株式会社サンケイリビング新聞社は2026年10月、同社のWebサイトに第三者による不正アクセスが発生し、会員やアンケート利用者の個人情報が外部に漏えいした可能性があると公表しました。10月16日に不正アクセスを確認し、一部のWebサービスを停止しています。
影響は「リビングWeb」「シティリビングWeb」「まちっと」などの会員サービスにとどまりません。広島県の広報誌プレゼント応募、三重県の移住セミナー、島根県の歴史文化・関係人口セミナー、宮城県登米市の結婚支援事業にも、個人情報の漏えいのおそれがあることが各自治体の発表で明らかになりました。サンケイリビング新聞社が保管していた個人情報全体の対象件数は調査中です。
サンケイリビング新聞社への不正アクセスのサマリー
2026年10月16日、サンケイリビング新聞社が自社運営Webサイトへの第三者による不正アクセスを確認しました。
不正なアクセスは遮断し、外部専門機関と原因・影響範囲の調査を進めています。
「リビングWeb」「シティリビングWeb」「まちっと」などの会員情報、退会済みの利用者情報、アンケートシステムの利用者情報が対象となり得ます。
漏えいした可能性があるのは氏名や連絡先などの個人情報で、登録内容は利用者によって異なります。全体の対象件数は調査中です。
同社はクレジットカード情報を預かっていないと説明しています。
一部サービスで、サイト閲覧、会員登録、ログイン、応募、アンケート回答などを停止しています。
広島県では「ひろしま県民だより」のプレゼント応募情報1,470件が影響対象となり得ます。
三重県では移住セミナー申込者延べ156人、アンケート回答者延べ75人が対象です。
島根県では歴史・文化オンラインセミナー335件、美保関の関係人口セミナー136名が対象です。
宮城県登米市では結婚支援事業の申込者39人が対象です。
会社は個人情報保護委員会に速報として報告しました。10月21日時点で、不正利用による二次被害は確認されていないとしています。
区分
対象となるサービス・事業
公表された対象規模
公表時点の状態
サンケイリビング新聞社
リビングWeb、シティリビングWeb、まちっと、アンケートシステムなど
調査中
個人情報の漏えいの可能性
広島県
「ひろしま県民だより」夏号・秋号のプレゼント応募
1,470件(747件+723件)
漏えいの可能性
三重県
移住セミナーの申込者/アンケート回答者
延べ156人/延べ75人
漏えいの可能性
島根県
歴史・文化オンラインセミナー
335件
漏えいの可能性
島根県
美保関の関係人口セミナー
136名(同伴者50名を含む)
漏えいの可能性
宮城県登米市
2026年度結婚支援事業の申込者
39人
漏えいの可能性
表中の数値は各事業の申込・回答などの記録や対象者の規模です。実際の漏えい確定件数ではなく、同じ利用者が複数事業に登録している可能性もあるため、サンケイリビング新聞社全体の被害人数として合算できません。
10月16日に不正アクセスを確認 会員・アンケート情報の流出を調査
サンケイリビング新聞社の公式第1報によると、10月16日に同社運営のWebサイトへの不正アクセスを確認しました。同社は直ちに不正アクセスを遮断し、調査を開始。その後、サーバーに保管されていた個人情報が外部へ漏えいした可能性が判明したと説明しています。
対象には、Web会員サービスに現在登録している人だけでなく、退会済みの人も含まれます。同社のアンケートシステムを通じて応募・回答した人も調査対象です。個別の利用者が登録した情報の範囲は異なり、氏名や連絡先などが挙げられています。
安全性を確認するまで、対象となる一部Webサービスでサイト閲覧、会員登録、ログイン、プレゼント応募、アンケートへの回答といった機能を停止しています。10月25日時点で確認した公式第1報には、全面再開の日付や侵入手法、漏えい確定人数は記載されていません。
同社は個人情報保護委員会への速報を行い、外部専門機関による調査を継続しています。公表では、10月21日時点で漏えいのおそれのある情報が悪用された二次被害は確認されていないとしています。
広島県「ひろしま県民だより」プレゼント応募1,470件 フォームを切り替え
広島県は10月23日、広報誌「ひろしま県民だより」のプレゼント申込フォームに入力された約1,470件の個人情報が漏えいした可能性があると公表しました。同事業の企画・編集は広島リビング新聞社へ委託されていますが、応募フォームにはその親会社であるサンケイリビング新聞社のサーバーが利用されていました。
対象は次の2回の応募です。
応募媒体
応募期間
対象件数
対象となる情報
ひろしま県民だより秋号 vol.386
10月1~22日
723件
氏名、年齢、住所、電話番号、メールアドレス、アンケート回答内容
ひろしま県民だより夏号 vol.385
7月1~31日
747件
氏名、年齢、住所、電話番号、アンケート回答内容
広島県は10月22日に従来の応募フォームを停止し、10月23日から応募締切の31日まで県の電子申請システムを利用したフォームに切り替えました。広島リビング新聞社に対して原因究明、脆弱性の修正、個人情報の管理体制強化と改善報告を求めています。
セキュリティ対策Lab お役立ち資料
セキュリティインシデント対応 机上演習シナリオ|不正アクセス編・ランサムウェア感染編
不正アクセスやランサムウェア感染を想定し、初動対応・社内連携・判断を確認するための机上演習シナリオをまとめた資料です。
机上演習シナリオを見る
三重県の移住セミナー 申込延べ156人、アンケート延べ75人
三重県は10月22日、移住セミナー運営の委託先であるサンケイリビング新聞社から、参加申込者の情報が漏えいした可能性について報告を受けたと公表しました。移住セミナーは同社のサービス停止に伴い、新規申込を停止しています。
対象となるのは、移住セミナーに申し込んだ延べ156人分の氏名・メールアドレスと、任意入力の住所・電話番号です。別に参加者アンケートの情報が延べ75人分あります。申し込みとアンケートの双方に同一人物が含まれる可能性があり、合計231人が漏えいしたと示すことはできません。
県は委託先に被害状況の確認を求めるとともに、対象者に連絡、謝罪、注意喚起するよう指示しています。
島根県の2事業にも波及 歴史文化335件、美保関セミナー136名
島根県は10月23日、サンケイリビング新聞社に委託していた2つの事業について、それぞれ影響の可能性を発表しました。
一つは10月3日開催の「歴史・文化オンラインセミナー」で、応募者335件の氏名、メールアドレス、住所、電話番号が対象です。もう一つは10月31日開催予定の関係人口セミナー「北前船で栄えた島根・松江の港町“美保関”の歴史と今」で、申込者と同伴者を合わせて136名が対象となります。136名には同伴者50名が含まれます。
美保関のセミナーでは、氏名、フリガナ、メールアドレス、年齢、居住する都道府県、性別、電話番号のほか、同伴者の氏名・年齢が影響する可能性があります。こちらの住所項目は都道府県であり、住所の詳細まで対象と発表されたものではありません。
同じ県内の委託事業でも、申込フォームの設計によって保有する項目が違います。事業ごとに対象情報を区別して説明する必要があります。
宮城県登米市の結婚支援事業 申込者39人の勤務先情報など
宮城県登米市も10月23日、2026年度結婚支援事業の申込者39人の情報に漏えいの可能性があると発表しました。
登米市の委託先は仙台リビング新聞社で、その親会社のサンケイリビング新聞社が管理するサーバーに個人情報が保管されていました。対象項目は氏名、住所、生年月日、電話番号、勤務先または業種、メールアドレスです。
市は10月22日に委託先から報告を受けました。委託先が運営する「リビング仙台Web」は、安全性を確認するまで一時停止しています。市の発表時点では不正利用は確認されておらず、調査結果が判明した段階で対象者への連絡と市の公式サイトでの案内を行うとしています。
自治体の個人情報が親会社の共通サーバーに集まるリスク
今回の自治体側の発表からは、業務を直接受託した法人と、実際に申込フォームやデータを保管する法人が異なる場合があることが分かります。広島県は広島リビング新聞社に広報誌業務を委託し、登米市は仙台リビング新聞社に結婚支援事業を委託していましたが、両事業のデータは親会社のサーバーへの不正アクセスの影響を受けた可能性があります。一方、三重県と島根県はサンケイリビング新聞社に事業を委託していました。
行政の調達・個人情報管理では、契約書に記載された受託者だけでなく、フォームの提供主体、ホスティング環境、親会社やグループ会社によるデータ管理、申込終了後の情報保存期間を把握する必要があります。今回のように複数の自治体の委託情報が一つの事業者に集まっている場合、単一システムの侵害が異なる地域・行政分野の業務へ同時に影響します。
セキュリティ対策Labでは、2026年に発生した自治体・官公庁へのサイバー攻撃・情報漏えい事例でも、委託先への攻撃によって複数の自治体へ影響が広がった事案をまとめています。
委託元・情報システム部門が確認する事項
委託元の自治体や企業が最初に整理したいのは、受託者の「システム停止」だけではなく、どの事業の、どの申込期間の、どの情報項目が影響し得るのかという点です。特に今回のようなイベント・アンケート系のシステムでは、現在の会員情報だけでなく過去の応募情報や退会済み利用者のデータも確認対象になります。
実務上は、次の事項を優先して確認できます。
委託業務ごとに、個人情報の保存先と管理主体、契約上の受託者・グループ会社の役割を照合する。
応募期間、イベント、キャンペーン単位でデータを特定し、件数と実人数、重複の有無を分けて集計する。
氏名・メールアドレスだけでなく、アンケート回答、勤務先、家族・同伴者情報など、申込目的に応じた項目を洗い出す。
不正アクセスの封じ込め、ログ保全、影響調査、自治体・利用者への報告を、受託者との役割分担に沿って進める。
停止したフォームに代わる申込手段と、個別通知・再開判断の基準を用意する。
情報の流出が未確定な段階で委託元への報告や公表を判断する手順は、机上演習のシナリオ作成方法で紹介している委託先事故の演習例とも関連します。
サンケイリビング新聞社は、新たな事実が判明した場合にあらためて公表する方針です。登録・応募経験のある利用者は、同社や各自治体の公式案内を確認するとともに、不審な電話、メール、郵便物の内容をそのまま信用しないよう注意してください。
出典
この記事をシェアする
メールマガジン
最新のセキュリティ情報やセキュリティ対策に関する情報をお届けします。
Googleアカウントへのログインが必要です
投稿者:三村
セキュリティ製品を手がける上場企業にて、SOC(セキュリティオペレーションセンター)運営およびWebアプリケーション脆弱性診断の営業に8年間従事。その後、システムエンジニアへ転身し、MDMや人事系SaaSの開発に携わる。
8年の実務経験と開発者としての知見を活かし、「セキュリティ対策Lab」ではダークウェブ調査、セキュリティインシデントの分析、および高度なセキュリティ対策解説の執筆・編集を統括しています。
LinkedIn(外部サイト)
