【ロンドン=蒔田一彦】英議会は22日、不法入国した移民をアフリカのルワンダに移送することを可能にする法案を可決した。ルワンダへの移送計画は、不法移民対策を最重要課題の一つに挙げる保守党政権の看板政策だ。難民の人権保護の観点から懸念する声が上がる中、英政府は7月にも移送を開始する方針だ。 スナク首相は23日、法案可決を受けた声明で「不法にこの国に来たら、とどまることはできないと明確にするものだ」と意義を強調した。移送計画は2022年4月に当時のジョンソン政権が打ち出した。資金援助と引き換えにルワンダが移民を受け入れる仕組みで、英国への違法な渡航を思いとどまらせる狙いがある。

 小型ボートで英仏海峡を渡る不法移民は後を絶たず、18年の約300人から、22年には4万5000人を超え、23年も約3万人に上った。取り締まりや収容に必要な予算は膨らみ、ボートの沈没事故も頻発している。 小型ボートによる不法移民の半減を公約に掲げるスナク氏は22日の記者会見で、移送の第1弾が「10~12週間後」になるとの見通しを公表。「夏以降も毎月複数の便を飛ばしてルワンダへの移送を続ける」と述べた。 ルワンダへの移送計画は曲折が続いてきた。2国間で覚書を交わして移送を試みたが、22年6月に欧州人権裁判所が差し止める仮処分を出し、出発直前で中止となった。昨年11月には英最高裁が計画は違法との判決を出した。移送後、出身国に強制送還される恐れがあるためで、難民申請者の保護を定めた国際条約などに反すると指摘した。 これを受け、英政府は移民を第三国に送還しないことを保証する条約をルワンダと締結し、今回の法案でもルワンダが移民にとって「安全な国」であると位置付けた。 それでも、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官とフォルカー・テュルク国連人権高等弁務官は23日、移送計画の再考を求める声明を発表。グランディ氏は「難民保護の責任を転嫁するもので、憂慮すべき先例となる」と訴えた。 移送計画を巡っては今後も司法での争いが続くとみられる。スナク氏は22日、「いかなる外国の裁判所も(移送する)便の出発を止めることはできない」と述べ、欧州人権裁判所が再び仮処分を出したとしても従わない考えを示した。保守党内では欧州人権条約からの離脱論も高まっている。

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