2026年8月18日 午前7時30分
【論説】農家民宿などで農村の暮らしを体験するプログラムを取り入れた教育旅行の受け入れが県内で増えている。過疎化が進む地域で都会の子どもたちが住民と交流し、思い出をつくる。将来の関係人口につながる機会として注目したい。
ここ数年、ホテル料金や交通費など旅行費用が高騰し、京都、奈良、金沢といった有名観光地はオーバーツーリズムが続いている。そうした中、子どもの探究や体験を重視する学校が地方での体験型宿泊を選ぶようになった。
県内の受け入れは、県観光連盟によると2023年度の31校5199人から24年度47校7381人、25年度70校9156人と急増し、本年度さらに増える見込み。福井県は関西の大都市に近く、新幹線で北陸が関東からつながったことも要因とされる。
子どもたちは民宿に寝泊まりし、福井の自然や食、産業、歴史、文化を体験するなど多彩なプログラムに臨む。
7月、越前市などを訪れた東京都目黒区立の中学の生徒たちは3日間の日程で北陸を旅行した。2日目に嶺北6市町の27カ所の農家民宿などに分かれ、農作業や田舎暮らしを体験した。
芋掘りやまき割りを楽しんだ生徒の「ビルでいっぱいの東京に比べて、空が広い。初めての経験ばかり」との感想だけでなく、受け入れ側の「生徒さんから元気をもらっている。将来の人生で役立つ知識を教えたい」との言葉も印象深い。
行政や観光連盟と連携して教育旅行を誘致している一般社団法人「教育旅行ふくい」(越前市)には、丹南地域や福井市、勝山市の農家民宿など約60軒が登録している。同法人は学校・旅行会社と民宿の間での宿泊先や体験メニューの調整のほか、民宿関係者の各種研修会も開いている。
同法人代表は、都会の子どもたちには福井の自然はもちろん、農作業や食事など農村の普段の生活全てが新鮮に映ると言う。生徒は生活力や知識を得て、住民側は自身の暮らしの良さを再発見する機会になっていると強調する。
緊張した面持ちで民宿へ向かった生徒たちが福井を離れる際には一転、住民らと別れを惜しむ。その後、家族とともに再び訪れることもあるいう。
生徒たちが充実した経験を得られれば、学校は今後も同じプログラムを組むことも考えられる。そうなれば個人の関係を超え、学校と地域の交流が生まれる可能性もあるだろう。県内の民宿の広がりと連携による質の高い体験の提供に期待したい。
