11月のホテル稼働率、北海道は10月比−9.0pt・群馬は−1.2pt|山岳6道県の谷と平日の埋め方

観光庁の宿泊旅行統計調査で2025年の客室稼働率を10月と11月で比べると、北海道は63.2%から54.2%へ9.0pt下がったのに対し、群馬県は49.2%から48.0%へ1.2ptの低下にとどまっていた。紅葉とスキーのあいだにあたる11月は、山岳・高原リゾートを抱える県でも谷の位置と深さがそろっていない。本稿では北海道・山形・群馬・新潟・長野・岐阜の6道県について、過去2シーズンの公的統計と、2026年11月上中旬に向けた宿泊45日前時点の予約状況を重ね、単価を保ったまま埋められている場所の共通項と、11月に取りにいける需要を整理する。

本記事における指標の定義

客室稼働率(観光庁):観光庁「宿泊旅行統計調査」の年確定値(第8表)。過去2シーズンの月次比較はこの公的統計を用いる。

OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。今シーズンの途中経過に用いる。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。対象は総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で、観光庁の客室稼働率とは母集団も定義も異なるため、水準どうしは比べず、同じ母集団のなかの日付間の差を読む。

LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。本稿の今シーズン分はすべて宿泊45日前(LT45)時点の断面で、観測日は2026年7月中旬〜10月3日。

ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値。掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込・全プラン平均)である。

データ出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチ

Key Takeaways

— 北海道だけがV字の谷:観光庁の2025年確定値で、北海道の客室稼働率は10月63.2%から11月54.2%へ9.0pt下がり、12月に59.5%へ戻る。本州5県は12月へ下る階段型。
— 群馬・岐阜は低下が小さい:2025年の10月→11月は群馬県−1.2pt、岐阜県−3.0ptで、全国(−1.2pt)並みかそれに近い。
— 旅館の単価は11月に上がった:2025年の推定成約ADRは6道県すべてで11月が10月を上回り、指数は102.4〜117.2(群馬県は約¥15,300→¥18,000)。
— 谷は平日に寄る:2026年11月上旬の旅館は、宿泊45日前時点で土曜と平日の推定OCCに群馬18.1pt・長野11.7pt・岐阜10.0ptの開き。
— 温泉地−2.4pt、都市観光−7.2pt:24市区町村の平日推定OCCの差(11/3〜11/17と10月下旬、宿泊45日前時点)。平日2ptの上積みは6道県の旅館で約9,100室泊。

過去2シーズンの11月 — V字の谷は北海道、本州5県は12月へ下る階段

まずは、確定値が出そろっている2024年と2025年の月次で谷の位置を確かめる。観光庁の統計は月単位の公表で、上旬・中旬・下旬の内訳は示されていない。そこで10月(紅葉の最盛期)と12月(スキーの立ち上がり)を両端に置き、11月がそのあいだでどこに位置するかを見た。

表1 6道県と全国の客室稼働率(2024年・2025年の10〜12月、観光庁 年確定値)都道府県2024年10月11月12月11月−10月(pt)2025年10月11月12月11月−10月(pt)北海道65.955.758.7−10.263.254.259.5−9.0山形県58.752.044.9−6.757.552.643.2−4.9群馬県48.247.243.4−1.049.248.043.4−1.2新潟県49.444.137.6−5.350.748.042.3−2.7長野県44.639.734.0−4.942.437.433.3−5.0岐阜県59.455.246.0−4.263.660.650.0−3.0全国64.664.758.7+0.166.665.459.5−1.2

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2024年・2025年 年確定値(第8表)よりホテルバンク編集部作成。単位は%

6道県のうち、11月がはっきり谷底になるのは北海道だけだった。2024年は65.9%から55.7%へ10.2pt、2025年は63.2%から54.2%へ9.0pt下がり、12月には58.7%、59.5%へ持ち直している。一方で本州の5県は、11月の低下が1.0〜6.7ptに収まるかわりに12月の月平均がさらに下がり、谷というより階段の形になる。スキー需要が年末に寄るぶん、12月前半が月平均を押し下げていると読める。

低下幅がもっとも小さいのは群馬県で、2024年が−1.0pt、2025年が−1.2ptと、全国(+0.1pt、−1.2pt)とほぼ同じ動きだった。岐阜県(−4.2pt、−3.0pt)がこれに続く。同じ「山の県」でも、11月を紅葉後の空白として迎える県と、秋の延長として使えている県に分かれていることになる。

図1 北海道の客室稼働率(月次)。出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成

図2 群馬県の客室稼働率(月次)。出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成

施設タイプ別に分けると、谷の持ち主がさらに絞り込める。北海道のリゾートホテルは2025年に50.4%から29.9%へ20.5pt下がり、12月に57.8%まで戻る深いV字を描いた。新潟県(32.5%→24.8%→31.9%)と長野県(37.5%→29.4%→31.1%)のリゾートホテルも同じ向きである。これに対して群馬県は旅館が47.5%で横ばい、リゾートホテルは49.5%から50.7%へむしろ上がっており、山形県の旅館も48.6%から48.7%と動いていない。ビジネスホテルは6道県とも11月に69.9〜80.2%を保っていた。

表2 施設タイプ別の客室稼働率(2025年10〜12月、観光庁 年確定値)都道府県施設タイプ2025年10月11月12月11月−10月(pt)12月−11月(pt)北海道旅館48.736.537.0−12.2+0.5北海道リゾートホテル50.429.957.8−20.5+27.9北海道ビジネスホテル78.672.474.7−6.2+2.3山形県旅館48.648.735.3+0.1−13.4山形県リゾートホテル39.931.024.7−8.9−6.3山形県ビジネスホテル80.372.560.3−7.8−12.2群馬県旅館47.547.537.5±0.0−10.0群馬県リゾートホテル49.550.735.2+1.2−15.5群馬県ビジネスホテル75.777.676.4+1.9−1.2新潟県旅館32.729.325.9−3.4−3.4新潟県リゾートホテル32.524.831.9−7.7+7.1新潟県ビジネスホテル77.969.956.9−8.0−13.0長野県旅館27.222.822.9−4.4+0.1長野県リゾートホテル37.529.431.1−8.1+1.7長野県ビジネスホテル86.280.268.3−6.0−11.9岐阜県旅館48.243.535.1−4.7−8.4岐阜県リゾートホテル55.151.539.9−3.6−11.6岐阜県ビジネスホテル80.479.066.6−1.4−12.4

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年 年確定値(第8表)よりホテルバンク編集部作成。単位は%

単価は11月に下がっていない — 旅館のADRは2025年、6道県すべてで10月を上回った

量の谷に対して、単価の側はどう動いていたのか。メトロエンジンリサーチの推定成約ADRで旅館の11月を10月=100の指数にすると、2024年は96.4〜104.0、2025年は102.4〜117.2だった。2025年は6道県すべてで11月が10月を上回り、群馬県は¥15,300から¥18,000へ、新潟県は¥13,300から¥15,200へ上がっている。少なくとも旅館については、11月の谷は価格ではなく量の側に出ているといえる。長野県の旅館・リゾートホテルで閑散月の単価だけが前年を割った経緯は、長野県の旅館・リゾートホテル、確定ADRは1月+21.9%から6月−0.1%へで確認できる。

表3 旅館・ビジネスホテルの推定成約ADR 11月指数(各年10月=100)都道府県旅館 2024年旅館 2025年旅館 2026年(調査時点の推定)旅館 2025年11月ADR旅館の対象施設数(各年11月)ビジネス 2025年北海道96.4102.492.8¥9,419275/245/24791.4山形県98.2110.896.2¥13,778190/175/16695.2群馬県104.0117.2104.3¥17,972294/265/261103.8新潟県96.6114.7103.9¥15,213246/231/224101.5長野県98.8111.299.1¥14,256534/485/465100.6岐阜県103.7109.199.7¥16,432254/208/21996.6

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。指数は各年11月の推定成約ADR÷同年10月×100。2026年は調査時点(2026年10月上旬)の掲載水準に基づく推定で、確定月とは基準が異なるため同年の10月との比でのみ示す

図3 旅館の推定成約ADR 11月指数(各年10月=100)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

ただし、北海道は様子が違う。旅館の指数は2024年が96.4、2026年の調査時点推定が92.8で、ビジネスホテルも2025年に91.4まで下がっていた。量と単価が同時に引く北海道と、量だけが引いて単価は残る本州の温泉県とでは、同じ11月でも打ち手の置き場所が変わってくる。2026年の調査時点では、群馬県(104.3)と新潟県(103.9)の旅館が10月をやや上回る値付けで11月を迎えている。

2026年11月上中旬の途中経過 — 宿泊45日前の断面で見ると谷は平日に寄る

ここからは今シーズンの予約状況に移る。当社の在庫ベースの推定OCCは2026年3月から観測を始めたため、前年・前々年の同じリードタイムと並べることはできない。そのかわり、宿泊日ごとに「45日前時点でどこまで埋まっていたか」をそろえて、9月から11月17日宿泊分までを同じ物差しで比べた。11月18日以降は宿泊まで45日を超えるため、本稿では扱わない。11月4日以降の宿泊分は本日から30日以上先にあたり、以下の数値はいずれも予約が進む途中の観測である。

表4 宿泊45日前時点の推定OCCと平日掲載価格(2026年10月下旬〜11月中旬宿泊分)都道府県業態対象平日 10月下旬平日 11月上旬平日 11月中旬上旬−10月下旬(pt)土曜 10月下旬土曜 11/7土曜 11/14平日掲載価格 10月下旬同 11月上旬北海道全施設752施設/55,231室65.557.458.8−8.180.266.866.6¥22,676¥20,535北海道旅館154施設/6,879室64.057.861.0−6.272.471.167.1¥25,552¥25,471北海道リゾート92施設/9,879室65.664.565.1−1.174.975.372.6¥31,638¥30,427北海道ビジネス219施設/26,786室64.653.855.4−10.882.662.763.5¥13,834¥11,514山形県全施設177施設/6,334室59.855.453.8−4.474.072.263.9¥21,653¥20,937山形県旅館106施設/2,830室64.860.056.9−4.871.169.873.3¥26,917¥26,195山形県リゾート15施設/651室61.957.058.2−4.977.674.365.7¥25,610¥22,735山形県ビジネス23施設/1,989室54.047.848.5−6.273.673.048.3¥11,654¥11,416群馬県全施設352施設/14,419室58.656.555.6−2.174.271.968.9¥24,890¥25,439群馬県旅館176施設/5,660室66.263.965.5−2.380.382.083.1¥31,138¥31,264群馬県リゾート23施設/2,198室49.640.842.6−8.864.056.354.2¥23,958¥24,201群馬県ビジネス51施設/4,804室56.056.951.6+0.973.870.363.1¥11,144¥11,519新潟県全施設281施設/13,442室60.655.659.9−5.071.463.266.0¥21,246¥21,059新潟県旅館136施設/3,283室66.362.962.1−3.478.476.277.3¥28,850¥29,419新潟県リゾート15施設/2,835室77.072.482.7−4.675.269.282.2¥23,396¥23,526新潟県ビジネス51施設/6,164室50.945.850.5−5.166.354.854.7¥10,823¥10,627長野県全施設696施設/22,172室68.664.964.0−3.780.380.277.4¥27,658¥27,763長野県旅館264施設/6,282室67.464.065.9−3.478.175.778.2¥29,750¥29,899長野県リゾート63施設/4,176室74.072.968.0−1.180.287.079.2¥41,545¥43,944長野県ビジネス82施設/7,619室70.864.663.8−6.286.885.879.9¥15,117¥14,288岐阜県全施設284施設/10,938室70.467.265.2−3.282.878.779.2¥25,494¥26,266岐阜県旅館131施設/3,438室80.478.877.4−1.688.288.888.6¥30,208¥31,621岐阜県ビジネス60施設/5,667室64.060.458.1−3.679.673.974.2¥16,619¥16,799

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。推定OCC(%)は宿泊45日前時点、総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設が対象(主要予約サイト掲載ベース)。平日は月〜木泊(祝前日の11/2を除く)で、10月下旬=6夜、11月上旬=5夜、11月中旬(11/11〜11/17)=4夜の平均。土曜の10月下旬は10/24・10/31の平均。岐阜県のリゾートは対象6施設で値が得られず除外

全施設の平日で見ると、10月下旬から11月上旬への低下は北海道が−8.1ptでもっとも大きく、群馬県は−2.1ptだった。過去2シーズンの公的統計と同じ並びが、45日前の時点ですでに表れている。平日の掲載価格も北海道が¥22,700から¥20,500へ下がったのに対し、群馬県は¥24,900から¥25,400、岐阜県は¥25,500から¥26,300と、むしろ上向いていた。

業態で分けると、旅館の土曜は11月に入っても崩れていない。群馬県の旅館は10月下旬の土曜が80.3%、11月7日(土)が82.0%、11月14日(土)が83.1%で、岐阜県も88.2%→88.8%→88.6%とほぼ水平である。つまり、谷として残っているのは平日の側だ。11月上旬の旅館を土曜と平日で比べると、群馬県は82.0%に対し63.9%で18.1pt、長野県は75.7%に対し64.0%で11.7pt、岐阜県は88.8%に対し78.8%で10.0ptの開きがあった。群馬県で谷になる曜日が業態ごとに異なる点は、群馬の曜日別稼働、谷は業態ごとに別の日で整理している。

図4 旅館の平日推定OCC(宿泊45日前時点・旬別)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。対象は北海道154施設/6,879室、山形106施設/2,830室、群馬176施設/5,660室、新潟136施設/3,283室、長野264施設/6,282室、岐阜131施設/3,438室(主要予約サイト掲載ベース)

図4で9月上旬から追うと、本州5県の旅館は10月下旬に向けて積み上がり、11月に入って2〜5pt戻す形になる。北海道だけは9月から66%前後で推移し、10月下旬の64.0%から11月上旬に57.8%へ下がった。紅葉の時期が早い北海道では、秋のピークそのものが本州より前にあり、11月は雪を待つ期間が長い。なお、志賀高原は2026-27シーズンの営業を12月5日(土)からと公表しており、本州の主要スキーエリアが動き出すのは11月の集計範囲より後である。

谷が浅い市町村の共通項 — 温泉地は平均−2.4pt、都市観光は−7.2pt

県の平均をさらに市区町村へ下ろすと、差の出どころが見えてくる。6道県のうち対象が20施設以上ある24市区町村を、主な性格で温泉地・高原スキー・都市観光の3つに分け、10月下旬の平日と11月3日〜17日の平日(月〜木の9夜)を比べた。

図5 平日推定OCCの差(11/3〜11/17の平日 − 10月下旬の平日、宿泊45日前時点・pt)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表5 24市区町村の平日推定OCCの差(11/3〜11/17 − 10月下旬、宿泊45日前時点)都道府県市区町村主な性格対象平日 10月下旬平日 11/3〜11/17差(pt)2025年ADR指数(10月=100)ADR対象N11月の掲載継続率北海道富良野市高原・スキー25施設/623室53.560.1+6.695.112103%長野県山ノ内町温泉地50施設/1,474室67.569.9+2.4113.49090%群馬県渋川市温泉地45施設/2,079室58.360.5+2.2128.14698%新潟県湯沢町高原・スキー30施設/2,758室73.073.9+0.9118.43990%新潟県南魚沼市高原・スキー23施設/467室55.355.4+0.1100.12484%山形県米沢市都市観光20施設/502室53.152.6−0.5106.631108%群馬県中之条町温泉地26施設/544室64.463.9−0.5106.033100%長野県茅野市高原・スキー62施設/1,409室57.555.0−2.595.83992%岐阜県下呂市温泉地36施設/1,512室73.470.8−2.6119.74395%長野県軽井沢町高原・スキー84施設/2,636室70.567.2−3.3103.652105%長野県長野市都市観光43施設/2,396室73.269.4−3.8108.17299%群馬県草津町温泉地72施設/2,120室65.861.8−4.0115.177101%長野県白馬村高原・スキー37施設/670室72.267.7−4.5115.135104%群馬県みなかみ町温泉地49施設/1,603室67.262.4−4.8109.84695%岐阜県郡上市高原・スキー24施設/332室58.253.1−5.1120.625103%新潟県妙高市高原・スキー25施設/694室64.759.5−5.2117.64089%北海道札幌市南区温泉地21施設/2,492室62.156.2−5.997.62297%山形県上山市温泉地20施設/573室61.555.3−6.2115.31893%岐阜県高山市都市観光124施設/3,681室89.282.8−6.488.411994%山形県山形市都市観光41施設/2,190室62.255.1−7.1103.15899%群馬県嬬恋村高原・スキー36施設/1,261室41.230.8−10.4103.42490%北海道函館市都市観光94施設/6,809室64.153.3−10.893.580100%長野県松本市都市観光80施設/3,429室82.571.6−10.997.39897%北海道小樽市都市観光38施設/2,158室58.547.3−11.292.32595%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。推定OCC(%)は全業態・宿泊45日前時点、対象は総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設(主要予約サイト掲載ベース)。ADR指数は2025年11月の推定成約ADR÷同年10月×100。掲載継続率は2025年11月に掲載価格が観測された施設数÷同年8月の施設数。「主な性格」は編集部による区分

差の単純平均は、温泉地の8市区町村(319施設/12,397室)が−2.4pt、高原・スキーの9市町村(346施設/10,850室)が−2.6pt、都市観光の7市(440施設/21,165室)が−7.2ptだった。渋川市(伊香保)は+2.2pt、中之条町(四万)は−0.5pt、山ノ内町(湯田中渋・志賀高原)は+2.4ptと、温泉を核にした町は10月下旬とほぼ同じ進み方で11月を迎えている。対照的に、松本市(−10.9pt)、函館市(−10.8pt)、小樽市(−11.2pt)といった都市観光型は10月の水準が高いぶん、落差も大きくなる。

単価の動きも同じ方向を向いていた。2025年のADR指数(10月=100)は温泉地の平均が113.1、高原・スキーが107.7、都市観光が98.5である。渋川市は128.1、下呂市は119.7、草津町は115.1と、温泉地は11月に単価を上げながら量も保った。紅葉が標高の高い場所から温泉街へ下りてくる時期と重なること、湯そのものが目的になり天候や景色に左右されにくいことが背景にあると考えられる。岐阜県内で秋の単価ピークが市町村ごとにずれる様子は、岐阜の宿泊単価、秋のピークは高山10月・下呂11月で詳しく取り上げている。

一方で、通年営業の度合いは決め手になっていなかった。8月に掲載のあった施設のうち11月も掲載を続けた割合は24市区町村で84〜108%の範囲に収まり、谷の浅さとの対応は読み取れない。高原・スキーのなかでは富良野市(+6.6pt)や湯沢町(+0.9pt)のように11月中旬へ向けて上向く町と、嬬恋村(−10.4pt)のように引きが大きい村が混在しており、立地の区分だけでは説明しきれない幅が残る。

もうひとつの共通項は、観光以外の宿泊が混ざっているかどうかである。観光庁の統計を宿泊目的で分けると、2025年11月の長野県は「観光目的の宿泊者が50%以上」の施設の客室稼働率が24.0%、「50%未満」の施設が68.6%だった。群馬県では50%未満の施設の客室稼働率が10月の69.0%から11月に71.7%へ上がっており、出張・研修・工事関係といった平日の需要が11月の底を支えている姿が浮かぶ。

11月に取りにいける需要と受け皿 — 平日・連泊・湯治・研修

ここまでを整理すると、山岳リゾート県の11月は「土曜と温泉地は埋まり、平日と都市観光・高原に余地が残る」構図になる。余地の大きさを室数に直すと、群馬県の旅館コホート5,660室では平日の推定OCC 1ptが1夜あたり約57室、長野県の6,282室では約63室に相当する。土曜との差が10〜18ptあることを踏まえると、平日に積める幅は小さくない。以下は、その受け皿を需要別に並べたものである。

表6 11月に取りにいける需要と受け皿取りにいく需要受け皿になりやすい施設タイプ本稿のデータ上の手がかり平日(月〜木泊)の個人・シニア温泉地の旅館旅館の土曜は11月中旬まで10月下旬並み。平日との差は群馬18.1pt・長野11.7pt・岐阜10.0pt(宿泊45日前時点)連泊・湯治温泉地の旅館、キッチン・ランドリーを備える高原の宿長野県×旅館の連泊系プラン名(N=286)では「連泊割」44%、「曜日限定」43%、「温泉露天」30%が併記されている企業研修・合宿・出張会議室を持つリゾートホテル、都市寄りの旅館観光目的50%未満の施設は2025年11月の客室稼働率が群馬71.7%・岐阜72.0%・長野68.6%(観光庁)スキー開幕前の先行需要高原・スキー立地の宿富良野市・湯沢町・山ノ内町は11月中旬の平日が10月下旬を上回る途中経過(富良野+7.6pt、湯沢+6.3pt、山ノ内+6.2pt)

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

平日の個人客に向けては、土曜の水準を崩さずに平日だけ条件を変える設計が取りやすい。旅館の土曜は45日前時点で8割前後まで進んでおり、週末の価格を動かす必要は薄い。平日限定の特典や曜日を絞った連泊条件で、週の前半に滞在を伸ばす提案を重ねたい。温泉地で11月の単価が10月を上回った実績は、平日を値下げで埋める以外の道があることを示している。

連泊と湯治は、温泉地の強みをそのまま延ばす打ち手といえる。2泊目以降の清掃を簡略化するかわりに特典を付ける、夕食を選択制にして滞在の自由度を上げるといった組み立ては、すでに公開プランのなかに見られる。企業研修や合宿については、観光目的の比率が低い施設ほど11月の稼働が高いという統計が手がかりになる。会議室や大広間を持つリゾートホテル・旅館にとって、紅葉後の平日は研修の受け入れ枠を広げやすい時期だろう。

北海道のように量と単価がともに引く地域では、順番を変えて考えるのが有効といえる。11月上旬の平日は45日前時点で57.4%、掲載価格は¥20,500と、10月下旬から一段下がった位置にある。ここでは単価を追うより、札幌・函館など都市部のビジネス需要(平日の厚みは北海道のビジネスホテルは「週末型」ではないで曜日別に整理している)や、スキー開幕前の先行滞在を早めに取り込み、12月の立ち上がりにつなげる組み立てが現実的だ。富良野市が11月中旬に向けて上向いている途中経過は、その動きがすでに始まっている可能性を示している。

宿向け:このテーマに効くプラン名のヒント

長野県 × 旅館 × 連泊で公開されているプラン名(N=286)に多い訴求要素 ——

連泊割 44%曜日限定 43%2食付 34%温泉露天 30%素泊まり 19%ビジネス 12%

実際の名前の例(匿名化):

・【連泊ecoプラン/朝食付き】客室清掃なしで550円OFF!屋外サウナ無料<ビジネス&一人旅応援>

・【連泊ecoプラン/素泊まり】客室清掃なしで550円OFF!屋外サウナ無料<ビジネス&一人旅応援>

※公開プラン名の集計にもとづく傾向で、命名が販売を生む因果を示すものではありません。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

平日の上積み余地を室泊に換算 — 6道県の旅館コホートで見る感度

前節の「平日に積める幅」を、規模の感覚がつかめる単位に置き換えておく。表4の旅館コホートの客室数に、平日の推定OCCを何pt上げられたかを掛け、2026年11月の平日16夜(月〜木泊、祝前日の11月2日を除く)ぶんを積み上げた。横軸の上積み幅は+2ptを控えめ、+6ptを中位、+10ptを積極的な想定として読める。

表7 平日の推定OCC上積み幅別の追加室泊数(2026年11月の平日16夜・旅館コホート)道県旅館コホート土曜との差(pt)+2pt+4pt+6pt+8pt+10pt北海道6,879室13.32,2014,4036,6048,80511,006山形県2,830室9.89061,8112,7173,6224,528※群馬県5,660室18.11,8113,6225,4347,2459,056新潟県3,283室13.31,0512,1013,1524,2025,253長野県6,282室11.72,0104,0206,0318,04110,051岐阜県3,438室10.01,1002,2003,3004,4015,5016道県計28,372室—9,07918,15827,23736,31645,395

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部試算。客室数は表4の旅館コホート(主要予約サイト掲載ベース)。「土曜との差」は11月上旬の旅館の土曜(11/7)と平日の推定OCCの差(宿泊45日前時点)。追加室泊数=客室数×上積みpt×16夜。※は上積み幅が土曜との差を超えるセルで、週末並みを上回る想定のため参考値

群馬県は土曜との差が18.1ptあり、+10ptまで上げても週末の水準には届かない。1ptあたり約906室泊と、6道県のなかでも上積みの効きが大きい組み合わせである。長野県は客室数が多いぶん1ptあたりの規模が約1,005室泊ともっとも大きく、+6ptで約6,000室泊に達する。一方で山形県は土曜との差が9.8ptと小さく、+10ptは週末並みを上回る想定になる。6道県の旅館を合わせると、平日を2pt押し上げるだけで約9,100室泊、6ptで約27,200室泊の規模になる。ここでの数値は余地の大きさを示す換算であり、その需要がすでにあることを示すものではない。

よくある質問

Q. 山のリゾート地で11月の稼働がもっとも下がるのはどこですか。

A. 観光庁の2025年確定値では、6道県のなかで北海道の低下がもっとも大きく、客室稼働率は10月の63.2%から11月は54.2%でした。リゾートホテルに限ると50.4%から29.9%まで下がり、12月に57.8%へ戻っています。

Q. 11月は宿泊単価も下がるのでしょうか。

A. 旅館については、2025年は6道県すべてで11月の推定成約ADRが10月を上回りました(10月=100として102.4〜117.2)。稼働の谷と単価の動きは必ずしも一致しません。

Q. 2026年11月の予約はどこまで進んでいますか。

A. 宿泊45日前時点の途中経過では、旅館の土曜は10月下旬とほぼ同じ水準、11月上旬(11月3日〜10日)の平日は10月下旬より1.6〜6.2pt低い位置です。11月18日以降は観測期間が足りないため、本稿では扱っていません。

Q. 11月の平日を支えている需要はありますか。

A. 観光庁の統計を宿泊目的で分けると、観光目的の宿泊者が50%未満の施設は2025年11月の客室稼働率が群馬県71.7%、岐阜県72.0%、長野県68.6%でした。出張・研修・工事関係など観光以外の宿泊が、紅葉後の平日の底を支えています。

Q. 平日を数pt上げると、どれくらいの室泊になりますか。

A. 表7のとおり、2026年11月の平日16夜(月〜木泊、11月2日を除く)で換算すると、群馬県の旅館コホート5,660室では1ptあたり約906室泊、長野県の6,282室では約1,005室泊に相当します。上積みの上限の目安は11月上旬の土曜との差(群馬18.1pt、長野11.7pt)です。

まとめ

山岳・高原リゾートを抱える6道県の11月は、ひとくくりの閑散期ではなかった。公的統計で谷がV字になるのは北海道で、本州5県は11月を肩にして12月へ下る階段型であり、群馬県と岐阜県は10月からの低下が小さい。旅館の単価は2025年に6道県すべてで11月が10月を上回っており、谷は量、それも平日の側に寄っている。

今シーズンの45日前断面でも、温泉地の8市区町村は平均−2.4ptと10月下旬に近い進み方を見せた。土曜との差10〜18ptは、平日・連泊・湯治・研修で埋めにいける幅と読める。11月下旬の3連休(11月21日〜23日)と12月上旬は観測が進みしだい、同じ物差しで続報としたい。11月の暦と3連休の需要の山については、11月の3連休は11/21-23だけ|2026年の紅葉ピークと需要の山を7エリアで検証も参考になる。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10月〜11月のADRおよび掲載価格は、調査時点(2026年10月上旬)でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。推定OCCも宿泊45日前時点の途中経過であり、最終的な稼働を示すものではありません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

観光庁「宿泊旅行統計調査」2024年・2025年 年確定値(第8表、都道府県×宿泊施設タイプ・宿泊目的割合別の客室稼働率)。メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(道県・市区町村別の月次、2024年10月〜2026年11月、旅館・ビジネスホテル)、宿泊45日前時点の推定OCCと掲載価格(2026年9月1日〜11月17日宿泊分、6道県・24市区町村、観測日は2026年7月中旬〜10月3日)、長野県×旅館×連泊系の公開プラン名の集計(N=286)。

■ 試算前提

平日は月〜木泊(祝前日の11月2日を除く)。旬別の推定OCCは各宿泊日の45日前時点の値の単純平均、市区町村の類型別の差は各市区町村の差の単純平均。ADR指数は各年11月の推定成約ADR÷同年10月×100で、2026年分は調査時点の掲載水準に基づく推定。表7の追加室泊数は、表4の旅館コホート客室数×上積みpt×2026年11月の平日16夜。

■ 限界・留意点

観光庁の客室稼働率と推定OCCは母集団・定義が異なるため、水準どうしは比較していない。推定OCCは2026年3月からの観測で、前年・前々年の同じリードタイムとは比べられない。2026年11月分は宿泊まで30日以上ある途中経過で、最終的な稼働を示さない。11月18日以降の宿泊日は45日前の断面がまだ無く対象外。「主な性格」の区分は編集部による。表7は余地の規模を示す換算で、需要の存在を保証するものではない。

■ 参考資料

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