MES個展「レイ/RE-I」(PARCO MUSEUM TOKYO)開幕レポート。「零」「霊」「レイヴ」から読み解く渋谷

 現代美術とクラブカルチャーを横断して活動してきたMESが、渋谷という都市に積み重なる歴史に目を向け、映像インスタレーションやパフォーマンスを通して、その過去と現在をとらえなおす展覧会となっている。

クラブカルチャーから都市への介入へ

 MESは、2015年に東京藝術大学で結成されたアーティストデュオ。光や熱、身体を用いたインスタレーションやパフォーマンスを国内外で展開するいっぽう、レーザーVJとしてクラブシーンでも活動している。音楽やファッションなど、様々なカルチャーとの接点を横断し、2027年2月には、アメリカのロサンゼルス現代美術館での個展も予定されている。

 MESの活動の特徴のひとつが、都市の変化に対して身体やテクノロジーを用いて応答してきたことだ。その代表的な取り組みが、2018年から2021年にかけて展開された「LASER
LIGHTING」シリーズだ。同シリーズは、2018年にクラブ「青山蜂」が風営法改正の影響を受けて摘発され、深夜営業ができなくなったことへの抵抗から始まったという。それまでクラブの内部で使用していたレーザー照明を建物の外へ持ち出し、都市空間に様々なメッセージを照射してきた。

 会場では、《踊り明かそう日の出をみるまで》(2018)や《10 lux》(2019)、《GAME
OVER》(2021)などの記録が紹介されている。都市の建物や解体現場に光の言葉を投げかける行為は、街の変化に対するMESの応答のひとつとなってきた。

誰が「平和の鐘」を鳴らせるのか?

 こうした都市への関心は、今回の展覧会でも引き継がれている。

 《誰が為に鐘は鳴る》(2026)は、渋谷公会堂と渋谷区役所の隣に設置された「平和の鐘」を題材とする映像作品だ。トルコから寄贈されたこの鐘は、地上約3.8メートルの高さに取り付けられており、短いレバーが備えられているものの、地上から手を伸ばして鳴らすことはできない。

 MESは、ふたりが身体を重ね、ひとつの身体となって手を伸ばすことで、この鐘を鳴らせるのではないかという発想から作品を構想した。誰が、誰のために鐘を鳴らすことができるのか。平和を象徴するモニュメントと、それに届かない身体の関係を通して問いを投げかける。

身体の熱から浮かび上がる、渋谷のもうひとつの歴史

 また、本展では「熱」を媒体とする映像作品も紹介されている。《Thermal Imprint : Giving Away My
Heat/熱の記憶:私の熱を差し出す》(2026)もまた、サーモグラフィーカメラを用いた映像作品だ。本作では、変化を続ける渋谷の街を歩き、場所に身体の熱を与える行為を通して、都市と人間がともに存在してきた痕跡を浮かび上がらせようとしている。

 同じくサーモグラフィーカメラを用いた《ワシントンハイツ/Haunt W.Heights》(2026)が取り上げるのは、戦後の占領期における渋谷の歴史だ。

 ワシントンハイツとは、1945年の終戦後、日本陸軍の練兵場跡地を米軍が接収して建設した米軍関係者の住宅地で、現在は代々木公園一帯として整備されている。64年の東京オリンピックで選手村として使用するため、日本に返還された。当時の建物のひとつは現在も保存されており、2026年から「ドトール
パークカフェ
YOYOGI」として営業している。改装によって姿を変えた建物をサーモグラフィーカメラでとらえる本作では、現在の街並みの背後にある占領期の記憶が、熱という不可視の要素を通して呼び起こされる。

 このほか会場では、回転モーターやレーザー、蓄光塗料などを用いた《DISC-O-URS
2》(2026)も展示。蓄光塗料が塗られた回転する球に、レーザーの文字が照射される。

 また、映像作品《CEASEFIRE(停戦)》(2023)や、2024年に行われた35時間に及ぶパフォーマンスをもとにした《ダイ/DA-I(背面)》(2024)なども紹介されている。

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