鳥取県の有識者会議「先端技術と民主主義のあり方を考える研究会」が、26日に提出した報告書の要旨は以下の通り。

自治体の生成AI活用、「人間主導」など10原則まとめる…鳥取県の有識者会議が全国で初めて

◆第1 はじめに わが国は、地方を中心に人口減少、少子高齢化傾向にあり、働き世代の人口減少による労働力不足により企業活動が停滞し、あらゆる分野で後継者不足が深刻化している。 地方自治体においても、職員数が減少傾向にある。限られた職員数で地域課題や多様な住民ニーズにいかに対応するか、大規模自然災害や未知のウイルスによるパンデミックなどにいかに迅速かつ適切に対応するか、住民の安心安全をどう確保するかが喫緊の課題となっている。 他方、近年のAI、(あらゆるモノをインターネットにつなぐ)IoT、ドローン、ロボティックスなど先端技術の進展は目覚ましい。 とりわけ2023年に入り世界的に注目されるようになったのは、生成AI技術である。利用者からの質問や依頼(プロンプト)に対し、学習データを基にわかりやすく多彩な表現で、自動で文章や画像などを生成できる画期的なものであり、世界に衝撃を与えた。 AIをはじめとする先端技術は、これまでにない価値を創造する優れたツールである。しかし、地域のことは地域で決めることが民主主義や地方自治の原点であることを忘れてはならない。 デジタル技術の活用が一層進もうとしている今こそ、あらためて地方自治体としてデジタル技術を活用する上で踏み外してはならない根幹を再確認することとした。生成AIに関する研究会の報告書を鳥取県の平井知事(中央左)に手渡す座長の山本龍彦・慶応大教授(同右)(26日、東京都港区で)=西孝高撮影生成AIに関する研究会の報告書を鳥取県の平井知事(中央左)に手渡す座長の山本龍彦・慶応大教授(同右)(26日、東京都港区で)=西孝高撮影

◆第2 提言 自治体デジタル倫理原則 ~人間主導のデジタル社会へ~〈1〉住民自治の原則 地域のことは、住民の意思に基づいて検討や議論を重ね、決定することが原則である。生成AIをはじめとする先端技術の活用にあたっては、このような民主主義や地方自治の要諦が揺らがぬよう、適正な活用に徹する。〈2〉人権保障の原則 生成AIをはじめとする先端技術の活用にあたっては、利用目的をできる限り特定し、必要な範囲において個人情報を収集するとともに、当該利用目的に限定して利用するなど、個人情報の保護を含め住民の人権を守り、人権保障を具体化していく視点に立って厳正に行う。 SNS等においても、住民の人権を守り、人権保障を具体化していく視点に立って、対策を講じる。〈3〉インクルーシブの原則 生成AIをはじめとする先端技術は、ジェンダーや性的マイノリティに配慮するなど多様な人々が互いに尊重される社会を実現するために活用されなければならない。偏見等を生まないよう運用するとともに、住民に寄り添い、誰一人取り残されない行政サービスを提供するように配慮する。〈4〉パートナーシップの原則 生成AIをはじめとする先端技術の活用にあたっては、住民を含めた多様なステークホルダーと緊密に協働・連携し、互いに補完し合い高め合うことにより、地域社会の効用最大化を図る。〈5〉課題解決志向の原則 デジタル技術の導入や活用を目的化せず、住民等の一連の行動に着目して真の課題の把握やニーズの抽出を行うことにより、住民等が抱える課題を解決し、ウェルビーイング(心身が健康で幸福な状態)に繋がる有効な方策を総合的にデザインする。〈6〉人間主導の原則 地方自治体の意思決定を生成AIをはじめとする技術が出力した結果のみに依拠することは排し、出力結果を人間が的確にチェックすることが担保されるよう人間が責任をもって精査し、人間の判断で決定する仕組みとする。〈7〉リテラシーの原則 職員がデジタル技術の特性を理解し、適切に活用するためのリテラシーとスキルの向上を図る。住民が偽・誤情報に惑わされないよう、住民のフィルターバブル等への理解とネット情報についての批判的思考能力を育成するとともに、住民や地域を守るための情報発信に努める。〈8〉透明性の原則 住民が生成AIをはじめとする先端技術の活用について適切に評価できるよう、活用の状況を明らかにする。特に、住民等への回答内容にAI等の出力結果が結びついている場合は、その旨を明示するなど説明責任を果たす。〈9〉ガバナンスの原則 生成AIをはじめとする先端技術の適切な活用に向け、デジタル施策の実施状況や結果・評価を把握して効果を検証するとともに、AIのロジックや出力傾向等を把握した上で適正に管理する仕組みを構築して、適切に運用し改善していく。〈10〉機敏性の原則 生成AIをはじめとする先端技術は急速に発展していくものと想定される。こうした変化に伴いルール等を見直す機会を整えるとともに、大胆かつ積極的に先端技術を取り入れていく視点を持ち、「完全な成功」よりも「試行と改良・再挑戦」を重視し、不断のフィードバックにより、アジャイルで機動的な先端技術の活用推進を図る。(以下、略)

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