ネパール・ラスワ郡のボテコシ川からトリシュリ川にかけての流域で8月26日に発生した鉄砲水について、早期警報があれば数百人の命を救えた可能性があると、科学誌nature indiaが8月27日に伝えた。
ネパール国家防災管理庁(NDRRMA)の初期報告では、ネパールと中国で359人以上が死亡し、33カ国の観光客数百人を含む1000人以上が行方不明となった。15カ所の水力発電施設、車両が通行できる橋35本、つり橋45本、道路約40キロメートルも被害を受けた。NDRRMAの現地情報と衛星画像によると、国境のネパール側にある氷河に覆われた斜面から氷と岩石の雪崩が崩落した。岩屑が支流レンデ・コーラ川をせき止めて一時的な天然ダムを形成し、その決壊で高エネルギーの洪水流が土砂を巻き込みながら下流の集落を襲った。
スディープ・タクリ(Sudeep Thakuri)氏によると、同じ支流では2025年7月にも、上流の氷河表面湖が約0.31平方キロメートル縮小したことに起因する洪水が発生し、少なくとも9人が死亡、19人が行方不明となった。温暖化で高地の氷や永久凍土が不安定になり、河道閉塞決壊洪水(LDOF)と氷河湖決壊洪水(GLOF)はいずれも増加しているという。ヒマラヤ山脈には下流地域への危険性が「極めて高い」と分類された氷河湖が200以上あるが、小規模な湖や氷・岩石雪崩も深刻な脅威となり得る。
洪水波が到達するまでの警報時間は5~30分しかない可能性がある。遠隔センサー、カメラ、衛星による監視はネパール、ブータン、パキスタン、中国の一部で試験導入されているが、対象地域は限られ、標高5000メートル超での機器の設置・保守も難しい。上流の氷河と監視設備の一部は中国領内にあるため、同氏は、中国・ネパール間の正式協定によるデータ共有、ヒンドゥー・クシュ・ヒマラヤ全域の衛星監視、現在の災害リスク地図を反映した土地利用計画を求めた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
