特殊詐欺などの被害が増える中、SNS上で法人名義の銀行口座の売買を求める投稿が相次いでいる。法人口座は多額の送金が可能で、数百万円の高値が付くケースもある。不正に売買された口座は詐欺の被害金の送金先のほか、資金洗浄(マネーロンダリング)に悪用される恐れがあり、警察当局や金融業界が警戒を強めている。(中西千尋、浜田支局 佐藤祐理)1口座400万円
銀行口座の譲渡は有償・無償を問わず犯罪収益移転防止法で禁じられており、違反すると1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科される。警察庁によると、昨年に摘発された同法違反事件は3424件と、2019年の1・3倍に増加した。
SNS上では口座の買い取りなどを持ちかける投稿が絶えない。情報セキュリティー会社「カウリス」(東京)がX(旧ツイッター)への投稿を分析したところ、今年1~3月、「口座買取」「即日振込み」などのハッシュタグを付けた投稿が約37万件確認された。対象はこれまで個人名義の口座が多かったが、昨年夏以降、法人口座が目立つようになったという。 価格は個人口座が5000円~21万円だったのに対し、法人口座は30万~400万円だった。法人口座は個人口座に比べて送金限度額が高く、通常の利用でも大口の取引が頻繁に行われ、不審な動きを見抜きにくい。法人口座は開設時の審査基準が厳しく、出回る数が少ないことも影響しているとみられるという。 同社の島津敦好社長は「資金繰りに窮した会社や小遣い稼ぎ感覚の大学生らから犯罪グループに口座が流れ、不正に得た金の受け皿や資金洗浄に使われている。『口座売買は違法』との周知を徹底しないと、こうした流れを止められない」と語る。凍結1.7倍
口座が特殊詐欺などの犯罪に使われたことが発覚した場合、警察は08年施行の振り込め詐欺救済法に基づき、金融機関に取引停止を要請できる。 全国銀行協会によると、特殊詐欺などに悪用された疑いがあるとして、全国の金融機関が22年度に利用停止や強制解約した口座は過去最多の7万5621件で、18年度の1・7倍に増加。23年度は9月時点で4万8674件に上り、22年度を上回るペースだ。
島根県内の50歳代男性は昨年8~10月、SNSで知り合った投資グループのメンバーからFX(外国為替証拠金)取引の誘いを受け、投資金などを指定された複数の法人口座などに振り込み、計817万円をだまし取られた。 県警によると、男性は昨年8~9月に5回、指定された法人口座に計413万円を投資名目で振り込んだ。利益が出て自身の口座に移せたのは一度きりで、メンバーに問い合わせると違約金や助言料を求められ、同10月に2回、計404万円を別の法人口座などに振り込んだ。その後は連絡がつかなくなったという。取引監視強化 金融業界では口座の悪用防止に向けた対策が進む。 住信SBIネット銀行は4月、法人口座の取引の監視を強化。口座に不正売買された疑いが発覚すれば、取引を制限するなどしている。個人口座についても、昨年11月からアプリで取引する際に顔認証を行い、口座開設時に登録した顔と異なる場合は取引の制限を可能にした。その結果、不正利用が大幅に減少したという。 詐欺などの犯罪で奪われた金は銀行口座を通じて暗号資産交換業者に送られ、資金洗浄されるケースが多い。このため、警察庁と金融庁は2月、交換業者への不正送金対策を強化。全国銀行協会などの業界団体に対し、口座名義人と異なる人物から交換業者への送金依頼があった場合、拒否するよう求めている。
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