医療機関の閉院、倒産が過去最多を更新している。各地で病院経営が危機に直面しているといわれるなか、大学病院まで閉院するところが出てきている。福岡県では、産業医科大学若松病院(北九州市)と久留米大学医療センター(久留米市)が来年5〜6月に相次いで閉院することに。どちらも大学病院の分院で、地域医療に貢献してきた医療機関だが、なぜ閉院を決めたのか。産業医大の事務局長、久留米大の理事長に話を聞くとともに、現地の医師や患者、県の担当課にも事情を尋ねた。(文・写真:サイエンスジャーナリスト・緑慎也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
福岡県で二つの大学病院が閉院を決定
洞海湾(どうかいわん)と響灘(ひびきなだ)に囲まれた福岡県北九州市若松区。かつては筑豊の石炭が全国へ送り出された、日本有数の港町だった。その古い市街地の一角に立つ産業医科大学若松病院が今、転機を迎えている。
産業医大は今年5月、若松病院を来年5月をめどに閉院し、医療機能を本院である産業医科大学病院へ集約すると発表した。地元住民には少なからぬショックが広がっている。
「病院を替えるのはつらい」
若松区に暮らす80代の山本和子さん(仮名)は、6年前から若松病院に通ってきた。
消化器系疾患があり、今後も経過観察で定期的な検査を受ける必要がある。機能集約後は本院に通う予定だが、本院は若松病院から西に約10キロだ。
「これまで検査で何度か本院に行きましたが、朝8時半に着いても採血の順番が100番を超え、2時間待ちのこともあります。帰る頃にはぐったりします」
一方、若松病院では帰りがけに買い物ができるほど体力が残るという。
「そんな病院に通えなくなるのは本当に残念です」
医療機関の閉院、倒産が今、全国各地で起きている。帝国データバンクによると、2025年に倒産した病院・診療所・歯科医院の経営事業者は66件、休廃業・解散は823件に達し、いずれも過去最多を更新した。倒産の主な原因は「収入の減少」で、72.7%を占めた。
経営悪化は地域の小規模な医療機関に限らない。高度な医療を担い、経営基盤も比較的安定していると思われがちな大学病院も揺れている。全国医学部長病院長会議の調査では、2024年度、全国81大学病院本院の約7割が赤字だった。
