書店員の投票で選ばれる本屋大賞には近年、「翻訳小説部門」が設けられ、読者の間で定着してきている。今年の1位は、韓国のファン・ボルムさん(43)の初の邦訳作品『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(牧野美加訳、集英社)が輝いた。
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』で翻訳小説部門1位に選ばれ、喜びを語るファン・ボルムさん(10日、東京都港区で)=大金史典撮影 「私にとって、とても大きな応援になりました。これからもずっと、作家として生きていきます」。10日の贈賞式で語ると、会場は大きな拍手に包まれた。
受賞作は、ソウルの静かな住宅街にある「ヒュナム洞書店」を舞台に、店主や客たちの交流を描いた長編だ。就職活動に失敗した男性や、無気力な高校生、働かない夫とケンカが絶えない女性。競争社会の中で傷ついた人たちが、小さな書店でコーヒー片手に本を読み、語り合う姿が温かい。韓国では2021年に電子版がまず出版された後、翌年に紙の本が発売され、累計25万部のベストセラーとなった。 意識したのは、登場人物たちに「対話」をさせること。「この数年、コロナ禍で人と会えなくなった。平和な空間で対話をして、人の縁が紡がれることを恋しがる人に読まれたのかもしれない」と話す。 ソウル出身。大学ではコンピューター工学を専攻し、家電大手のLG電子でソフトウェア開発者として働いた。「ある時は会社人間、ある時は燃え尽き症候群になっていた」。転職を繰り返し、30代になってエッセイストになろうと決めた。 ただ、デビュー作は全く話題にならず、「エッセーから逃げるように」書き始めたのが受賞作だった。 「稼ぎもなく、社会的には豊かではなかったかもしれない。でも、ある時、『ここが私の居場所なんだ』と思えたんです。書くことは苦しい時もあるけれど、『書く人生』は、自分にとってとても満足できることなんです」 来春には、エッセーの邦訳刊行も予定されている。(文化部 小杉千尋)
![[本のニュース・話題] 「ある時は会社人間、ある時は燃え尽き症候群でした」…本屋大賞翻訳小説部門1位の韓国作家ファン・ボルムさん [本のニュース・話題] 「ある時は会社人間、ある時は燃え尽き症候群でした」…本屋大賞翻訳小説部門1位の韓国作家ファン・ボルムさん](https://www.walknews.com/wp-content/uploads/2024/04/1713306665_20240416-OYT8I50086-1-1024x576.jpg)