2026年8月27日 午前7時30分

 【論説】福井地方最低賃金審議会が福井県内の2026年度の最低賃金(最賃)を59円引き上げ、1112円とするよう答申した。1100円台は初で、引き上げ幅は過去最大だった昨年度に次ぐ水準。国の中央審議会が示した目安額を3円上回った。長引く物価高の中で、賃上げの流れが継続された意義は大きい。

 本年度の専門部会の審議では当初、労働者側は前年度の上げ幅を上回る75円の増額を提示したが、使用者側と大きな隔たりが生じ59円まで譲歩。しかし、使用者側は目安額通りの56円にも難色を示し、最終的には使用者側を除く賛成多数で結審した。その後の本審でも、使用者側は反対を貫き、最後まで溝は埋まらなかった。

 これは、原材料費やエネルギー価格の高騰が長期化する中、県内の中小・零細企業では、人手不足に対応するための「防衛的賃上げ」が限界に達しつつあることを示している。改定後の最賃を下回る労働者の割合を示す影響率は27・5%に上っており、価格転嫁が不十分なまま人件費負担が増加すれば、事業の継続や雇用の維持自体に支障を来しかねない。

 経済財政運営の指針「骨太方針」で政府が、全国平均1500円の達成時期を「2020年代」から「2030年代前半」へと事実上見直したのも、急激な引き上げによる中小企業への影響に配慮したためといえる。労働者の生活安定と企業の事業継続という双方の課題に改めて向き合う必要がある。

 持続可能な賃上げには、賃金水準の引き上げだけでなく、企業が原資を確保できる環境が求められる。中でも重視されるのは、適正な価格転嫁の推進だ。今年施行された中小受託取引適正化法などの適切な運用を通じて、原材料費だけでなく人件費の上昇分も取引価格に反映できる環境を整えなければならない。

 併せて、生産性向上を目指す中小企業への省力化投資支援や補助金の活用促進、公的発注における労務費の適正な反映など、多角的な支援策が求められる。

 石田嵩人知事は改定議論に先立ち、経済界に積極的な賃上げを要請。「多様な人材から選ばれる県になるため都市部や近隣県との(最賃の)格差を縮めていく必要がある」と訴えており、県や国には実効性のある支援の推進が求められる。改定最賃は10月4日にも適用される見通しだ。労働者の暮らしを支えるとともに、地域の事業者を支える施策を速やかに実行し、地域経済の安定的な発展につなげることが重要だ。

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