スペインのバルセロナで開催されたゲームイベント,SAGA Barcelona Game Fest 2026に,Endflameが開発する新作サバイバルホラー「樹海への道」(旧題:Silent Road)が出展されていた。本イベントの「ベストホラー賞」に輝いた期待作を紹介しよう。
本作はもともと「Silent Road」という名で発表されていたが,人気ホラーシリーズとの類似を回避するためか,tinyBuildとの契約発表時に変更された

すでにtinyBuildとのパブリッシング契約が結ばれていることもあって,日本のゲームイベントにも日本語表示対応で出展されている「樹海への道」は,一人称視点で描かれるサイコロジカル・サバイバルホラーゲームだ。
舞台となるのは,自殺が多発する鬱蒼とした樹海の近くにある,日本の地方都市。主人公は夜間シフトに入ったタクシー運転手で,日没後に車へ乗り込んでくる,どこか不穏な乗客たちを目的地へと送り届けることになる。


流暢な日本語で本作を紹介してくれたラウラ・リポル・ガラン(Laura Ripoll Galan)氏によると,チャプターとして全6夜が用意されているが,ストーリーはノンリニア(非直線的)に進行。乗客たちが語る不可解な身の上話や奇妙な依頼,そしてバックミラー越しに見え隠れする異様な気配を通して,地域に隠された過去の悲劇や大きな謎が解き明かされていくという。
「日本に行ったのは一度きり」と話していたガラン氏(右)だが,情報を集めて日本の地方都市の再現に努めてきたという。左はプログラマーのギレム・トラヴィラ・クアドラード(Guillem Travila Cuadrado)氏

乗客が本当に生きた人間なのか,あるいは闇から現れた存在なのか分からないまま,街灯の少ない暗い夜道を走り続ける,どこか日本の都市伝説にも通じるような緊迫感が本作の大きな魅力となっている。
本作の舞台設定としては,青木ヶ原樹海のようなミステリアスな森の存在が前面に押し出されているが,作中に登場する温泉街や古い街並みは,兵庫県の城崎温泉にインスパイアされているとガラン氏は語る。風情ある木造建築や川沿いの柳並木,夜の静けさに包まれた昭和感の残る寂れた温泉街「奥ノ湯」の情景が,不気味さをより際立たせているわけだ。

ゲームプレイは,タクシーの運転と目的地での探索という2つの要素から成り立っている。運転パートでは,ナビゲーションやマップを確認しながら街と樹海を結ぶ夜道をひた走る中,タクシーという小さな密室で乗客と2人きりになるシチュエーションが,強い心理的圧迫感を生み出す。乗客の不可解な指示に従って車を進めるうちに,いつしか携帯電話の電波も届かないような場所へと導かれてしまう構造だ。
目的地に到着したあとは,懐中電灯の心もとない光を頼りに周辺の建物や森林を探索して手がかりを集めることになる。暗闇の奥で揺らめく影や不穏な環境音,ミラーに映る光景の違和感など,プレイヤーの不安をじわじわと煽る「静かな恐怖」を意識した演出が各所に散りばめられている。


そこからは日本の伝承や都市伝説,そして「リング」や「呪怨」に代表されるJホラーの心理的恐怖についての非常に深い造詣がうかがえる。静寂と「見えそうで見えない違和感」によって少しずつ恐怖を構築していくアプローチは秀逸だ。
バルセロナ近郊のテラッサで「樹海への道」の開発を続けるEndflameは,2022年に同じく日本を舞台にした「Ikai」でデビューしたホラー専門のスタジオだ。これまで公開されてきたパブリックデモは「第1章」であり,2027年早々には「第2章」のデモを公開する予定だという。
夜のタクシーという日常的なシチュエーションから不条理な怪異へと引きずり込まれる感覚を味わいたいホラーファンは,今後の動向をチェックしておくと良さそうだ。


