なぜ浸透しないのか。東京都が昨秋、非着用の人にアンケート(複数回答可)したところ、「着用が面倒」(47・9%)が最も多く、「置き場所がなく荷物となる」(38・6%)、「髪形が崩れる」(31・8%)が続いた。デザインの改善を求める声も多かった。 警察庁によると、自転車が絡む事故は昨年、全国で7万2339件に上り、2020年の6万7673件から3年連続で増えた。警察は全国で交通安全のキャンペーンを行い、ヘルメット着用を訴えている。着用率トップの愛媛では配布 自治体も対策を進めている。今年度、新潟県は18歳以下のヘルメット購入に助成金を出す市町村への一部補助を開始。香川県は高校生を対象に上限5000円の購入補助を始めた。大阪府内でも今年度、岬町や大東市といった一部自治体が購入補助を実施している。 着用率トップの愛媛県は、自転車の高校生の死亡事故が相次いだことを受け、2015年に県立高校の生徒に通学時の着用を義務付け、生徒約2万9000人にスポーツタイプのヘルメットを無償配布した。県教育委員会の担当者は「抵抗感をなくすことで着用率の向上につながった」と話す。 メーカーも工夫を進める。ヘルメット大手「オージーケーカブト」(大阪)では、カジュアルな帽子型など約40種類を取りそろえ、持ち運び可能な折りたたみ型や髪形が崩れにくいヘルメットの開発も検討している。 桜美林大の戸崎肇教授(交通政策)は「着用には煩わしさがあり、努力義務には限界がある。通学時の着用を必須にするなど、国や自治体は新たな対策を検討すべきだ」と指摘する。

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