【著者に聞く】『兵庫県知事問題 失敗の本質 情報不信はなぜ生まれたか』の小林和樹が振り返る失敗の本質
禍根を残した2024年11月の兵庫県知事選(写真:アフロ)
SNSの時代、政治はかつてないほど注目のコンテンツになっている。時には地方政治の動向が国政に負けないほど人目を引く。政治が注目を集めることは悪いことではないが、虚偽や噂や個人の思い込みまでもが真実のようにSNSに出回っており、政局やインフルエンサーの思惑などが絡み、不正確な情報は他者を攻撃する武器や金儲けの道具として使われている。
かつてないほどに情報空間が混乱したのが、斎藤元彦兵庫県知事を巡る一連の出来事だった。現場にいた報道機関は、この時どんな悩みや葛藤を抱えていたのか。『兵庫県知事問題 失敗の本質 情報不信はなぜ生まれたか』(ちくま新書)を上梓した、NHK神戸放送局で報道を統括していたジャーナリストの小林和樹氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──2024年3月に斎藤元彦兵庫県知事に関する告発文章を受け取ってから、2024年11月17日に行われた兵庫県知事選挙で斎藤元彦氏が再選するまでの経緯を中心に書かれています。なぜ本書を書かれたのでしょうか?
小林和樹氏(以下、小林):選挙期間中や選挙後に「何を信じたらいいのかわからない」という声を数多く聞きました。テレビや新聞であれだけ多くの時間や紙面を割いたのに、正しい状況が情報として伝わっていなかった。なぜそんなことが起きたのか、きちんと考えたいというのが理由です。
知事だけでなく議会や報道にも問題があると考え、選挙後、メディアを含む関係者を取材しました。
2024年は、3つの選挙(都知事選、衆院選、兵庫県知事選)でSNSが結果に大きな影響を及ぼしましたが、中でも兵庫県知事選では、SNSに対する既存メディアの対応、それに従来の報道姿勢が厳しく問われました。選挙後「テレビや新聞の不備を衝撃的に見せられた」「目を覚まさせられた」と話す報道関係者もいます。
──斎藤知事に関する差出人不明の告発文を受け取るところから一連の出来事は始まりました。小林さんが在籍していたNHK神戸放送局だけではなく、他にも複数の報道機関が同じ文章を受け取ったようです。最初は「怪文書に近い」と捉えた告発文の内容と斎藤知事への疑惑が、そこからじわじわと膨らんでいく過程が丁寧に書かれています。

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小林:今も変わりませんが、あの文書について「一級の告発文」であるとは思っていません。同じように考える報道関係者は少なくありません。
